料理と選択1
タチアナ達と出会い友達になったシルフィードはその後も家から抜け出しては酒場で落ち合い遊んでいた、
その数ヶ月後にアリサの妊娠が発覚、
妊娠中は極力労働を控えるようにとガルドに言われている、
そのためターニャはもちろん、
タチアナも酒場の手伝いでよく遊べなくなる、
それを知ったシルフィードは自ら手伝う事を申し出た、
アリサは領主の子供のシルフィードに手伝ってもらうのが気がひけるらしい、
だが、シルフィードと幽霊さんの説得でやっと折れた、
さすがに無給ではいけないので1日100ジェムの給金が支払われる事になった、
シルフィードが手伝っている間、幽霊さんは冒険者からこの街や他の街の噂や情報を盗み聞きしている(幽霊だし気付かれない)
情報を聞いてわかった事、
この世界には魔族がいる、
敵対してはいないが魔族には人族と共に生きていく和平派と魔王を誕生させて完全独立をしようとする狂争派の二つに分かれている、
魔王が倒されて100年も経ち、
人族、魔族が平等に暮らしている世界、
だが、一部の魔族は人族を支配したいと思っているのだろう、
幽霊さんはその事を頭の片隅に置いておいた、
シルフィードの休憩中、
幽霊さんは氷龍に一つ聞いてみた、
(氷龍、この世界の料理って焼くと生以外ないのか?)
(マスター、この7年間何を見ていたのですか?
焼くと生以外の料理を見た覚えがないはずでは?
その目は節穴ですか?
病気ですか?
あぁ、幽霊ですから病気にはなりませんね、
元の体から病気なのですね、
この世界には眼科がないので一生そのままでいてください、マスター、)
幽霊さんは部屋の隅に行きいじけた、
(氷龍!)
虎炎が話に入ってきた、
(眼科があってもマスターは幽霊やし眼科に行っても意味ないで、)
フォローするでなく追い討ちをかけてきた、
(お前ら!いじめて楽しいか!?)
((はい))
更にいじけた、
(まー、そんな事は置いといてや、
マスターはなんでそないな事聞くん?)
更に更に置いとかれた、
心の傷は大きいがすぐに立ち直る(体だけ)、
(焼くと生以外の調理方で料理を作ってここで売り出そうと思う、
その収入の1割をもらおうと思う、)
シルフィードが独り立ちした時に無一文だと辛いためである、
(そうですか、
しかし、どうやって料理をするのですか?
シルフィードにさせるのは店主が許さないと思います、)
子供が料理をする、
それだけで周りの人が黙っていない、
氷龍はそれを懸念している、
(一度シルフィードに頼んでもらおうと思う、
それでダメならガルドかアリサに頼んで一緒に作ってもらう、)
(そういう事なら今すぐ聞いた方がええやろ、
試食するのはガルドかアリサ、
ここの客の方はええやろう、)
自分自身の舌ではなくお客さんの舌に合わせる、
全ての料理人はそうやって料理を作っている、
虎炎はそう言っているのだ、
幽霊さん達の会話にシルフィードが入ってきた、
(師匠、虎炎さん、氷龍さん、
何お話してるんですか?)
(シルフィに料理を教えようかなって話をしてたんだ、
料理を覚えておいて損はないからな、)
シルフィードはそれを聞いて目を輝かせた、
(やります!
頑張ってお料理を覚えます!
ですので教えてください!)
すっかりやる気のようだ、
食いしん坊ではないが美味しいものが好きなシルフィードは自分で料理を作れると知って喜んでいるようだ、
(その前にガルドに頼んで来ないといけない、
ここのキッチンを借りたいから、)
(わかりました!
ガルドさんに聞いてみます!)
