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もう1つの戦い1/5

いつもありがとうございます。


聖国の広場に、ボーン・スケイルドラゴンが突っ込む、少し前


「ヌ、あれワ」


「何かありましたか?」


ワイトは、屍人の森でハルカと過ごしていた。

ムルトが聖国に入り込んだことを知り、とりあえずは様子を見ることにした2人。3日ほど経てば、もう一度不死創造で偵察をしようと話をしていた


「アレが、見えるカ?」


ワイトは、まだ遠くにいるボーン・スケイルドラゴンを指差す。


「骨の、龍、ですか?」


「あァ、間違ッテはいないガ、問題ワその背中に乗ってイルやつだ」


「私では見えませんね……」


「エルダーリッチが2人と……もう少シしたらコノ上を通ルだろうナ。ハルカ」


ワイトは手招きをし、ハルカを呼ぶ。

そこは、2人が生活している場所、ワイトの住処なのだが、その中へとハルカを呼び込む


「聖魔法は使えるか?簡単な結界のようなものでいい」


「はい。なんとかなると思います。この子を使えば」


ハルカはそう言って、腰にさしている蓮華を指差す


「あァ。それデワ、もう少シシたら頼む」


ワイトがそう言ってから、ワイトの住処、洞窟の中で、2人は数十分も息を潜めて待っていた


「ハルカ」


「はい。一分咲き」


ハルカが蓮華に魔力を通すと、蓮華の一番外側、花びらのような部分が、開く。

ハルカはそこへ魔力を流し、魔法を発動させた


「ー聖円壁ー」


円を描くように、ハルカを薄い光が包み込んだ


「大丈夫カ?」


「はい。すごく楽です」


ハルカはムルトと別れた後も、鍛錬を続けていた。体術や棍棒術だが、それと並行して魔力循環も行なっていた。身体強化をしながら模擬戦を行なっていたところ、蓮華の使い方を発見した。


簡単に言ってしまえば、一分咲きから満分咲きを使えるようになり、それによって魔力の節約ができるようになった。

今までは、生活魔法のーリトルファイアーを発動させるために、上級魔法と同等のMPを消費してバーナーを発動していたが、それを一分咲きを使って絞ることで、少しだけ火力の強いリトルファイアを使えるようになった。


ハルカはこの能力を使い、自分自身に聖魔法をかける


「よシ、では、ヤルぞ。ー死の瘴気ー」


ワイトは口を開いた。その口から、真っ黒な煙が溢れる。

ー死の瘴気ー

自分よりランク、レベルの低い生物に恐怖を植え付ける。最悪死に至る


ワイトはこの魔法を発動させ、上空をドラゴン達から姿を眩まそうとしたのだ。

思惑通り、ドラゴンに乗った人物はこちらに気づいていなかったようだ。


(いヤ、元々興味ワなかッタのか)


