新しい家、新しい奴隷
ギルドをでたシルフィードは宿に戻った、
そこにはマクスウェルがいた、
「シルフィード殿、
待っておったぞ、」
「どうしたの?
おじいちゃん?」
「まずは、
シウル殿に入場許可書を書かせたのじゃ、
もう1つはシルフィード殿の家じゃ、
候補を見てきたのじゃがその中でも優良物件があったのじゃ、
今から見に行くぞい、」
急かすマクスウェル、
「う、うん、」
シルフィードはマクスウェルの急かしように戸惑っている、
少し小走りして、
「ここじゃ、」
「うわーーーーー、」
シルフィードは戸惑いと驚きの声を上げた、
シルフィードの目の前には広い庭と大きな屋敷だったが外装がボロボロだった、
庭は雑草が伸びきっていて背丈が低いシルフィードが隠れてしまうくらいの長さになっている、
「シルフィード殿の条件にあって安く手に入るものはここしかなかったのじゃ、」
(これはちょっと、)
不意に幽霊さんがつぶやく、
影が薄くなっている幽霊さん、
「幽霊殿のことじゃ、
きっといい屋敷になるじゃろう、」
マクスウェルは幽霊さんに手入れを完全に丸投げした、
(待て、
出来なくはないがシルフィード1人だけでここをやらせるのか?)
「そう言うと思ったわい、
わしに良い提案があるのじゃ、」
マクスウェルはそう言ってまた歩き出す、
シルフィードはついていく、
次に向かったのは、
「ここって、」
「奴隷を売っている場所じゃよ、
シルフィード殿はあまりいい気分じゃないと思うがこれが一番手っ取り早いからのう、
それに、
学園に行ってる間の屋敷の管理も任せられるからのう、」
(確かにな、
あの屋敷に賊が入ったら嫌だからな、)
「そうじゃ、
シルフィード殿はそれでいいかの?」
「師匠とおじいちゃんがそう言うなら、
でも私が決めていい?」
「いいぞい、
わしが選んだらろくなことがないからのう、」
なぜか遠い目をするマクスウェル、
そのあとマクスウェルを先頭に奴隷売り場に入る、
中は変に薄暗く変に豪華な造りになっている、
中には1つの受付がある、
「いらっしゃいませ、
ほんじ・・・!!!」
受付の男性はマクスウェルだとわかると驚いた、
「こ、これはマクスウェル様!
本日はどういったご用件で!?」
悪い顔をした悪役のように手をコネコネしている、
(俺の嫌いなタイプだ、
あの顔を見ていると殴りたくなる、)
幽霊さんがぼそりとつぶやく、
ちなみに幽霊さんの一番殴りたいランキングベスト1位は山里のイケメンスマイル、
「ふむ、
奴隷を買いにきたのじゃ、」
「左様ですか、
マクスウェル様はどういった奴隷でしょうか?」
「おぉすまん、
買うのはこの子じゃ、」
マクスウェルは少し体を横にずれてシルフィードを前に出す、
男はいぶかしむ顔をする、
「マクスウェル様、
申し訳ありませんがこの子はそこまでお金を持っているようには・・・」
男が言い切る前にシルフィードは白金貨の詰まった袋を男に見せた、
男は袋の中を見て驚愕の顔をする、
ちなみに、
この白金貨はワイバーンの相場が崩れる前に大量に売りに出した、
その時に1匹白金貨5枚で取引されたが相場が崩れたら売らなくなった、
そのためまだワイバーンが70匹以上シルフィードの収納魔法の中に入っている、
ハイワイバーンはまだ売っていない、
ワイバーンを全て売ったら次に売るつもりだから、
幽霊さんはついでに何かの交渉に使えると思っている、
男はシルフィードに頭をさげる、
「申し訳ありません、
外見だけで判断しました、」
「私は気にしないよ、」
「ありがとうございます、
それではこちらへ、」
男はそう言って歩き出す、
マクスウェルとシルフィードはついていく、
「ところで、
どういった奴隷をお求めで?」
「えっとね、
女の人で、
お家の手入れができる人かな、
あと少し戦える人、」
家の手入れで首をかしげる男、
シルフィードも思わず難しい事言ったのかなと思っている、
そう思っているうちに1つの部屋に着いた、
「この中でお待ちください、
すぐに条件にあった奴隷を連れてきます、」
男は2人を部屋に入れて扉を閉めた、
中は広く真ん中には机が置いてある、
その四面にはソファが置いてある、
「それでは待つかのお、」
マクスウェルはソファに座った、
その際腰をさする、
シルフィードはキツネ耳と尻尾を出して治癒魔法をかける、
「すまないのう、」
マクスウェルは優しくシルフィードの頭を撫でる、
治癒を終えてシルフィードは耳と尻尾を戻す、
それからしばらくして、
「お待たせしました、
条件に合う奴隷をお連れしました、」
男が戻ってきた、
男が入ると5名の奴隷が入ってきた、
全員女性、
服はボロボロで両腕はには枷がつけられている、
背丈は全員シルフィードより大きい、
胸もシルフィードより大きい、
ただし、
全員獣人である、
猫耳2人、
犬耳2人、
兎耳、
「ここにいる奴隷は戦闘経験はあります、
その上家事の経験があります、
いらないかもしれませんが全員未経験です、」
(本当にいらんな、)
幽霊さんがつぶやく、
するとシルフィードが、
「可愛い!」
奴隷に近づく、
「犬さんの耳も兎さんの耳も可愛い!
