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骸骨を守る陣形


飛び込んできた衛兵が真っ青な顔をしている中、ジルが口を開く


「客人を招き、人を厳選し、謁見を行なっている最中の場所に、許可もとらず飛び込んでくるとは、それほどの緊急事態であろうな?」


ジルは濃厚な殺気を放ちながら衛兵にそう問いかけた。殺気を放っているのはジルだけではなく、俺とハルカ、クルシュと衛兵2人以外の面々がそれぞれ放っているようだ。

この人数、それに強さのかけ離れた相手に殺気を飛ばされるなど、俺でも怖気付いてしまう。


「は、は、はははい、き、緊急事態でご、ございます」


「簡潔に申せ」


「は、ははい。東の門よ、より、強力な能力を、も、持つユニーク、モンスターと思われる個体が、こ、こちらへまっすぐ向かっている。と、のことです」


「ふむ……」


ジルは片手を軽く挙げた。部屋を覆っていた複数の殺気が無残する。衛兵を縛っていた魔法陣も緩められている。


「して、状況、モンスターの能力などはわかっているのか?」


衛兵は殺気が解かれて安心したのか、深呼吸を繰り返し、先ほどよりもはっきりと報告をした。


「は、はい。死者2名、監視3名。モンスターはゆっくりとした歩みでこちらにまっすぐ向かっています。能力は未だはっきりとしていませんが、魔法、弓、剣は効かず、抱きつかれた者は朽ちた。との報告がされています」


「ふむ……わかった。そのモンスターの種族はなんだ」


「はい……」


魔法陣に縛られている衛兵は、言いにくそうな顔をして、俺をチラリと見て言った


「そこのモン、お客様のようなスケルトンです。角が生えていた。との情報が」


「……わかった」


ジルは瞑目し、少し考えてから指示を出し始める


「敵の強さは未知数、少数精鋭で対処に向かうとしよう。お主は、道案内をさせるため、監視している者を呼び寄せ、他の者には手出しをせぬよう通達せよ。現場に向かうのはバルギークと一番隊、それとミカイルじゃ、それ以外は国にて警戒を、クルシュは怪我人がきても良いように今日は店じまいをしてくれ」


「わかりました」


「それではさっそく動くことにしよう。そこの、この場で見たこと、客人については絶対に口外してはいけぬ。よいな?」


微かに殺気を孕んだ眼光が、衛兵を睨みつける


「はっ!!承知いたしました!!」


衛兵を縛っていた魔法陣が消え、各々がジルの指示通りに動こうとしている。


「ジル!私も少数精鋭としてユニークモンスターの対処に向かいたいのだが、よいだろうか?」


「それはダメじゃ。ムルトくんはあくまで客人、エルフのごたごたに巻き込むわけにはいかぬ」


「確かにそれはそうだろう。だが、俺はその角つきのスケルトンに覚えがある。きっと力になる」


角が生えたスケルトン。聖国で相対したエルトの手下と名乗ったデュラハンだ。

確かにあいつは聖国で倒したはずだ。なぜここにいる?俺はそれも確かめなければならない。


「ほっほっほ。エルフを見くびってもらっては困る。緊急事態とはいったが、それは得体の知れない相手じゃからだ。だが、こんなこと建国してから何度もあったわい。大船に乗ったつもりで待っていてくれたまえ」


「だがジルよ!」


「はっはっは!陛下!まぁいいじゃねぇか!ムルトも連れていきゃあよぉ!」


バルギークが俺の肩に手をかけながらジルへ向かってそう言った。

隣に立ってわかったが、バルギークは筋骨隆々なだけではなく、体も大きい。2mは優に超える巨体に、鋼のような肉体を持っている。


「バルギーク、これは緊急事態、正式な仕事になる。軽口は慎むのじゃ」


さっきのような謁見で見せた微笑ましい表情ではなく、歴戦の男を思わせるような顔をしている。

バルギークはジルにそう言われ、片膝をつき、頭を下げた。


「わかっていますとも陛下。ですが、俺もふざけて言っているのではありません。ムルトは多少腕に覚えがあるようですし、俺の部隊とミカイルもいる。危険と判断すれば、ミカイルに任せてムルトを国に戻らせよう」


