決断する時
オルソンを残してシルフィード達は先に教会から戻り、
シルフィードは上の姉たちに囲まれながらスヤスヤと眠っている、
遅れて戻ってきたオルソンは姉二人に籠手のことを簡単に説明済み、
氷龍が幽霊さんに聞く、
(ここがウィンディア家ですか?)
(あぁ、そうだがどうしてそんなこと聞くんだ?)
幽霊さんの問いに虎炎が答える、
(そこまで深い意味はないんや、
ただな、
ウィンディア家は五家の中で一番権力的に低い家系なんや)
(質問の答えになってない気がするが後で聞くとしよう、
五家ってなんだ?)
幽霊さんは氷龍に尋ねる、
(五家とはその言葉の通り五つの家です、
更に五家を権力、武力と共に束ねているその上の二つの家、上位ニ家、通称上ニ家、
そして最後にそのニ家を束ねる一つの家、無家、
計八家、その中で最下位はここウィンディア家です、)
(なんか五家のことだけ聞こうとしたのに一気に話が広がったな、)
(マスターの聞きたそうな事を先に言っておきました、
質問の手間を省くためです、
さぁ、感謝してください、
そして、更に質問してください、
していただけないのであれば今後の質問に答えません、)
氷龍がおそらく見下すような目で幽霊さんを見る、
(図々しい上になぜ上から目線で脅迫まがいな事言ってるんだよ、
それより、氷龍、
お前そんなキャラだっけ?)
幽霊さんは呆れてそう言うが、
(いえ、作ってみました、
少々遊びすぎました、申し訳ありません、)
以外にも謝罪をする、
すると横から虎炎が
(マスター、
次は五家や上ニ家、無家の事を聞くと思うから先にうちが説明するで、)
そう言うと答えを聞かずに説明しだした、
(五家はな、
おそらく予想していたかもしれんがな、
属性の事や、火、水、土、雷、そして風、
日本の陰陽で言うと五行の火、水、金、木、土やな、
ここでは魔法と言う形で属性の力を発揮させるんや、)
(魔法か、あの長ったるい呪いの言葉?を言って最後に厨二的な魔法名を言うあれだよな?)
幽霊さんは魔法についての事を氷龍に聞いた、
(はい、最もこの世界の魔法は詠唱が長いだけで威力はあまりありません、
最も、使用者が未熟なだけかもしれませんが、)
氷龍は辛口で記憶の中にある魔法についてそう言う、
(マスターは見た事ないかもしれんがこの世界の魔法は氷龍の言う通り詠唱が無駄に長いんや、
小さい火の玉作るのに1分かかってんねん、
しかも威力は・・・例えるならドッジボールのボールを野球選手のピッチャーが90キロで投げて更にボールに火がついたような感じや、
当たっても痛いってだけで炎が相手に燃え上がらずに当たっても消えるんや、
ぶっちゃけボールを全力で投げたほうが威力あるんや!
あんなんを炎だと言われると腹正しいんや!
炎の冒涜や!
炎はな、敵を燃え上がらせてじわじわ、あるいは一瞬にして完全燃焼させなあかんのや!
別にうちは燃やして楽しむ趣味はないんや、
でもな・・・)
虎炎が最後まで言おうとしたら、幽霊さんは止めた、
(虎炎、気持ちはわかった、
確かに燃え上がらない炎は意味がないし俺としても炎と認めない、
でもな、それを今ここで言っても意味がないだろう?