猫さんの耳もかっこいいよ!
それにみんなすごく美人さんだよ!
この子達全員買っていいかな!?」
すごく興奮しているシルフィード、
幽霊さんから見ても全員美人だ、
元の世界でもケモミミの女の子は可愛いものだ、
男のケモミミは嫌いだけど(見てなんの得があるのか)
シルフィードは純粋に奴隷達を褒めている、
奴隷達は戸惑っている、
「シルフィード殿が全員買いたいのなら買えばいいぞい、」
マクスウェルがそう言うとシルフィードは男を見て、
「おいくらですか!?」
獲物を捕らえたような目つきになる、
男はたじろぐがすぐに平常心になり、
「そうですね、
1人金貨50枚ですが先ほどの迷惑料と大量購入したため1人48枚にしましょう、」
「はい!」
シルフィードは白金貨24枚男に渡す、
男は驚いて白金貨を確認する、
「はい、
奴隷5人分のお金を受け取りました、
これより契約書を書きます、」
男は紙を5枚懐から取り出す、
その紙に男は何か書いている、
そして、
「最後に血を一滴垂らしてください、
それでは契約が完了です、」
シルフィードはナイフを取り出して指にちょっと刺す、
血が出てきてシルフィードは契約書に血を垂らしていく、
「これで契約完了です、
この奴隷達は貴方の物です、
今後ともご贔屓に、」
男は頭をさげる、
「シルフィード殿、
早速屋敷に戻るとするかの、」
マクスウェルはそう言うと奴隷売り場の入り口に向かった、
シルフィードは奴隷達を手招きする、
奴隷達は戸惑いながらもシルフィードのあとについていく、
そして屋敷の外に戻る、
「さて、
シルフィード殿、
物件に話はつけてあるからのう、
白金貨100枚、
なんとかそれで話をつけのじゃ、
月に白金貨を2枚、
50ヶ月の契約にしてもらったのじゃ、
どうじゃ?」
「それで大丈夫です、
私は屋敷の購入の話はよくわからないので、」
シルフィードはマクスウェルにそう言う、
「それならこの紙を明日役所に持って行くがよい、
そうすることでこの屋敷はシルフィード殿の物になるのじゃ、」
シルフィードは紙を受け取る、
「さて、
まずは屋敷の中に入るのじゃ、
中は埃だらけじゃが特に問題はなかったのじゃ、」
「うん、」
シルフィードは奴隷達の方を見る、
「えっとね、
今からみんなでこのお屋敷のお掃除をするんだけど今日は中を掃除したいの、
いいかな?」
シルフィードは尋ねた、
奴隷達はどう答えればいいかわからないようだった、
シルフィードはどうしようか考える、
「みんなが明日にしたいなら明日からにするよ、
その場合は宿屋に泊まるけど、」
「あの・・・」
犬耳の奴隷が声を出す、
「どうしたの?」
「なんでそんなこと聞くのですか?」
「えっ?」
シルフィードは意味がわからなかった、
「私達は奴隷ですから命令をしてくれればその命令に従います、
ですので私達のことは気にせず命令をしてください、」
犬耳の奴隷の言いたいことがわかったシルフィード、
でも首を横に振る、
「やだよ、
みんなは私の家族になったの、
家族に意見を求めるのは普通だよね?」
奴隷達が戸惑っている、
家族と言われて戸惑っている、
「私はみんなにひどいことを言わない、
そんなこと言いたくないの、
命令はよほどのことがない限り言いたくないの、」
ルルイエに命令した時にシルフィードは思った、
無理やり従わせているからである、
それが嫌なシルフィード、
奴隷達はまだ戸惑っている、
「・・・おじいちゃん、
この子達を宿屋に連れて行って欲しいの、
これはお部屋の追加分です、」
シルフィードはマクスウェルに金貨を1枚渡す、
「うむ、
わかった、
シルフィード殿はどうするのじゃ?」
「本当はみんなでお屋敷の中を掃除したかったけどみんないろんなことがありすぎたから疲れたんだね、
私1人でお庭を手入れする、」
「えっ?
