腹黒シルフィード?
シルフィードが目を覚ましたのはシルフが去って少ししてからだ、
「ん・・・
シルフちゃん?」
「目が覚めたかのう、
シルフィード殿、」
「おじいちゃん?」
シルフィードは体を起こしてマクスウェルを見る、
「私・・・
いつの間にここに?」
「覚えておらぬか?
試合の後シルフィード殿は泣き疲れて倒れたのじゃ、
シルフ様も気を失ってのう、
覚えておらんのか?」
「そうなんだ、」
シルフィードはキツネ耳と尻尾を消した、
「シルフちゃんは?」
「少し前に行ったのう、」
「また会えるかな?」
「会えるじゃろう、」
2人は窓の外を見てそう言い合った、
しばらくして、
シルフィードとマクスウェルはAクラスに戻った、
マクスウェルがシルフィードの様子を見に行っている間は自習としていた、
マクスウェルが扉を開けると生徒たちが一斉にマクスウェルの方を見る、
マクスウェルが入り、
シルフィードがその後に続く、
シルフィードを見ると何人かが微妙な顔になり空気が重くなる、
「シルフィ!
大丈夫なの!?」
アスカレイヤがシルフィードに近づく、
「大丈夫だよ、
心配してくれてありがとう、
アスカちゃん、」
アスカレイヤはそれを聞いてホッとする、
そしてそのまま席に着こうとすると、
「マクスウェル様!」
1人の男子生徒が立ち上がった、
「どうしたのじゃ?」
「獣人がAクラスでいいのですか!?
このクラスは選ばれた者のクラスのはずです!
そんなところに薄汚い獣人が何食わぬ顔でいるなんて自分は嫌です!
獣人は今すぐ奴隷になるべきです!」
マクスウェルはキョトンとした顔になる、
シルフィードもアスカレイヤもそのような顔になる、
「確かアルバート・エルキンスと言ったかのう、
お主は獣人が嫌いかのう?」
「嫌いです!
あんな人間でも、
獣でもない!
よくわからない存在で!
魔王に加担したような奴ら、
さっさと奴隷になればいいんです!」
アルバートと呼ばれる生徒は獣人嫌いらしい、
「ふむ、
魔王に加担したのはほんの一部じゃ、
他のほとんどはひっそりと暮らしておったのじゃが、
それに獣人はそのあと特に悪いことをしておらぬ、
魔王討伐してからも、
討伐した後もじゃ、」
アルバートは渋い顔をする、
生きる伝説の男が言うからには間違いがないからだ、
「ふーん、
そうなんだ、」
シルフィードはそう言いながら自分の席に歩いて行こうとした、
アスカレイヤはため息を1つして言う
「シルフィ、
一応はシルフィのことですよ、」
「そうなの?
でも私、
獣人じゃないからどうでもいいかなって、」
「確かにシルフィは獣人じゃないですね、
でもシルフィの屋敷の家族は獣人ですから気をつけてください、
あの方のように獣人をよく思っていない方もいます、」
「はーい、」
アルバートのせいでピリピリしていた空気が少し和んだ、
「おい!
俺が話している時に話すな!
獣人風情が!」
マクスウェルに口で勝てないからか、
次はシルフィードに矛先を向けた、
「獣人って私のこと?」
「他にどこにいる!
どうせ魔法で耳を隠しているんだろうが!
お前なんかがこのクラスにいるのが間違いだ!
とっとと奴隷に売られてこい!
この化け物が!」
シルフィードはそこまで言われても首をかしげる、
マクスウェルとアスカレイヤの表情が険しくなる、
「うーん、
私は獣人じゃないから売られないし出て行けないよ、」
その言葉がアルバートの癪に触ったのか、
「ふざけるな!
お前はどう見ても獣人だろうが!」
立ち上がってシルフィードに近づいていく、
アスカレイヤはシルフィードの前に立って、
「申し訳有りませんが私の恩人にこれ以上の侮辱は許しません、」
「はっ!
獣人奴隷の反対運動を行っている国の姫が何を言っている!
