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チートの知

作者: さくら

列に並ぶ。

なんか延々長い列に、何となく並ぶ。

なんで並んでいるのか?

何となくである。


気がつけば、列は延びている。

そう、止めどなくおとなしく並んでいる。


無言で。


「はーいはーい、好きな(ゲート )に入ってくださいね~」


なんか居た。

居たと言うか飛んでいる。


列の前方を見るとカラフルな門っぽいものが並んでいる。

そして列は途中からそれぞれの門に分かれていた。

赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色の門。

うん。虹だ。


行き先は自分で選べる?

運に見放されている自覚が少し怖い。


「はーい、早く進んでね~、はぁ、今日も残業かぁ」


ふよふよ飛んでるそれは、ため息をしながら列を見回す。

うん。残業しないと並んでいる途中の俺達は放置されるのだろうか?

怖い。


透明な羽根。ふわふわな髪。多分妖精?


「あら?」


視線があった。


「あらあらあら?」


ふよふよ周りを飛びながら、何故か観察されている。


「あなた、あなたはアッチの列よ」


うぇ?


「もしかして、虫に生まれ変わりたい変な人?」


虫?

ゴキちゃんになって追いかけ回されるのは嫌でござる。


「それとも植物とか菌類とか原生生物希望?」


うぇ?


「あ、蟹とか海老とかの外骨格希望?」


ブンブン首を振る。

美味しく茹でられた未来しか思い浮かばないよ!


「あ、貝とか魚かな? イルカとか水の中で生活するのも含まれるけど」


なんか分類がアバウトな気がするが、美味しく焼かれたイメージしか出てこないよ!


「やっぱりアッチの列よ」


ふぅとふよふよ妖精が笑う。


うん。前の人をよく見たらヤドカリだった。

うん。後ろの人はアンモナイトだったよ!


道理でおとなしいはずだ。

誰もお喋りしてない。

気がつけ! 俺!


しかし、注目されている。

そりゃ、列の横を妖精に先導されているのを見たら見たくもなるわ。


「あら、クラーケンさん、また討伐されたんですか?」


巨大烏賊に妖精が気さくに話しかけている。

討伐?

ってナンデスカ。


「はーい、もうすぐですからちゃんと並んでくださいね~」


ふよふよ。

返事は来ないが、理解できているのかな?


「あら、やだ、ドラゴンさん、あなたはアッチですよ。え、深海魚になって平和に暮らす? ダメですよ。せめて不死鳥ぐらいですかねぇ」


項垂れたドラゴンがスゴスゴ別の列に並ぶ。

うん。不死鳥になったら死ねないよ?


「不死鳥は良いですよ~、焼かれないから頑張ってくださいね?」


うん。確かに焼かれないかも。


「あ、ちょっと門番! お願いされても人間をこの列にいれないでくださいよ!」


鬼がいた。

怒られている。

なんか適当に並んでごめんなさい。


てか鬼なんて居たんだ?

気がつかなかった。


「はい、ここよ」


新しい列に並ぶ。

前の人を観察する。

人間だ。

だがしかし。


なんだろう。

コスプレ?


「チクショウ、あのドラゴン最後にブレスを」

「お前だって最後に爆炎してたじゃないか」

「俺まで焦げたぞ」

「あたしは烏賊に海中に引きずり込まれて水攻めよ」

「溺れたのか」

「ドラゴンに押し潰されるのとどっちが平和か」


うん。なんか殺伐としている。


「はい、静かに!」


飛んでる。

今度は天使がふよふよしていた。


「……天使」


目が合う。


「あら」


ふよふよ周りを飛んでじっくり観察されている。


「あらあらあら」


前に並んでいるグループが振り返り、ピキと固まり前を向く。


「あなた、武器は?」

「え、爪かな?」


ながーく延びた爪で凪ぎ払い。

「後は、噛みつき?」


牙でざっくりと。


ん? 爪と牙で?


「はぁ、なんでこっちの列に?」

「虹門の妖精が連れてきてくれました」

「はぁ、あの子達はニンゲンの細かい違いがまだわからないのね」

眉間を押さえて、思案していた天使はにっこり作り笑いを見せた。


「ここは村人希望な列なの。あなたはアッチの列に行ってくれると助かるのだけれど」


アッチ?