あ、あの・・・」
猫耳の奴隷が声をかけようとすると、
「命令です、
今日はゆっくりと休んで、
食事をしっかりと摂って、
明日に備えてください、
明日はみんなでお屋敷の中を掃除したり壁を補強したりします、
いいですね?」
奴隷達はシルフィードの強い言葉に何も言えなくなった、
それと同時にシルフィードの目には涙が溜まっていた、
命令の言葉を言ったからだ、
奴隷達は申し訳なさそうに頷く、
「おじいちゃん、
お願いします、」
シルフィードはマクスウェルに頭をさげる、
「うむ、
責任を持って送り届けるのじゃ、」
マクスウェルはそう応えて歩く、
「こっちじゃ、」
マクスウェルが奴隷達に言うと奴隷達は歩き出す、
シルフィードは持っているナイフで雑草を根元から切り始めた、
奴隷達はそんなシルフィードを見るだけしかなかった、
「あの子はのう、」
前を歩いているマクスウェルが突然口を開く、
「本当は今年身売りになる予定じゃったのじゃ、」
奴隷達は驚く、
自分の主人が身売りになるはずだったと知ったから、
「じゃがあの子はある人の助言もあったが自分でその運命を変えたのじゃ、
今ではBランクの冒険者をしておる、」
奴隷達がまた驚く、
自分よりも年下の少女が冒険者であることに、
「あの子は奴隷も、
獣人も、
同じ人としてみておる、
優しく、
純粋な少女なのじゃ、
お主らもさっきの会話でわかったであろう、
あの子の心根の優しさを、
あの子はお主らに命令をしたくない、
自分の意思で意見を言えるようにして欲しいのじゃ、
あの子が欲しいのは奴隷のお主らではなく家族としてのお主らなのじゃ、」
マクスウェルが一旦言葉を置く、
「ここまで言ってまだわからぬのならそれで良い、
じゃがそれだとあの子は泣いたままであろう、
ずっと泣き顔をお主らに見せるじゃろう、」
奴隷達が先ほどのシルフィードの顔を思い出す、
辛くて悲しい顔を、
犬耳の奴隷が覚悟を決めたようにシルフィードのところに戻る、
続いて兎耳の奴隷、
猫耳の奴隷2人、
そして犬耳の奴隷とシルフィードの元に戻る、
「あ、あの!」
犬耳の奴隷がシルフィードに声をかける、
シルフィードは手を止めて振り向く、
「どうしたの?」
シルフィードの問いかけに犬耳の奴隷は一度大きく息を吸って言う、
「私達にもお手伝いをさせてください!
でも私達、
ご飯を食べてないからできればご飯を食べてからお手伝いしたいです!」
一生懸命話す犬耳の奴隷、
シルフィードは驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった、
「うん!
ありがとう!
それじゃあみんなでご飯にしよう!」
シルフィードの笑顔を見た奴隷達、
悲しませたことを後悔したがその分頑張ろうと思った、
その光景をマクスウェルは遠くから見守った、
(すまんな、
シルフィードのために、)
幽霊さんがマクスウェルの横に降りる、
「ホッホッホッ、
これも年長者の務めじゃよ、」