第一その魔族の襲撃もこいつが絡んでいるんだろうが!」
アルバートは頭に血が上っているのか、
自分より身分の高いアスカレイヤにそう言う、
アルバートはアスカレイヤと睨み合う、
「獣人なんかかばうから魔族に襲撃されるんだろうが!
邪魔だ!」
アルバートがアスカレイヤに手を伸ばそうとするとシルフィードがいつの間にか横に移動してその腕を掴んだ、
「汚い手で触るんじゃねぇ!」
アルバートはシルフィードをもう片方の手で殴る、
シルフィードの頬に当たる、
これにはマクスウェルとアスカレイヤも驚く、
アルバートは何度もシルフィードを殴る、
シルフィードはそれを黙って受け入れている、
アルバートが殴り終えた頃にはシルフィードの頬が赤く腫れていて鼻血が垂れている、
「はははははっ!
いい気味だ!
獣人が出しゃばるからだ!」
アルバートは高笑いをする、
シルフィードはポケットからあるものを取り出して、
「ユーリちゃん、」
アルバートから手を話してユーリシアの元に向かう、
ユーリシアは怯えるようにシルフィードを見る、
「これにはなんて書いてあるかな?」
シルフィードがユーリシアに渡したのはギルドカード、
ユーリシアは恐る恐るそれを受け取り確認する、
「シルフィード、
10歳、
人間、
Bランク、
証人、
マクスウェル・メーテル・ホール、
バークリート冒険者ギルドマスター、
バーボルト、」
アルバートは険しい顔をする、
「嘘つくな!
何が人間だ!
どう見ても獣人だろうが!」
「嘘ではない、
ギルドカードを偽装することはできぬ、
シルフィード殿は正真正銘人間じゃよ、」
シルフィードはユーリシアからギルドカードを受け取る、
「学園長、
この国の規則に確か無意味な暴力は禁止されているんだよね?」
「そうじゃ、」
「それを破ったら貴族であっても重罪って書いてあったの、」
去年この国の法を調べて覚えたシルフィード、
アスカレイヤは何を言いたいかわかった、
ユーリシアとこの状態を見ていたイフリーナもわかった、
「私は意味もなく殴られました、
獣人じゃないのに獣人と言われて暴行されました、
更にアスカレイヤ様に対する不敬罪、
証人はアスカレイヤ様をはじめマクスウェル様、
ユーリシア様、
イフリーナ様、
その他生徒達です、
ギルドカードの中を疑うのであるのでしたら確認してもいいですが確認することは王族であるユーリシア様の言葉を信用していないことになり王族に対する不敬罪、」
淡々と言っていくシルフィードに青ざめていくアルバート、
マクスウェルはアルバートに近寄り、
「このことはお主の家に伝えて国王にも伝えておこう、
心して待っておるのじゃ、」
アルバートは完全に負けた、
その場から逃げたくなり走り出す、
マクスウェルがそれを許さない、
土魔法で床に段差を作りアルバートを転ばせる、
顔から転ぶアルバート、
マクスウェルは更に土魔法で床を盛り上げて簀巻き状態にする、
シルフィードは自分の席についてキツネ耳と尻尾を出して治癒魔法を自分にかける、
傷を治してキツネ耳と尻尾を消す、
(お疲れ、
いい演技だった、)
(ししょーーー、
私が私じゃなくなったよーー、)
幽霊さんと念話するシルフィード、
先ほどのことは幽霊さんがとっさに思いついたこと、
(いい演技やったで!
腹黒シルフィやな!)
(ああ言う輩は一度痛い目に遭わないとダメなんです、)
(確かにな、
それに一度こう言うことを体験するのもいい経験だ、)
(嫌な子になってないかな?)
(アスカはそんなことで嫌いにならないだろう、
驚いているかもしれないけど、)
幽霊さんはそう言うとシルフィードは少しホッとした、
そのあと、
アルバートのことを両親に伝えにいくためにマクスウェルはいなくなるため授業はここまでとなった、