黒い。

黒くて嫌。


「そんなこと言わないで、ちょっと近くで見てみない?」

焦っている天使。

背中を押されながら、渋々進む。


どかーん


爆炎が上がる。

「……」

「……」

ちらっと天使が俺を見る。

「ええと」

「ああ、ドラゴンとクラーケンが騒いでいる」

「もしかしてシリアイデスカ?」

「列に並んでるの見ただけだよ」

「はぁ」

「格好良かったよ。二人とも」

ちょっと触ってみたかった。

あ、居るんだから触らせてもらおう。

「あ、ちょっ」

天使を放置して走る。

「ドラゴン、クラーケン。ちょっと触らせて?」

ピクンと跳ねる。

ギギギと固まった二人が振り向く。

油切れたんかいな?

撫で撫で。

ペチペチ。

「騒がないで並びなさい」

うん。後を着いてくるよ!

しまった。撫でたからか?

餌はあげなかったのに。

そういえば、ワンコを撫でたらずっと着いてこられた事があったっけ。

「ええと、すみません」

離れません。

ナツカレマシタ。

「ツレテイッテイイカラ、アッチの列ニナランデ」

はぁ。良いのでしょうか。

お前たち、静かにね。

黒い蝙蝠が飛んできた。


「うわーん、魔王様、何処行ってたんですかぁ~」


おかしい。蝙蝠が何か騒いでいる。


「うわ、何拾ってきてるんですか!」

うん。ドラゴンとクラーケンだ。

可愛いだろ?


「……モトイタトコロニステテーー」

ギロリ

蝙蝠が汗をかいている。

「ダメですよ。ミノタウロスとケンタウロスが泣きますよ?」

うん? 牛と馬?

「それでなくてもケルベロスとバハムートがお出迎えの順番争いをしているのに……。クラーケン連れて帰ったらリヴァイアサンがすねますよ?」


なんだ? その設定は。

と言うか。

ダレガ魔王様?


黒い集団が見る。視線が集まる。

ええと。

「魔王様、お時間です! 起きてください」

蝙蝠がヒラヒラしている。

うるさい。


「ご飯ですよ~」

飛び起きた。ご飯だ!

なんかパタパタ蝙蝠が飛び回っているが気にしない。

テーブルに山盛りのーー!?


骨付き肉(生)

魚盛り合わせ(生)

野菜のぶつ切り(生)


山盛りであった。


これを喰えと?

添えてあった岩を握りつぶす。


「あ、魔王様、岩塩は貴重なのでそんなに削っては」

そう言いながら皿をテーブルに乗せる。

「……アンモナイト」

ウルウルしたアンモナイトが皿の上に。

「こら、モトイタトコロニステテキナサイ」

「え、魔王様の好物折角捕まえてきたのに」

ブツブツ言いながら、パッと顔をあげる。

「あ、一緒に捕まえたクラーケンの踊り食いの方が良かったですか? 今持ってきます!」

ちょっと待て!

「海に放してきなさい」

「え、じゃあ晩御飯にと思っていましたが捕まえた勇者料理してきますか?」

待て、こら、

「ゆ、勇者?」

「そうです。ドラゴンと一緒に捕まえました」

なるほど。

どうやら夢らしい。


逆さ磔になったドラゴンが今当に首を飛ばされようとしていた。

「血抜きをしようかと」

ヤーメーロー

放たれたドラゴンが甘えた声を出しながらすりついてくる。

「魔王様、いつの間に調教を」

クラーケンは檻の隙間から逃げ出そうと必死に絡まっていた。

絡まった脚を解して、檻から出すのが大変だったが出ると背中に隠れる。

その巨体が隠れるとは思えないが。

「……魔王様、いつの間にクラーケンまで躾たんですか」

勇者は、魂を引っ張り出されているところだった。

「え、魂の踊り食いの加工を」

いらんわ。

「すみません。そのまま踊り食いが良かったですかっ」

やめなさい

勝手に勇者の魂がホヨホヨ飛び立とうとしたので、捕まえて身体に押し込む。

「え、放すんですか? でも生きて帰った勇者は人族の王の晩餐料理にされますよ? 何でも寿命が延びるとか。まぁ迷信ですけどね。あ、食べられるのは本当ですよ」

とんだゲテモノ晩餐があったものだ。

うん。


勇者は結局住み着き、畑を耕したり花を育てたりスローライフを堪能して寿命で死んだ。

無理な能力開発をされて元々短命にされていたらしい。

化物じみた能力を持つものが 長生きするのは問題だとーー。

「魔王様、人族が勇者の弔合戦をするとか粋がってますが」

放っておけ。

途中の竜の谷の竜達が人を通したりしない。

海はクラーケンとリヴァイアサンが頑張っている。

街道はバハムートが走っている。

「世界征服しないんですか?」

「コカトリオスの養鶏はどうなっている」

「一杯増えてますよ。卵もお肉も」

卵は、栄養豊富だ。それに。

マヨマヨが作れる!


