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出発前に

季節は夏、


日差しが暑く仕事がはかどらないなか


シルフィードは走っていた、


汗ひとつ掻かずに、


薄手で半袖のワンピースをきて荷物運びをする、


今日までに色々な仕事をこなしてきた、


討伐、配達はもちろん治癒院の手伝い、


薬草調達、


村までの配達、


鉱山での採掘、


ウエイトレスなど行ってきた、


結果は全て達成、


皆が満足する結果を出している、


また、


夏の時季になると酒場の依頼で魔法で氷を出して欲しい依頼もきた、


夏の間食料の腐敗がひどいためである、


シルフィードは魔法で氷を大量に作ったがそれなら氷室を作ればいいのではと思い酒場の中の隅に氷龍の力で小さい氷室を作った、


酒場のマスターは大喜びしてシルフィードに感謝した、


ちなみに氷室はガルドの酒場の裏にも作ってある、


ここの氷室の数倍の大きさである、


更に氷龍の力で作った物だから半永久的に溶けない、


過去に幽霊さんはハワイ諸島の火山に氷龍の巨大な氷を落としたことがある(無断で)


その氷は溶けず、


今も溶けずに漂っている、


シルフィードが午前中の仕事を終えて宿に戻る、


「シルフィード殿、

ちょうどよかった、」


扉を開けるとマクスウェルがいた、


アレクもそばにいる、


「おじいちゃんどうしたの?」


「うむ、

護衛の依頼を覚えているかの?」


シルフィードは頷く、


一番楽しみにしていた仕事だからだ、


シルフィードが忘れることはない、


「明日が学園の最後の登校日での、

その次の日に出発しようと思うのじゃがいいかの?」


明後日から学園は夏季休暇に入るらしい、


「大丈夫です、

何か持っていく物はありますか?」


「特にないのう、

少しお金を持って行っておくと良い、

向こうでお土産や珍しい食べ物を買っておくと良い、」


マクスウェルはシルフィードにそう言う、


アレクはシルフィードを難しい顔をしながら見ている、


「アレクさん、

私を見てどうしたんですか?」


「あぁ、

シルフィード殿はなぜ汗を掻いていないのか気になってな、」


シルフィードはアレクの体を見る、


軽装の鎧の隙間からキラリと光るものは見える、


「そういえばそうじゃのう、

魔法を使っているようには見えぬが何か特別な訓練をしてるのかの?」


マクスウェルも額に球の汗が出ている、


シルフィードはワンピースのスカートの中から氷龍を取り出した、


スカートが捲れ上がったためアレクは目をそらす、


マクスウェルは慣れたのか顔色ひとつ変えずにシルフィードの取り出すものを見ている、


「この子のおかげです、」


シルフィードは氷龍を抱きしめる、


氷龍は密かに苦しいですと念話でつぶやく、


「籠手かの?

前から思っていたがその籠手はなんなんじゃ?

今までそのような籠手は見たことがないのじゃ、」


(そりゃ神が作ったものだからな、)


幽霊さんは遠くの方でボソリとつぶやく、


「それについては師匠に聞いてください、

私もわからないので、」


(まだ話してないからな、

近々話すか、)


幽霊さんはまたもや遠くでつぶやく、


「それでこの子の力で夏は涼しいの、」


シルフィードは更に氷龍を強く抱きしめる、


氷龍は苦しそうの苦しいですと念話する、


虎炎は笑いをこらえている、


氷龍の力の一部、


体に微かな冷気をまとわせている、


それは虎炎も出来て虎炎の場合は微かな熱をまとわせることができる、


そのため夏は氷龍、


冬は虎炎が非常に役に立つ、


「幽霊殿よ、

教えてくれぬかの?」


マクスウェルは幽霊さんの方を向いて聞いてみる、


(そうだな、

俺も最近少し知ったし、

時間ができたら説明しよう、

その時の話は他言は無用だ、

意外と話が大きいから、)


