バークリート防衛戦 1
バーボルトside
俺がシルフィードを見送った後、
「行ったかのう?」
近くの物陰からあの人が現れた、
マクスウェル様、
あなたはどこにでも湧くのですね、
「はい、
ですが見送りをしないでいいのですか?」
「わしが見送りをしようとしまいとあの子はあれを倒しに行くからのう、
それならわしの見送りの言葉の時間が無駄になるからのう、」
確かに、
シルフィードは例えマクスウェル様に止められても行くだろう、
「勝てると思うか?」
俺はマクスウェル様に聞いた、
はっきり言うと俺はシルフィードが死ぬ未来しか見えない、
生きて帰ってこいと言ったが今思うと無責任だとわかった、
俺は未来ある子供を死地に送ってしまった、
「バーボルトよ、
わしだってわからん、
わしも勝てると思わんからのう、
だがあのシルフィード殿じゃ、
あの子が何をするかわしもわからん、
もしかしたら勝てるかもしれないからのう、」
そう言うが今回の相手はあの山だ、
俺らなんてそこらへんの小石と変わりない、
それがシルフィード1人が行ったところで意味がない、
「わしらはここに来る魔物を倒すのみじゃ、」
マクスウェル様は笑いながら門の外に向かった、
俺は小さなため息を吐いた、
しばらくしてぞろぞろと冒険者が集まってきた、
ほとんどがCランク以上の冒険者だった、
正直魔族領の魔物はCランクでは力量不足だ、
武器もほとんどが鉄の武器、
あそこの魔物はそんな武器じゃ通用しない、
鉄すらもあそこの魔物は簡単に貫く、
英雄気取りで死んで行く、
「皆、
この街のために集まってくれて礼を言う、
だが今からでも護衛組に向かってもいい、
自分の命を優先しろ、」
俺がそう言うとほんの数人向こうに歩いて行った、
これでいい、
「さて、
残ったものに伝える、
俺たちの役目は魔物を食い止めることだ!
まだ街の住人は避難しきれていない、
俺たちはその時間稼ぎをする!
昨日も言ったが逃げても臆病者と言わない!
逆にここで戦っても英雄とは言わない!
あらかた避難が終えたらお前たちも逃げるんだ!
いいな!」
『おぉ!』
冒険者達の声が上がる、
「俺は見張りを行う、
皆は下で待機だ!
魔物が来たら俺が伝える!」
俺はそう言うと門の上に上がる、
シルフィードはあの山に向かったのか、
ここからでもわかる、
あれには勝てない、
あの山から伝わる重圧、
離れていても伝わる、
マクスウェル様は下で腕組みをしている、
俺は前を見る、
響く振動、
迫る山、
そして、
立ち昇る光と音、
ん?
まさか、
シルフィードの合図か!?
まさかこんなに近くに来ていたのか!?
「全員戦闘準備をしろ!
魔物は近くまで来ている!
弓使いと魔術師は門に登れ!
残りは下で待機だ!」
俺は下に降りた、
そして門の外に向かう、
「シルフィード殿の合図じゃのう、」
「はい、
早くとも明日だと思っていました、」
こちらの都合は御構い無しってことだ、
すると視線の先から爆発音が聞こえてきた、
「派手にやってるな、」
「さすがシルフィード殿じゃ、」
何をしているのか想像できる、
絶対に敵に回せない、
しばらく爆発音が続いていたが突然聞こえなくなった、
どうやら先に進んだようだ、
「ギルマス!
魔物が見えました!」
上の冒険者が俺に伝えてくる、
「弓使いはありったけの矢で敵を牽制するんだ!
魔術師は詠唱を行い近づいて来た奴から倒していけ!