基本のマヨマヨ

卵黄、酢、塩、胡椒を混ぜ合わせる。

油を最後に混ぜ合わせる。


玉ねぎのみじん切りを混ぜればタルタルになる。

ああ、マヨ生活!


うん。でも酢が作れないんだけどね!

酢の作り方知ってる人プリーズ。


酢が作れたら、ドレッシングも作れる。

味噌も醤油もソースもなんで作るか知らないよ!

原材料大豆と言うのは何となく覚えていたけどね。

スーパーに売ってるのしか知らないよ?


はぁ。生の食材を焼いてみたら消し炭になったよ!

火力調節は頑張りました。

塩焼きなら美味く焼けるようになったので、食事時間は戦争である。

だからお前たち、火力調節覚えろよ。

列がならんでいる。

魚や肉を焼いてもらうためにね!

「学校で焼き加減を教えているんですが、中々難しいです」

肉を焼く。塩味で。

魚を焼く。塩味で。

野菜は細かく切って炒める。塩味で。

でもみんな美味い美味いと食べている。

釜戸でも造るか。

薪を炭に加工してーー。

どうやって炭にするんだっけ?

釜が出来たら、焼き物が食器が出来そうだ。

ええとドウヤッテツクルンダッケ?


知らん。

勉強しとくんだったよ!


「魔王様の焼き魚美味しいよ!」

ちびっこが目を毎回キラキラして来る。

「火魔法の火力調節覚えろよ」

「うん!」

ちびっこはお勉強が楽しいらしい。

美味しいもののためには貪欲だ。

「野菜も食えよ」

「が、カンバル」

目が泳いでいる。何気に可愛い。

「魔王様って子供好き?」

「良いパパに成りそう」

ゾクリ

乙女たちよ。コワイヨ?


「海水から塩は出来そうか?」

「煮詰めて何とか出来そうだと」

「魔王様、サンプルの植物とか見てください」

「魔王様、辛い実とか食べられませんよ?」

「潰して少しずつ使うんだよ」

「へー」

「魔王様、キノコはやめた方が」


当たった。現在絶賛ダウン中。

「ううん?」

丸みのたわわな果実が目の前に?

「ちょっと待て!」

「あああん。魔王様~」

むきゅ

タプン、タプン。

何かに似ているとは思ったが、夢魔だったのかよ!

「ちょっ、なんでっ周りに」

沢山の目が‼

なんか乙女が沢山居た。

「魔王様~死んじゃう前に子宝を~」

「は?」

死なないよ?

死なないよね!

「ちょっとなんで並んで?」

「じゅんばーん」

待て! うきゃ

子供が混ざっている。

「…………」

「……魔王様」

「魔王様~美味しい焼き魚モットー、あああん」

すまん。ゲンキニナッタヨ!

「魔王様、やっぱり子供好き……」


「はいはーい、並んで?」

「次のかたーー」

やっと順番が来た。

「え~と、生前は魔界の食生活改善に勤めて新食材の開発のため試食したキノコにより…………寝込んでたら襲われて、あらあら」

女神様が生温かい笑顔を見せる。

「安心して、貴方の子供は沢山出来たから血筋は残したわよ」

はぁ、ソウデスカ?

良かったんですか?

子育て出来なかったんですが。

「あらあら、育児したかったの? そうね。生まれ変わり先はーー」

気になるよ。

残してきた乙女たち。

子供たち。

そして。


あ、マヨマヨの作り方覚えなきゃ!


胡椒

…………油ってどうやって?

絞るんだっけ?



「まお」

うん?

「真音、朝よ!」

おはようございます!

朝日が眩しいです!