シルフィードはガルドの元に向かった、
幽霊さんはその後をついていく、
「ガルドさん!」
シルフィードはガルドを見つけ出して呼びかける、
「なんだ?」
「キッチンを使わせてください!」
ガルドは表情を変えない、
驚いた様子もない、
少し長い沈黙が二人の間を走る、
そして、
「付いて来い、」
ガルドがそう言い歩き出す、
シルフィードは追うようについて行く、
すぐについた、
キッチンであった、
シルフィードはガルドを見る、
ガルドはシルフィードの方を向いて言う、
「いずれ言うだろうと覚悟していた、
ここにある材料で1品作ってみろ、
それで決める。」
ガルドはわかっていた、
シルフィードはただの子供ではないこと、
初めて会った時からそう思っていた、
だから、いつシルフィードが何を言っても対応できるようにしていた、
その一つが料理である、
ガルドは厳しく判定するつもりだ、
娘の友達だろうが容赦なく判定するつもりでいる、
シルフィードはキッチンを見渡した、
シルフィードからみたら未知の世界、
そのため好奇心がくすぐられている、
幽霊さんは材料と器具を見た、
器具はまな板となたみたいな刃物、
大小の鍋、
それと火をおこす魔法具である、
魔法具とは簡単に言うと魔法が使えない人が使うものである、
別に魔法が使える人も使うが基本は魔法が使えない人が使うことが多い、
この魔法具はライターのような大きさで一箇所が出っ張っている、
魔力を流すことにより火が出っ張っているところから出てくるようになっている、
他は鉄板や金網、木のベラがある、
全部鉄でできた鍋蓋があって意味ないだろうと突っ込んでいた(持つ部分まで熱が伝わり持てない上に火傷する)
材料は丸いパン、
野菜(色々な種類がある)、
卵、
酒(調理用ではない)、
肉(干し肉も含む)、
小麦粉、
果物、
そして、塩、砂糖、胡椒である、
わかっていたことだが味噌と醤油はない、
酢もない、
『さしすせそ』の『さ』と『し』しかないようなものだ、
胡椒があるとは思わなかった、
肉の保存や臭い消し、虫除けにもなる胡椒、
酒場に置いてあるから意外にも簡単に手に入るものらしい、
(とりあえず、何か作るか、)
幽霊さんはそう呟きシルフィードの手と足に取り憑いた、
最初に手に取ったのは野菜だ、
玉ねぎとピーマン、
そしてきのこ(小さくて一房に何個も付いているやつ)
まず、野菜を切る、
玉ねぎは世界を超えても目にしみるらしくシルフィードは涙を大量に流している、
ガルドはシルフィードのナタ?捌きに少し目を見開いている、
次はマキに火をつけてその上に鉄板を置く(コの字のコンロ?っぽいところ)
鉄板が熱くなってきたらラードを見つけて鉄板の上に置く(ラードがなければ脂身の多い肉を先に焼いていた)
ラードが溶けるまで肉をミンチにする、
ラードが溶けたら一度ナタ?で軽く広げる、
ミンチを鉄板に乗せてベラで混ぜている、
ついでに 胡椒と塩を少々、
いい具合に焼けたら野菜を入れて炒める、
野菜も焼けてきたところで皿に移す、
ガルドは完成したと思い近づくもシルフィードは手を休めない、
卵を二個手に取り小鍋に入れてベラでかき混ぜる(ボウルがないため手軽な小鍋で混ぜた)
かき混ぜたら鉄板の上に混ぜた卵を乗せた、
全部載せたら急いで皿の野菜炒めを卵の上に乗せてナタ(もうナタでいいや)で卵の焼けたところを剥がして野菜炒めを包むように巻く、
卵が焼けたらナタとベラで持ち上げて皿に盛る、
ケチャップがあれば良かったが今の所これで完成である、
「で、できました」
シルフィードは完成品をガルドに渡す、ガルドは受け取り聞く、
「これはなんて料理だ?」
幽霊さんはシルフィードの口に取り付き、
「オムレツです、」
「おむれつ?聞いたことがないな、」
ガルドはそう言いフォークでオムレツを切り口に入れる、
味は薄いかもしれないが不味くはないはずだ、
(今度ケチャップを作ってみるか?