俺たちは武器を構えろ!」
俺は斧を構える、
弓使いは達の矢が上空に上がり雨のように落ちていく、
どうなっているかわからないが何体か倒れていればいい方だ、
「わしも行くかのう、」
隣にいたマクスウェル様がそう言うと何やら詠唱を行なった、
「わしの魔力の半分をこの魔法につぎ込むぞい、
ビックバン・メテオ!」
マクスウェル様がそう言うと上空から光る何かが落ちて来た、
無数に、
それと同時に俺の目から魔物の先頭が見えた、
近づいて来る、
その時にマクスウェル様の放った魔法が先頭の魔物に当たり爆発する、
更に向こうからいくつもの爆発音が聞こえる、
それでも魔物は向かって来る、
続いて魔術師達の魔法が発動した、
魔法が当たるが効果があまり見られていない、
魔物をよく見ると矢が刺さっている者が見える、
皮膚が硬いのか、
「弓使いは半数下に降りてそこから射ろ!
また残った方は魔物の後方に弓を射るんだ!
味方に間違っても当てるな!
魔術師はそのまま魔法で迎え撃て!
大怪我を負ったら周りの冒険者はそいつのフォローをしながらそいつを引きずって後退しろ!」
俺がそう言うと大体の弓使いが降りて来た、
ここからが本番だ、
俺は走る、
周りの冒険者も走る、
先頭を走るウルフが俺に噛みつこうとする、
俺は蹴りを入れてそれを防いで斧で叩きつける、
骨が砕ける音が聞こえる、
横からゴブリンが来る、
俺は斧を横に振り側面でゴブリンを叩く、
よろめいたゴブリン、
その隙に他の冒険者がゴブリンに斬りかかる、
俺はすぐに周りを見る、
オーガ種が突っ込んで来る、
俺は斧の側面でオーガを受け止める、
単純な力比べは魔物が勝つだろう、
だが俺は人間だ!
俺は力を抜いて横に避ける、
オーガは倒れる、
その隙に斧でオーガの首を斬る、
オーガの首が飛び血だまりができる、
俺は次に行こうとすると俺より大きい熊が襲いかかって来る、
俺は斧でそれを防ぐ、
しかし斧の上から俺に爪をたててくる、
俺は腰からナイフを取り出そうとしたが、
「バーボルト!」
あの声が聞こえた、
それと同時に熊が倒れた、
熊の顔に氷の槍が突き刺さっている、
「ありがとうございます!
マクスウェル様!」
「礼はあとじゃ、
それよりも気をぬくでない!」
マクスウェル様はそう言いながら魔法を放って行く、
俺は向かって来る魔物を斬りつけていく、
そんな中、
「ぎゃぁぁぁ!!!」
男の冒険者の声が聞こえた、
見るとキラーマンティスに腕を斬られていた、
俺は急いでキラーマンティスを斧で叩き斬る、
硬い、
早くしないと冒険者の出血がひどく死んでしまう、
キラーマンティスは俺の方を見るとその自慢の鎌を俺にめがけて振りかぶる、
俺は横に避ける、
その時に後ろにいつの間にかいたオーガが真っ二つになる、
俺はこの隙に奴の鎌に乗りそこからキラーマンティスの顔めがけて斧を叩きつける、
斧が顔にめり込みキラーマンティスは奇声をあげて倒れる、
念のために俺は首を斬り落とす、
そしてすぐに冒険者を引っ張って街の中に避難させる、
「治癒魔法の使える奴はこいつを頼む!」
すると治癒医院の奴らなのかすぐに駆け寄って来て治癒魔法をかけ始める、
「なぜここにいる!
ここは冒険者達が食い止める!
