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廃城の死者共


「ここか……」


そう呟いたのは、金髪の青年、全身を金色の装備で統一し、腰には色の違う6本の短剣をしている。


人気のない村、人っ子一人おらず、生活音すらもせず、3人が土を踏む音だけが聞こえている。


「人がだんだんと攫われて行く村……ね」


金髪の青年の発言に同意したのは、黒髪黒眼の女の子だ。赤黒い装備をし、腰に刀を差している。


「わ、私ホラーとかって、に、苦手なんですぅぅぅ」


体を震わせ、自分の杖をぎゅっと握りしめるピンクの髪をした女の子、なんとも微笑ましいリアクションをとる彼女の握っている杖は双頭の龍が絡み合っているように見える杖だ。


「被害はどんなもんなんだっけ?」


「この村2つに、Bランク冒険者が3人に、Aランク冒険者が4人、Aランククランが2つに、Sランククランが1つ、きっとこの近くを通る旅人や商人も被害にあっているでしょうね」


「まんまホラーじゃないですか!帰りましょ〜よぉ〜」


黒髪の女の子の腕を掴み、ぶんぶんと揺らす。この男女の名は


ミナミ・フジヤマ

ジャック・ヤマモト

サキ・ハナミチ


召喚勇者の3人は、王都から直々に指名を受けこの依頼を受けていた。

発端はこの村から少しずつ人が消えていったからだ。

人が消えていくごとに、城のほうから悲鳴とも雄叫びとも言える音が聞こえる。

この報告を王都にしてから、幾人の冒険者が調査に向かったが、その誰もが報告に戻らなかった。

Sランククランが依頼を受けてから2週間ほどがたっていた。

この村は王都から往復1週間の場所にある。調査をし王都に帰るとしても2週間はかかりすぎだ。

今までと同じように死人として扱い、実力ランクともに十分である召喚勇者のミナミ達に白羽の矢がたったのだ。


「あれが城か?」


「廃城らしいわね。盗賊か何かが住み着いて人攫いをしてるのかしら」


「可能性はなくもねぇな」


「人が相手だったらなんとかなります!!」


「サキ、そんな笑顔で言わないの……」


「んじゃまぁ、とりあえず城に向かうか」


「そうね。この村はモンスターの気配も人の気配もしないから……」


「その前に」


サキが杖をコンコンと地面に当てる。

すると地面から蔓と草花が咲き、塔のようなものになる。


3人はその塔の前で手を合わせ、目を瞑った。少しし、目を開ける


「行きましょう」


「あぁ」


「はい」


3人は気を取り直し廃城へと向かう。

その後ろから、もう1人ついてきていることに、3人は気づいていなかった。





「開けた場所に出たな」


「視界の悪い森の中で戦うぐらいならこっちのほうがいいでしょ」


「私もそう思いますっ」


「それにしても……」


3人の目の前にはボロボロな城、森を抜けてすぐそれはあった。


「嫌な感じがするな」


「そうね」


「私もそう思いますっ」


禍々しいといえるようなものがその廃城からは感じられた。


「取り壊す予定だったらしいし、城は破壊してしまっても構わないとのことよ」


「そうか、ならもう魔法ぶっ放してもいいんじゃないか?」


「生きてる方がいるかもしれません!そんなことできませんよっ」


「そりゃそうだな、じゃ、行くしかないか」


「えぇ。でもその前に……」


ミナミは廃城に背を向け、先ほど自分たちが抜けてきた森を見る


「出てきなさい!森に入った時から気づいていたわ!」


ざわざわと葉や枝が返事をする。


「返答がなければ攻撃をするわ」


ミナミは愛刀ー紫桜ーを抜く


『最近は見破られてばかりだ。修行が足りないか』


そんな声とともに姿を現したのは、全身を真っ黒な衣服に包み込んだ男だ。腰にいろいろなものを下げ、腰には忍者刀、その人物が人間だとわかるのは、少しだけ見えている目元だけだ