俺は魔法を使えない、
今まで虎炎と氷龍の力に頼りっきりだったから、
その話は少し落ち着いてから、
せめてシルフィードが大きくなるまで待ってほしい、
俺が教会で言ったように俺があの子を育てて魔法も少し使えるまで、)
ここで虎炎の怒りをぶつけても何もできないとわかっている、
しかし、幽霊さんは考えなしで物事を言っていない、
シルフィードを育てる事、
それが虎炎の怒りを解消させる為の近道にもなる、
そして、元の世界に戻る為の道にもなる、
そう考えている、
(せやな、
申し訳ない、マスター、
脱線したから話を戻そう、
それでな、上ニ家は光と闇、
この世界で言う上位属性や、
最後に無家、これは無属性や、
なぜ無属性が上なのか、
それはな無属性は無色と呼ばれていてな、
何にでも染まる、
何にでも慣れる、
全ての色に慣れる、
つまり全属性を扱う事ができるんや、)
虎炎が一通り説明を終わらせる、
次に氷龍が
(ここは風の精霊、
シルフが降り立ったと言われる場所、
ウィンディア領ですそれ以外は街道のある場所以外は森で囲まれています、
他にもイフリートが降り立ったボルケーノ領、
ウンディーネが降り立ったアクアリムス領、
ラウムが降り立ったスパークル領、
ノームが降り立ったアースグライド領があります、
別にこの5つはいがみ合っていませんがウィンディア家は他から見下されています、)
幽霊さんは氷龍の言葉に思い当たる事があったため聞いてみた
(それってこの領主の昔の豪遊のせいか?)
(その通りです、
ただ豪遊しただけではまず見下されませんが、
この者たちは他の領に視察の名目で他領地内を少し荒らして行きました、
そのためか今の領主に良いイメージを持っていないようです、)
幽霊さんは内心何やってんだと思った、
氷龍は更に続ける、
(資金がなくなっても他の家は援助を行いませんでした、
自分で蒔いた種ですので自業自得です、)
自分の領地を荒らしていった者を援助する人はいない、
そう話している間に夜になっていた、幽霊さんはシルフィードを氷龍と虎炎に任せて屋敷をうろつく、
少ししてある部屋の前で
「あなた、お話って?」
部屋の中からメリアの声がした、
幽霊さんは壁抜けで中に入る、
「あぁ、シルフィードの事だ、」
オルソンがメリアに向かってそう言う、
幽霊さんは黙って聞く、
「・・・お前にとって辛いかもしれないがシルフィードが10歳になったら身売りに売る」
オルソンの言葉にメリアが驚愕する、
身売り、
売られたら奴隷や娼婦のような扱いをされると氷龍が言っていた、
主にお金がない貧しい村の人が子供を売る事が多い、
子供は大人と違い直ぐに物を覚える、
その上直ぐに寿命が来ないため高値で売られる、
「そんな、なんでですか!?」
メリアが声を荒げる、
「協会であの子の魔力について聞いてきた、その結果ほぼ0に等しいと、
加護があっても魔力が困難ではこの家を継ぐ事はできない、
他の家にも継ぐ事もできない、
それなら身売りに売ってお金に変えれば、」
オルソンがそこまで言うとメリアがオルソンの頬を思いっきり叩いた、
「なんでよ!
あの子は生まれたばかりよ!
これからは成長すれば魔力だって増えるかもしれない!
別にこの家を継いで欲しいわけじゃないは!
あなたはシルフィードが可愛くないの!?」
オルソンが叩かれた頬をさすりながら、
「そんなはずない!
だが今のこの家には家族や使用人を楽に養える金がないんだ、
そこにシルフィードが増えたら近い将来まず使用人に払う金がなくなる、
さすがにタダ働きをさせるわけにはいかない、」
そう言い終えるとメリアが泣き崩れた、
自分の子供が将来売られると思うと泣かずにはいられないだろう、
だが幽霊さんは納得出来ない、
なぜ親の都合で子供が酷い目に遭わなければいけない、
幽霊さんの幼少時、
親が裏社会に首を突っ込んだおかげで子供の頃殺されかけた、
幽霊さん自身そのような体験があるためシルフィードを売る両親をよく思わなくなってきた、
(・・・俺らがしっかりしないとな、)
幽霊さんはシルフィードが一人でも生きて行けるように育てようと心の中で誓う、
だが、
幽霊さんはシルフィードの人生の選択を幽霊さんがしないようにしようと思っている、
戦い方や教育はするつもりでいる、
しかし、
自分の道は自分で決めさせる、
決してその事に口出しはしない、
向こうから相談が来たら少しアドバイスをする程度にする、
(シルフィード、
明日からちょっとスパルタに行くぞ、
覚悟しておけ、)
明日から始まる幽霊さんの修行を幽霊さんはそっと微笑みながらそう思うのであった、