これが終わったら避難をするんだ!」
「申し訳有りませんがその申し出は聞き入れられません、
私たちはこの街が好きなのです、
そして私たちの仕事は傷ついた人達を癒すこと、
今ここには私達のような人が必要なはずです、
例えこの命が尽きようとこの街に残らせていただきます、」
おいおい、
本当にいい奴らだな、
「すまない、
何としても中に魔物を入れさせない!」
俺はそう言い急いで外に向かう、
その最中何人もの冒険者が引きずられている、
中には下半身がない者もいる、
外に向かうと真っ先に出会ったのはワイバーン、
大きな口が俺に向かって開かれている、
やばい、
俺は斧を盾にした、
ワイバーンは俺を斧ごと噛みつく、
幸い斧で口が閉じられないが斧がギシギシと嫌な音を立てる、
俺は腰のナイフをワイバーンの目に向かって突き立てる、
ワイバーンは悲鳴をあげて悶え苦しむ、
その時に斧が離される、
俺は斧を振りかぶりワイバーンの首に叩きつける、
首が飛びワイバーンは動かなくなる、
目に突き立てたナイフをワイバーンから抜く、
急いで俺は走る、
だがゴブリンの群れが俺を邪魔する、
その時に、
矢の雨がゴブリンの群れを襲う、
振り返ると、
「弓兵はそのまま矢を放ち続けろ!
魔術兵は詠唱を完了出来次第魔法を放て!
軽装兵及び重装兵は冒険者達に加担するんだ!
傷ついた者は街の中に運び入れろ!」
『はっ!』
騎士や兵がいた、
やっと動いたか、
おっ、
アレクのやつもいるじゃないか、
そして指揮をとっているのはイルバータ王、
「ようやく来たかのう、」
いつの間にかマクスウェル様が俺の後ろにいた、
「そうですね、
遅いくらいです、」
「じゃがこれで少し有利になる可能性、
もう一踏ん張りじゃ、」
言うだけ言って再び戦地に向かうマクスウェル様、
俺も兵士達に混じって向かう、
この戦いで一番厄介なのはワイバーンやガルーダといった飛ぶ魔物、
降りて来てはその都度誰かがやられている、
矢はあまり聞かない、
魔法も当たらなければ意味がない、
クソ!
俺は魔物をなぎ倒す、
上からガルーダ種が襲いかかって来る、
俺は斧で受け止める、
だが斧を取られた!
魔物のくせに器用すぎる!
俺はナイフを出して周りの敵を斬る、
だがオークに手を掴まれる、
流石に力では勝てない、
骨が軋みあげる、
ヤバい、
だが、
「はっ!」
オークの頭が縦に裂ける、
オークの手から力が抜ける、
俺はとっさに距離をとる、
オークが倒れると向こう側にアレクがいた、
「大丈夫ですか!?」
「あぁ助かった、」
「斧は取られたのですね、」
「情けないことに、」
「自分に剣を使ってください、
その代わりナイフを貸してください、」
何言い出すんだ、
「いいのか?」
「はい、」
真剣な目だ、
俺はアレクにナイフを渡す、
アレクはそれを受け取るとアレクは剣を渡して来る、
それと同時にゴブリンの群れが襲いかかって来る、
俺は剣でゴブリンを斬る、
ナイフより使いやすい、
俺はアレクをチラッと見る、
驚いた、
アレクは盾でゴブリンを殴りよろめかせる、
更に顎を盾で上に向かって殴り上に向かせる、
その時にナイフで喉を斬る、
あんな戦い方をするなんて驚きだ、
更に盾で受け流してバランスを崩した隙に首にナイフを突き立てている、
いつの間にかあんな戦い方を身につけた、
俺はゴブリンを蹴り入れてよろめかせる、
そして斬りつける、
粗方片付けると奴が来た、
ガルーダ、
しかも俺の斧を持っている、
クソ!
どうやったら取り返せるんだ、
そう思っていると、
光の剣がガルーダめがけて飛んでいった、
その光の剣はガルーダの頭に刺さり俺の近くに落ちて来る、
俺は斧を拾い光の剣が飛んで来た方向を見る、
そこには大きなシルバーウルフがいた、
俺は斧を構える、
だが、
「シウル殿!」
アレクがシルバーウルフに近づく、
俺は危ないと言おうとしたが、
「アレク、
苦戦しているようだな、」
喋った!?
魔物が喋った!
「今のライトセイバーは・・・」
「それは私です、」
この声はまさか、
シルバーウルフから1人の少女が降りて来る、
美しいプラチナブロンド、
そして、
白いユカタという服を着た、
アスカレイヤ様だった、