「あなたは何者?」


「私の名は……」


謎の男がそう答えようした瞬間に、ミナミの隣男が大きな声で遮ってしまう。


「忍者だよ忍者!すげぇ!ほら!腰に刀差してるし!黒装束だし!忍者だ!」


「ジャック!静かにしなきゃですっミナミちゃんが喋ってるんですよっ」


ミナミがキッとジャックを睨みつけ、ジャックは苦笑いをしながらおずおずと下がった。

それを見ていた謎の男は笑い、顔を覆っていた覆面を脱いだ


「忍者なのもバレているのか、お前達も日ノ本の童か?俺の名はハンゾウ、ハットリハンゾウだ」


3人に衝撃が走る。日本人ならばその名を知らない者はほとんどいないだろう。学校などで学ぶことはなくとも、その有名な忍者の名はいろいろなもので知ることができる


「えぇ?!マジもんの忍者?!」


「はえぇ……初めて見ました」


「え、えぇと、なぜこんなところに忍者が……?いや、なぜハットリさんはここに?ハットリさんも召喚されたのですか?」


「ふふふ、1つずつ答えよう。私は正真正銘、徳川家に仕えていた忍だ。召喚かどうかはわからないが、気づいたらこの世界にいた。なぜここに来たか、だが、悪い気を辿ったらお前達がいた。どんな人間か観察していたら気配を気取られた。というところだ」


「悪い気、ですか?」


「あぁ。そしてそれはあの城の中から感じる。そしてお前達2人……美徳スキルを持っているのか?」


「え?あ、あぁ。ハットリさんも鑑定眼をお持ちなのですね」


「ハンゾウでいい。そうだが、まだ見てはいないよ。俺が持っているものと同じような気を感じた」


「気、ですか、ちなみに、私が正義、ジャックが知恵の美徳を持っています」


「なるほど……俺を含め4人か、あと3人はいるのか」


「4人?カグヤさんを知っているのですか?」


「カグヤ?お伽話の姫か?」


「いえ、カグヤというのは」


その瞬間、皆一様に廃城に嫌な気配を感じた。


「城からだけではないな」


その気配はそこら中から漂っていた。

先ほどまではなかったはずのものに囲まれていた。

だが、それの姿は見えない


「話は後だな、まずはこれをなんとかしなければな」


「サキ!やっぱあの城にぶっ放したほうがいいんじゃねぇか?!」


「ダメ!まだ生きてる人がいるかもしれないわ!」


「え、えぇ、で、でもぉ〜」


甲高い音がその場に響く、ハンゾウが柏手を打ったようだ


「冷静さを欠くな。お前達は確かな腕を持っているはずだ。判断を誤らなければ負けることはない」


「「「は、はい」」」


ハンゾウの迫力に、3人は圧倒されてしまう。


「あの城の中から生物の気配はしない。それ以外は気が狂うほどするがな……」


「それでは……」


「あぁ。魔法を放っても良いと俺は思う」


「サキ!」


「サキッ!」


「はいっ!!」


サキは両腕を広げ、自分の杖、炎氷龍の双頭杖(ダブルアクセント・オブ・ドラゴ)に魔力を集中させる。

廃城を囲うほどの大きな魔法陣が広がり、炎が溢れ、嵐のように雹が降る。

サキの全身全霊、1日に1度しか発動できない創作究極魔法だ。


「ー豪炎深雹嵐の渦ー!!」


炎と雹が嵐に取り込まれ、大きな渦となり、魔法陣の中で破壊の限りを尽くす。

風で煙が晴れ、粉々に破壊された城の中に生きているものはいなかった。

代わりにいたのは、溢れるほどのアンデッドモンスターだ。


「……かなり数は減らせたが、まだまだたくさんいるようだ」


「はい」


「やるしかねぇ」


「まだいけますっ」


勇敢な彼女は刀を抜いた。調子者の彼の周りには、4本の短剣が浮いている。子犬のように震える少女が杖を構えなおし、目の前の軍勢を見据え、全身を黒の衣服に身を包んだ男が両手を合わせ、印を結ぶ


「お前達、名は?」


「ミナミ」


「ジャックだ」


「サキですっ」


目の前、そして周りの地面からぼこぼこと這い出て来るモンスターを見てもその4人は引こうとも、負けるとも思っていない。


「俺たちは負けない。行くぞ!」


巨悪の末端と、世界を救う鍵を持っている4人が衝突した

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