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骸骨は勝てない

いつもありがとうございます


暴食の剣を持つ騎士との戦いは、拮抗していた。いや、遊ばれているのだろう


「サッキカラ防御バカリ、ソレデ勝テルト思ッテイルノカ」


俺は騎士の攻撃を防ぐことしかできていない。俺がギリギリ防ぐことができる速さと力で攻撃を繰り返しているのだ。


(くっ……)


俺はその攻撃を宵闇と半月で受け、耐えている。


(このままでは……)


先ほど、広場の方へと、ボーン・スケイルドラゴンが突っ込んでいた。ボーン・スケイルドラゴンは、まるで氷が溶けるようにして、その体を骨の軍団へと変貌させた。

エルダーリッチが止め処なく召喚するモンスターと、ボーン・スケイルドラゴンが姿を変えたモンスターが、人々に襲いかかっている。幸い、ここが聖国ということもあり、光魔法や浄化魔法を使う者がいて、自分の身を守ることはできているようだ


「アチラガ気ニナルカ?今ワナントカナッテイルヨウダガ、イツマデモツカナ」


騎士は俺への攻撃をやめず、広場の方を見る。そうなのだ。光魔法と浄化を駆使して戦っても、スケルトンの軍勢はまるで数を減らさない。減らないどころか、数を増やしているのかと思うほどの量だ。人間はいつしかMPが切れてしまうし、疲れも出るだろう。

対してエルダーリッチは疲れもしなければ、人間に比べれば相当量のMPを保有している


「うおぉぉぉ!!」


俺が相手している騎士の背後から、冒険者らしき男が飛び出してくる。

メイスがその騎士の頭を狙うが


「バレバレダ」


剣を持っていないほうの腕でそのメイスを受け止める。剣をその男へと突き刺し、体を引きちぎるように横へと投げた。


「力ガ高マル」


その剣、暴食のフランベルジュについた血は、段々と薄くなり、剣に染み込んでいく。まるで、食べているかのように


「サァ、続キダ」


騎士の攻撃は、先ほどよりも微かに力を増し、重く、俺を苦しめる


「くっ、そこだ!」


微かな隙ができた。俺はそれを見逃さず、宵闇を騎士の顔面めがけ突き刺す。


(頭蓋骨を破壊すれば……!)


この騎士もスケルトンという種の中に入るならば、頭蓋骨を破壊すれば殺すことができる。俺はこのチャンスを手放さない


「ワザトダヨ」


目にも留まらぬ速さで、騎士は宵闇を手で掴む。


「なっ」


腹を蹴られ、仰け反ってしまう。痛覚はないが、衝撃が体を襲う


「フム、オ遊ビハソロソロ終ワリニナシヨウカ」


「くっ、そうはさせるかっ」


「ハッハッハ、諦メナイカ、ホラ、止メテミロ」


手を広げ、挑発をしてくる。

俺は立ち上がり、騎士へと合間を詰める。


「突ッ込ンデ来ルダケトハ、策ハナイノカ?」


騎士は剣を高く上げ、思い切り振り下ろす。

俺はそれをあえて、防御しなかった(・・・・・・・)


「チッ」


剣は俺の頭蓋骨を割らぬよう、寸前で止められる。俺は両脇を狙って2本の剣を横薙ぎにする。が、鎧を切ることはできなかった


「くそっ」


鎧を破壊することはできなかったが、少しだけ凹ませることには成功している。これを何度か繰り返せば……


「オマエノ思ッテイル通リ、俺ワオマエオ殺セナイ。ダガ、ソレデオマエガ俺ニ勝ツコトモナイ」


「あぁ。確かにそうかもしれない。だが、お前の足止めはできる」


「足止メダト?」


「あぁ。そして俺は、お前に勝つ!」


俺は騎士との距離を詰める。

奴の鎧の形状は、特殊だ。兜は被っていないが、頭蓋骨を守るように、口周りにまで鎧が伸びており、顔の横もそうなっている。

首の後ろにいたっては、後頭部の高さまで高い。奴の顔があらわになっているのは、鼻より上のところだけなのだ。奴の頭蓋骨を破壊するのであれば、通るのは真正面から攻撃のみだろう


「俺ワ、オマエオ殺セナイガ」


俺の攻撃を両手で受け止め、右足をあげる


「壊スコトワ、デキル」


バキン、と足を折られ、体勢が崩れてしまう。前のめりに倒れそうになったところに、腹を蹴られ、後方へ吹っ飛ばされた


「ぐっ」


痛みが感じない。だが、無くなってしまった左足の感覚が確かにある


「小賢シイ、サッサト女オ探ストスルカ、ソノ前ニ、アノ女ダ」


騎士の見つめる先には、カグヤがいる。俺は残った右足だけで立ち上がり、赤い魔力を纏う。すると騎士は俺の方へ向き直り


「ソレガ我ガ王ノ力ニナルモノカ、王トニテ、中々貫禄ガアル」


俺は宵闇を鞘へ納め、半月をモブ、戦斧に変える


「俺は、まだ、やられていないぞっ!!」


「……両手両足ワ、モガセテモラオウカ」


「ふぅ、ふぅ、くぉおぉぉおおおぉぉ!!!」


俺は雄叫びをあげ、憤怒の魔力を全身に纏う。その魔力を操作し、砕かれた骨を補強する。


「まだ、砕かれていないぞ」


「面倒クサイナ」


騎士が初めて俺との距離を詰める。

俺は、その姿を追うことができなかった。


「見エナイカ」


その騎士が改めて俺の足を折ろうと、両足を横から蹴りつけてくるが、今回は折れなかった。


「ナニ?」


「む?」


俺もなぜ足が折れなかったのかがわからなかった。が、騎士が一瞬止まったのを見逃さず、俺は斧を横薙ぎにする。

騎士はそれに反応し、剣で受け止めたが


「グッ」


耐えることができず、少しだけ後ろへ押し出された


「ソノ魔力ワ、イワバ、力ノ底上ゲトイウベキカ」


「両手両足をもぐのではなかったのか?」


「言ワレズトモモイデヤルサ、アノ女オ殺シテカラナッ!」


騎士は俺との距離を詰めたようにカグヤの元へと全力で走っていく。どう考えても間に合わない。俺は、思い切り斧を投げた。


モブの斧は一直線にその騎士へと向かっていくが、騎士が腕を横に振ると、大量のスケルトンが溢れ、斧に砕かれながらもその勢いを殺した


「くそっ!!」


俺は両腕を前に出す。魔法を撃とうとしたが、カグヤまで巻き込んでしまう。俺は、無我夢中で走り出した。


「ハッハッハ!諦メロ!コレデ終ワリダ!」


黄色い魔力を纏うフランベルジュが、カグヤに向かって振り下ろされる。

カグヤは逃げることができない。


(くそっ!守れないのか……!!!)


胸が大きく高鳴る。それは心臓の鼓動ではない。俺の胸の中にある、大きな宝玉、俺の心と連動し、俺に力を送り込んでくれる。


「うぉぉぉおぉぉおおぉぉ!!!!」


溢れ出す魔力が、俺の体を強化してくれる。

地面を蹴る足が、力強く振る腕が、確かに俺はさっきよりも早くなっている。

それでも、カグヤの元へは、間に合うはずもなかった

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