何年かかるかわからんが、)
何回か咀嚼して飲み込む、
考え込むガルド、無言が再び走る、
「・・・このおむれつはお前が考えたのか?」
口を開いたのはガルドだ、
幽霊さんはシルフィードをただ見ている、
どう答えるか見るためだ、
「いいえ、
これは私の師匠が作っていたものです、」
「師匠?シルフィードに戦い方を教えた者か?」
「はい、師匠はよく私にお料理を作ってくれました、
今まで見たことのない物ばかりです、
オムレツもその一つです、」
シルフィードはちょっと顔をしかめている、
初めて嘘をついたから、
「そうか、他の奴の意見も聞いておきたい、アリサやターニャ達にも食わせてみる、
来なさい、」
ガルドはキッチンを出た、
シルフィードはついて行く、
シルフィードは幽霊さんに念話をした
(師匠、嘘をつくって辛いね、)
(そうだな、
嘘をつく方も傷つき、
嘘をつかれた方も傷つく、
でも他の街に行ったら嘘をついて人を騙して金を奪う奴がいる、
ここにはいないが気をつけなければならない、
特に子供が狙われやすい、
騙されて身売りに連れ攫われる、)
ここも向こうも変わらない、
世界を超えてもそんな奴がいる、
だから裏社会ができる、
幽霊さんはシルフィードに伝えたいと思う、
世界は綺麗なところが少ないと、
だからお前は綺麗なままでいて欲しいと、
だが、生きていく中、必ず汚れる、
綺麗なままでなんていられない、
だから教育しよう、
汚くなっても、
心の中はいつまでも綺麗であり続けるように、
汚れつずけても堕ちない様に、
(俺が教えていくしかない、全てを)
幽霊さんはシルフィードに聞こえない様に呟く、
ぶっちゃけガルドにはシルフィードの嘘がばれている、
二人の子供を持っているからそれくらいどうってことない、
伊達に父親をやっていない、
「アリサ、ターニャ、タチアナ、
少し来い、」
働いていた2人と近所の奥様とお話ししているアリサをガルドが呼ぶ、
「あなた、どうしたの?」
アリサがガルドの近くに来てそうたずねる、
タチアナやターニャもガルドの元にくる、
「これを食べてみてくれ、」
ガルドは3人の前にオムレツを差し出す、
なんの料理かわからないためターニャがガルドに聞いた、
「お父さん、これはなんて料理?」
「オムレツって料理だ、
まずは食べてみろ、」
ガルドは3つのフォークを3人に渡す、
3人はフォークを使いオムレツを食べる、
「おいしいわね、」
アリサの一言に幽霊さんは喜びを感じる、
シルフィードはホッとした様な表情を浮かべる、
「これはあなたが作ったのですか?」
アリサが続けざまにそう聞く、
「いや、シルフィードが作った奴だ、」
ガルドが言い放った言葉が3人に衝撃を走らせる、
「この料理はシルフィードに戦い方を教えた者が教えたらしい、
それに魔法具の使い方も危なげなく使えていた、
だが俺だけの判断だけで決めれない、
お前達はシルフィードに料理を任せていいか?」
店で料理を出す、
それを子供がするのだからガルドだけでは決めることができない、
その意見を聞きに来たのだ、
シルフィードも心配そうにガルド達を見ている、
幽霊さんだけは違うことを考えていた、
料理の際、
その場の材料ですぐに作れる物を考えていたため気にしなかったが普通に魔法具を使っていた、
元の世界でライターを使ったことがあったためかそれを意識しながら使ったのかもしれない、
また、シルフィードの様に魔力が少ない人でも簡単に使えるとわかった、
「私はいいと思うわ、
この料理はおいしいし、
でもちょっと物足りないかも、」
ターニャがそう言う、
ケチャップを絶対に作ろうと幽霊さんは決心する
「私も賛成!
