向かいし者たち
「もし、ご老人よ、道を尋ねたい」
畑を耕していた老人が振り向くと、そこには紫のローブに身を包んだ大男が立っていた。
フードを深くかぶっているせいでその顔は見えない。
隣には赤い髪に白髪の混じった初老の男性が立っていた
「旅人さんかい?どこへの道を聞きたいんじゃ?」
「あぁ。ここから港にはどう行ったら良いか?」
「港?どこへ行くんだい?」
「機械都市マキナというところへ」
「マキナ?あぁ!それなら海じゃなく、あちらの方へ真っ直ぐ行けばつくはずじゃよ」
「歩くだけで着くのか?」
「そうじゃよ。確か少し行った街から馬車が出ていたはずじゃが」
「ふむ。ありがとう。向かってみる」
「あぁ。達者でな〜」
大男と初老の男性は老人にお礼を言い、指された方向に向かって歩き始めた。
「緊張したのか?」
「あ、あぁ。初めての人間だからな」
「別に初めてじゃないだろう?」
「だが、助けるでもなく助けられるのは初めてだ」
「だから俺が喋るって言ってんのに」
「いや、これも練習、私は生きていくのだから」
「まぁ別にいいけどさ」
「私がダメだと思ったらゴン、お前に頼む」
「しばらくは大丈夫だろう。聖国を出ればな」
「あぁ。黄金の泉、楽しみだ」
「どこにあるか知っているのか?」
「あぁ。イメルテという女性に教えてもらうといい。とムルトが言っていた」
「ムルト……あのスケルトンか」
「あぁ。我が友だ」
「お前にも友ができたのか」
「あぁ。私の良き理解者だ」
「そうか……お前はもう屍人の森の頂点に立たなくていいんだ」
「あぁ。自由に生きたいと思う」
「……さ、行くか、ティング」
2人の男は歩みを進めた。
新しい出会いを求めて、新しい人生を
★
「ふぅ、ここがカリプソか」
「海産物が特産って聞くわね」
「あぁ。だけど俺は魚っていうのが苦手でよ」
「んもぉ、好き嫌いしちゃダメよ。本当あんたは見かけによらず小心者よね」
「ち、ちげぇよ!俺は疑り深いんだ!」
「うふふ。あのスケルトンと話していた時は肝が座ってたのにね。ギルド長と一戦交えてでも逃すって言ってたのに」
「……あぁ。あいつは今頃どこにいるんだろうな」
男はそう言って腰から一本の骨を取り出した。純白というわけではなく、少しキラキラ光っているクリーム色だ。
「段々と色が変わっていってるんだ。きっと死んではいないだろう」
「生きてるかも怪しいけどね」
「いや、生きてるよあいつは、スケルトンでも、あいつは生きてるよ」
「そう」
「あぁ。さ、早く迷宮都市に向かおう!」
「闘技場にも出場するんでしょ?」
「あぁ!冒険者ランクもBに上がったしな!」
「まずは腹ごしらえよ。行きましょ、ダン」
「あぁ。シシリー」
2人の男女は歩みを進める。自分たちを救い、導いてくれた恩人のスケルトンを気にかけながら
★
「6枚の翼に、鷹の頭……お前がここいらで騒がれているキメラか」
『ふむ、我はそう呼ばれているのか……だが、そんな寄せ集めのケモノではない』
「キメラだか悪魔だか知らんが、お前にはここで死んでもらう!」
『はっはっはっはっは!笑える冗談だなぁ……さて、我のことを知っているということは、これから何が始まるかも知っておるな?』
「あぁ!お前ら!構えろ!」
男はそう言い武器を構える。男の他にも、男女入り混じった総勢6名の冒険者が武器を構える。ここにいる6名は蒼天の鉤爪と呼ばれるAランク冒険者が集まって作ったパーティだ。
相対するのは鷹の頭に、蝙蝠のような羽を6枚、手足は人間の形をし、筋骨隆々だ。
蛇のような尻尾も生えている。キメラ、と言われても納得する風貌である。
『さぁ、まずは一撃、我に叩き込んでみろ』
「お前ら!やるぞ!」
「「「おぉ!」」」
各々が魔力を練り、最大級の技を繰り出そうとする。
鷹の頭のモンスターは腕を組み仁王立ちをしている。
冒険者たちの攻撃が鷲頭のモンスターに集中した
「やったか?」
地形が変わるほどの破壊力。土煙が辺りを包み、モンスターがどうなったかわからないほどだった。しばらくして土煙が晴れる
『ふぅむ……23点だ』
そこには、先ほどと変わらぬ体勢で立っているモンスターがいた。傷というものは見当たらず、そのモンスターがそれほどよ膂力を保有していることは一目瞭然だ。
「ちっ、ダメ、か」
『ふはははは!!我を傷つけることは叶わなかったな!!さて……お前らは何を差し出す?』
モンスターは首をコキコキと鳴らし、冒険者たちに向き直った。両腕、羽を広げ、魔力と殺気を全開にする。
「くっ……傲慢なやつだ」
『はっはっはっは!!わかっているではないか!それでは、我と会った代償を、払ってもらおうか……』
「……傲慢の天災……ちっ」
男たちは武器を構え直す