「キノコ図鑑、食べれる山菜?」

枕にして寝てました。

うん。これ食べたのに似ているね。

図鑑見ても覚えてなかったらダメじゃん。

「まお、ドレッシング作って」

「おぅ」

ドウヤッテツクルンダッケ?

「マヨマヨでもイイデスカ?」

「もう、何でもマヨネーズなんだから」

Oh唐揚げ! 作り方覚えなきゃ!

「……まお、やりたいならやって?」

「♪」

じっと見ていたら任された。

朝から、大量に唐揚げ作りました!

お弁当にも詰めました!

神棚にも忘れずに!


お酒とお醤油で下味つけて、片栗粉でさくっとあげて。

片栗粉? ドウヤッテツクルンダッケ?


じゃがいも? ドウヤッテサイバイスルンダッケ?









「女神様、何見てるんですかぁ?」

「ナイトメアの夢よ」

「……あの方、よく列に並ぶんでけど」

「ああそうね、ダラダラ寝ている方だから。でも夢の中で働いている面白い方よ」

「……寝ていると言うか、どうやら封印されている見たいですけど?」

「そのうち、飽きて起きると思うわ」

滅びのない肉体から抜け出して、色々な世界を遊んでいる魔王様。

「色々知識が増えているみたいなんですが良いんですか?」

「フフフ、あの不味いお供えが美味しくなるんだから良いのよ!」

生肉のお供えが、美味しく塩焼に成った。

「……唐揚げ来ました!」

魔王様がお供えしている。

「あなたはアッチの生魚で良いわね?」

「嫌ですー女神様ーーヒトクチ下さい」

「女神様、芋団子来ましたよ!」

「女神様、芋の揚げたのが‼ 美味しいですよ、これ!」









気がつけば、列に並ぶ。

フフフ。蕎麦も育てて粉にして麺を打つところから覚えたよ?

さあ、次は何をしよう?


「うわーん、魔王様、いい加減戻ってください」

蝙蝠が泣きながら飛んできた。


うん?


「また人族が勇者を造ってます!」


げふ

何かタックルしてきた!


「うるうるうる」

尻尾が斬られたドラゴンがのし掛かってーー。

誰だ! ドラゴンは保護獣だぞ!


「あー、よしよし、縫ってやるよ。大丈夫、多分クッツクヨ?」

しまった。お裁縫はあまり巧くない。


「ちょっと待っとれ」


ふよふよ飛んでいる天使がひきつっている。

「そこの僧侶。回復魔法のレベルは?」

「!?」

おっと、列に並んでいたのは騎士だ。

「わわわ、私は結界師です」

「結界? 知らん。オシエロ」

「ひーー」

うるさいので、黙らせる。

「あー、勇! 何処にならんでるんだ? コッチ来いよ」

勇者は檻の中に居た。

ナンジャコリャ

「魂の檻」

つつくと弾け飛ぶ。

「あ、今のが結界か」

子供な勇者を小脇に抱える。

「はーい並んで? あわわ、魔王様! ってナニシテルンデスカ?」

「回復魔法の使える奴はドイツだ?」

「回復? 何に使うんですか」

「ドラゴンの尻尾を斬ったバカがいる」

「あらあら、では次は回復魔法のお勉強を?」

うん。ついでに医療も習うか?

「……医者はドイツだ?」


今日も列に並ぶ。

そして知識をゲットだぜ?


「あのー、魔王様が勇者浚っていきました」

「あ、魔王様がカルメ焼き奉納しました」

「魔王様が、お薬開発してます」

「魔王様がお茶の新作を」


「ほんと働き者よね」

ポツリと女神が呟く。

囚われの勇者を解放してくれた。

「あのー、魔王様が勇者に寝込みを襲われてますが良いんですか?」

「オホホ、子育てしたいとか言ってたから良いのよ」

「デモ勇者はオトコノコデスヨ?」

「ナンデスト」

魔王様の今日のお勉強はーー。

ハジメテノ!(ゲホゲホ)





終わらない知識で世界は満たされている!




チートの知。(終)



出演

魔王様(真音)ナイトメア

虹門の妖精

審判の天使

魔門の蝙蝠

女神

ドラゴン

クラーケン

夢魔のお姉さん

乙女たち

勇者(短命)

その他 多数

魔界の住人

人族の方々

真音の家族?




テーマ クスッと笑ってね!














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