シルフィの料理ならお客さんも納得してくれると思うの!」
タチアナもターニャと同じく賛成意見、
「私もいいと思うは、
それにシルフィードちゃんからいろんな料理を教えてもらいたいしね、」
アリサも笑顔で賛成する、
「そう言うわけだ、
これから頑張っていけ、
シルフィード」
ガルドはシルフィードの頭に手を置き乱暴に撫で回した、
「はい!」
シルフィードはそれに元気な返事で返した、
一周間、
シルフィードは酒場で料理を極めていた、
シルフィードに取り憑いた幽霊さんが一からシルフィードに教えていった、
ナタの持ち方、
火の点け方、
野菜炒めのちょうど良い焼き加減、
全てを教えた、
なぜ幽霊さんは料理をできる様になったか、
それは前の世界で山籠りをしていた(やらされた)時にあまりの自分の料理の不味さに嫌気をさして覚え始めた(当時5歳)、
そして、山でも海でも南極(8歳の夏休みに1カ月ほど)だろうとどこでも料理を作れる様になった、
調味料も(パソコンで)調べて作れる様になった、
また、海で銛を突いたり山でも罠を仕掛けることも覚えた、
酒場ではシルフィード(と幽霊さん)の料理は人気である、
特に唐揚げが酒場の男どもには人気だ、
はじめはシルフィードが作ったこともあり訝しんでいたが一口食べれば次から頼んでくるほどだ、
そのためシルフィードにはジェムが大量に入ってくる、
1割をもらう条件で料理を皆に教えたがここまで売れるとは思っていなかった、
ついでに、
この前リンゴ一個100ジェムと言ったが本当は一個3ジェムであった、
市場に行ったシルフィードと幽霊さんはリンゴ一個の値段に驚いていた、
この世界の一家族の一日にかかる食費は4人家族で大体80〜90ジェムである、
この世界の物価はよくわからないが給金で100ジェムは多いと思ってきた幽霊さん、
だがガルド達の好意に今は甘えようと思う、
少し暗くなってたらシルフィードの帰る時間の合図、
アリサがそう決めた、
家に着いて、自室に戻るシルフィード、
そのままベットに倒れこむ、
(今日も疲れたよ〜)
シルフィードは幽霊さんに念話を送る、
(そうだな、お疲れシルフィ、)
幽霊さんはシルフィードを労う、
(私、お料理上手になったかな?
(上手になってるぞ、
一周間でよくあそこまで上手になったな、)
正直、幽霊さんはシルフィードの吸収力に驚いていた、
今回の料理にしても修行にしても教育にしても、
シルフィードの吸収力は少し異常である、
幽霊さんは生き残るために死に物狂いで覚えていったが、
シルフィードには売られることをまだ言っていない、
そのため幽霊さんの様に死に物狂いで覚えることはなかった、
幽霊さんはそう思っていたが料理を大体マスターしてしまったため一番重要なこと、
シルフィードの人生初の選択をしようとする、
(シルフィ、)
幽霊さんはシルフィードに声をかけた、
(師匠、どうしました?)
(大切な話だ、)
幽霊さんの真剣な表情にシルフィードは起き上がり幽霊さんを見る、
(シルフィ、なんで俺が戦い方や料理などを教えていたか疑問に思わなかったか?)
(特に思いませんでした、
私のためにしてくれていると思っていますので、)
(確かにシルフィのためだ、
それはこの世界で生き抜くために必要なことだからだ、)
(どういうことですか?)
(結論から言おう、
シルフィ、お前は3年後身売りに売られる、)
幽霊さんの言葉にシルフィードはショックを受ける、
(シルフィが生まれて次の日、
シルフィのお父さんのオルソンさんが言ってた、
風の加護を持っていても魔力が少ないから身売りに売るって、
だからシルフィが生きていける様に教えていった、)
(私、いらない子なのかな?)
(そんなことはないさ、
メリアさんは泣いてた、
売られると知ってすごく泣いてた、)
(そうなんだ、
ありがとうございます、師匠、
私を育ててくれて、)
(その感謝は受け取っておこう、
それで本題だが、)
幽霊さんは一度息を整える様に間を置く、
そして、
(シルフィ、お前は人を殺せるか?)




