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3月目
次の満月夜は雨だった。
しとしとと音を立てる窓枠から空をながめたが、月はおろか星すらも見えない。
今日が満月かどうか確かめる術もなく、不安ばかりが募る。
そういえばこれまでの満月夜はすべて晴れていたな、と思った。雨天でも彼女は来るのだろうか。
22時を回った時計を見てふと不安がよぎる。この時間にはもう来ていた。いつものカウンター席でちびちびコーヒーを飲む彼女の姿が浮かぶ。
あれからひと月が経った。彼女はもうこんなちっぽけな店のことは忘れてしまったのだろうか。ひと月はそれほどに長い。
しとしとという音だけが店を占領する。いつも以上に静かな夜に感じた。
結局この日、アネモネは来なかった。