ワイトが見つめる先には、ボーン・スケイルドラゴンのみがいる。脅威を感じたモンスターは、すでに姿を消していた。

すぐに目の前に現れないこと、プレッシャーや危険察知も反応しないことから、ワイトはもうここを過ぎたのだと判断した


「もウ行っタヨうだ。出てきテイイぞ」


「はい。それにしても、あれはなんだったんでしょうか」


「ソれはわカラない。が、行き先ワ聖国、私デモ太刀打ちできナイモンスターがいたのワ確かだ」


「そんなモンスターが聖国に……ワイトさん」


「あぁわかってイル。すぐに向かオウ。ムルトになにかアルカもしれナイ」


「はいっ」


2人はすぐに荷物を纏めた。纏めると言っても、特に散らかしてるわけでも、持っていくべきものがあるわけではないのだが


ワイトはスケルトンホースを召喚し、ローブを深く被る。ハルカも狐口面と変えの服に着替え、準備が完了だ。2人は共に馬へとまたがり、聖国へ向かって走り出す。

ワイトの住処から聖国までは、馬を走らせて30分ほどといったところだろうか、出発から10分以上が過ぎた頃、その人物が目の前に現れた


「ハルカ」


「はい……」


馬の歩みを止め、のそのそと歩く。

ハルカとワイトは馬から降り、辺りを見渡す


「いるノワわかってイル!出てコイ!」


ガサガサと草木を分ける音が聞こえる。

目の前の茂みから、2人の男が出てくる。

1人は、白髪にちらほらと赤い髪が残っていて、真っ黒なコートで全身を隠している初老の男。

もう1人は、大木のような手足に、ワイトよりも巨大な拘束具にも似たような服を着ている


「……ゴン、か」


ワイトはその内の1人を知っていた。

だが、その男の目は、ワイトが初めて会った時と同じ目をしている。何かを覚悟した、仕事、暗殺者としての目だ


「あぁ。久しぶりだな。ワイトキング」


「こンな森の奥深クマデ、何しに来たノダ?」


「それはわかっているのだろう?当然、お前の討伐だ」


「ソうだろウナ。だが、お前モ見たダロう。聖国へ向かウ骨のドラゴンを」


「あぁ。だが聖国には五暴聖がいる。ラマと、もう2人な。それに、聖国を超えて向こう側へ雪山のほうへ行くかもしれない」


「確かニ、そうカモしれないな。だがゴン、お前ガあのドラゴンの背中ニ乗ってイタ奴の力に気づかナイわけはナイだろう?」


「あぁ。それでも、聖国は負けない。慈愛の巫女がいる。アンデッドが相手ならば負けるはずもない」


「巫女自身は強くない。とお主は言っテいたデハナイか」


「単体では、な。お喋りが過ぎた。仕事をするとしよう」


「……お前ノ覚悟はわかッタ」


「そうか。その娘は、お前が攫ってきたということでいいのだな?」


「あァ。この娘ワ」


「攫われてなどいません!!あなた達がワイトさんと敵対するのであれば、私も戦います!!」


ハルカがワイトの発言を遮り、大きな声でそう言った。


「……だソウだ」


ワイトは頭に手を当てて、「やれやれ」と頭を振っている。それを見たゴンは少しニヤッとしていた。俺以外の人間の友ができたのか。と


「お嬢さんはそれでいいんだな?」


「はい!」


ゴンの攫った。という問いは、助け舟だった。ワイトが人間を攫うわけがない。逆に助け、聖国近くの森まで帰らせる性格だということを知っているからだ。

ゴンはハルカがワイトと無関係だと分かれば、保護し、密かに国外に逃がそうと思っていた


「てぃ、てぃ、ティッキー。あ、あの女、あ、味、味見、し、していい、かな」


「ダメだ。あの女は俺が相手をする。お前はワイトキングだ」


「で、で、でも、お、おい、美味しいとこ、ほ、ほしい」


「命令だ」


ゴンは殺気を発する。その殺気は、ゴンが現役の暗殺者をやっていた頃よりも数段に濃厚な死を連想させた


「ご、ご、ごめん、ね。わ、わかったから、お、お、怒らないで。ね。ね」


マンモスはオロオロとしながら、ゴンへと謝る。


「ワイトキング……最後に何か言っておきたいことはあるか?」


「ふム……私はそこノ大男ニハ負けなイゾ?」


「はっはっは!それだけ言えれば十分だ……さて、始末するとしようか」


ゴンはコートの袖から、串の形をした武器を出す。マンモスは拘束具を引きちぎり、両手の平を開き、今にもワイトに飛びかかろうとする。

ワイトはフードを脱ぎ、その骸骨の顔を露わにし、ハルカは蓮華を持ち直し、魔力を込め、構える。


屍人の森は静かに、風の1つも吹くことなく、互いの動きを注視する。

死合のゴングは、聖国より響く、ボーン・スケイルドラゴンの激突の音だった。


もう1つの戦いが、今、始まる

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