「ジル、私からも頼む」


俺もバルギークに倣い頭を下げる。ハルカも俺の横で同じようなことをする。


「……むぅ、わかった。ムルトがそこまで言うのであれば、じゃが、危険だと判断したらすぐに戻れ」


「はっ!ありがたき」


「感謝する」


「ミカイル、頼んだぞ」


「お任せください。陛下」


ジルはそう言って謁見の間を後にした。やることがあるようだ。ミカイルとバルギークは少し話し合い、どういう陣形で行くのかを決めていた。

俺もローブなどを着直し、話に参加をする。


「ムルトさん、昨日お渡しした通信魔法が付与されている木板は持っていますね?」


「あぁ。これだろう?」


2枚の木板を取り出す。


「はい。それをかしてください」


俺は木板をミカイルに渡す。すると、何かの魔法を付与したようで、木板が微かに光を放ち、すぐに消える。


「通信魔法は消えましたが、これは通行許可証のようなものになりました。これを肌身離さず、しっかり身につけていてください」


「あぁわかった。だが、なぜ肌身離さず?」


「それはこの国を出ればわかりますよ。時間が惜しいです。行きましょう」


「俺の部隊は既に門の方に向かっているらしい。モンスターの歩みは遅いと言っていたが、安心はできない。早く向かおう」


「あぁ。わかった。ハルカはどうする?」


「もちろん行きます!」


「無理はするな」


「ムルト様も」


ミカイルとバルギークは全速力で街の中を駆ける。まるで重力を感じさせないかのような軽やかな動きだ。俺たちはその後ろをぴったりとハ張り付いて共に走っている。


「フフフ、私たちについてこれるのであれば、あまり心配はありませんね」


「腕っ節の問題もあるだろうが、戦闘には参加させないつもりだ。ミカイル、頼むぞ」


「お任せください」


前の2人はチラチラと俺たちを見て微笑んでいるが、何の話をしているかはわからなかった。




東の門には既に10名ほどの兵士がおり、俺たちを待っていた。


「よし、早速出発だ!5の陣!客人を中心にして固まれ!」


「「「はっ!!」」」


俺とハルカを中心にして、ひし形のような陣形をとる


「バルギーク隊長!ご質問があります!」


「なんだ?」


「只今客人と仰っていましたが、その方もご一緒するのでしょうか?足手まといではありませんか?」


「大丈夫だ!客人といったが、お前らよりは強い!そして戦闘をするのは基本俺だけだ!わかったか!」


「「「はっ!!」」」


「よし!案内をするのはどいつだ?」


「はい、バルギーク様、私がご案内をいたします」


「あぁ。敵は今どこにいるんだ?」


「もう1人の監視によると、場所はあまり変わっておらず、ゆっくりと移動しているとのことです」


「わかった。全速力でそこに向かってくれ」


「はっ!」


各々が走り始める。

案内をするエルフが先行し、俺たちはその後ろをついていく。先ほどのバルギークとミカイルよりは遥かに遅いが、それでも十分な速度を出している。バルギークの部隊も陣形を乱すことなくついていっている。


「ムルトさん、後ろを向いてみてください」


ミカイルにそう言われるがまま、後ろを振り向く


「おぉ、これは」


後ろには、巨大な世界樹が見える。城のように太い幹、空を覆うほどに伸びた枝と葉が森を包み込んでしまうほど広がっている。太陽も青い空を見えない。だが陽射しはなぜだか通しているようだ。

ミカイルの話だと、世界樹には幻影透過魔法がかけられており、エルフの国を出ると世界樹が見えなくなるらしい。だが、俺たちに渡した通行許可証が世界樹を見えるようにしてくれているとのことだ。

通行許可証をなくしてしまえば世界樹が見えなくなり、はぐれたりなどしたらエルフの国に戻るのは難しいとのことだ


「はぐれても、私たちがムルトさんたちを探しに行きますけどね」


「肌身離さず持っておくよ。感謝する」


「ふふふ、大事なお客様ですから」


「おい!無駄口を叩くな!しっかり走れ!おい!あとどれくらいだ!」


「あと少しです!」


バルギークに怒られてしまったが、ミカイルも俺も警戒を微塵も怠っていない。

そして少し走ったあと、そのユニークモンスターと邂逅した

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