「意外と、

わかった、

その時を楽しみにしておく、」


マクスウェルは頷く、


アレクは聞こえていないため話に参加しなかった、


そのあとマクスウェル達と別れて昼食を食べて宿屋の主人に明後日のことを説明して宿を一時的にチェックアウトする話をする、


主人は大丈夫と言う、


その後シルフィードはギルドに行って仕事をする、


荷物運び先に明後日からしばらくいないことを伝えると皆が残念がる、


夕方になり宿に戻っている最中、


人通りが少なくなった大通りをシルフィードは歩いていた、


シルフィードは辺りを見回していると1人の老婆が目に入る、


シルフィードは近く、


白髪で髪をまとめている老婆、


老婆1人が持つには多い荷物、


「大丈夫ですか?」


シルフィードは声をかける、


老婆はシルフィードの方をゆっくり向く、


「大丈夫よ、

ありがとね、」


老婆が再び歩き出そうとするとシルフィードは荷物をひとつ持つ、


「お家まで運びます、」


「あらまー、

大丈夫なのに、

でもそのご好意に甘えるわ、」


老婆はにっこりと笑う、


少し歩くと一軒の家が見えた、


「ここがあたしの家よ、

よかったら上がっていって、

お礼に冷たい飲み物と簡単な料理をご馳走するわ、」


老婆はシルフィードに言う、


老婆の誘いを断ろうとするが、


「おじいさんが今日は遅くなりそうだから寂しいのよ、

よかったらこの老いぼれの相手をして欲しいのよ、」


そう言われたら断れないシルフィード、


そのまま老婆の家にお邪魔する、


客間には書物が積み重なっていた、


老婆は書物の山を見ていたシルフィードに恥ずかしそうに言う、


「おじいさんの趣味なのよ、

これは全部魔法に関する書物なのよ、」


(なんだろう、

どこかの爺さんを思い出す、)


幽霊さんは2日後に一緒に旅する老人を思い出していた、


老婆はシルフィードを座らせるとコップを持ってきた、


中には水と氷が入っていた、


更に魚を焼いたものと野菜を持ってきた、


「量は少ないと思うけど歳をとると食が細くなってね、

今ではこの量しか食べられないの、

ごめんね、」


謝られてシルフィードは困惑する、


「わ、私は大丈夫です、

それに食事を出してくれているんです、

私の方こそご迷惑をかけてないかと思いまして・・・」


シルフィードは早口でそう言う、


「小さいのにしっかりしているのね、

大丈夫よ、

今日は1人で寂しい思いをするところだったから、

あたしこそ無理やり誘ってごめんなさいね、」


終わりのこない謝罪のエンドレス、


幽霊さんはこのままではきりがないと思っていた、


少ししてシルフィードが話題を変える、


「そういえばおばあちゃんのお名前はなんですか?」


「そういえば名乗ってなかったね、

あたしの名前はメルヴィナ・メーテル・ホールよ、

あなたの名前は?」


シルフィードは驚いた、


「メーテル・ホール、

マクスウェルおじいちゃんと同じ、」


「おじいさんをそう呼んでいるってことはあなたがシルフィードちゃんね、

おじいさんがこっちに帰ってきてからあなたのことをよく話すのよ、」


世間は狭いと幽霊さんは思った、


(まさかマクスウェルの奥さんに会えるとは思わなかった、

しかもエルフではなく人か、)


「おじいちゃんのお話を聞かせてください!」


「いいわよ、

あの人の武勇伝とかいっぱいあるから聞いて行って、」


こうしてマクスウェルのここ60年くらいの話をシルフィードは聞いた、


どれくらいの時間が経ったのだろう、


玄関の方に人が来たことをシルフィードが感知した、


「ただいま、

メルよ、

今帰ったぞい、」


玄関を開けてマクスウェルが帰ってきた、


メルヴィナは玄関まで行き、


「お帰りなさいおじいさん、」


「お客が来てるのかえ?」


マクスウェルがメルヴィナに聞くとシルフィードが顔を覗かせた、


「おじいちゃん、

お邪魔しています、」


「シルフィード殿か、

まさかメルと一緒とは思わなかったぞ、」


(密かに俺もいるぞ、)


幽霊さんも壁から顔を出す、


誰も何も言わないからいじける幽霊さん、


「シルフィードちゃんはいい子ね、」


「そうじゃろう、

今時の子供とは思えない子じゃ、」


老夫婦がシルフィードを褒める、


幽霊さんは教育の賜物だと言いたいがスルーされるからあえて言わなかった、


「それでおじいさんは今回は何人護衛をつけるのですか?」


メルヴィナは明後日の護衛については聞いている、


マクスウェルが魔王討伐に参加した1人と言ってもメルヴィナは心配なのだろう、


「今回は1人じゃ、

その者はメルと同じくらい信用している者じゃ、」


「あたしと同じくらいですか?

それにその者は腕が立つのですか?」


「大丈夫じゃ、

わしとバーボルトに勝てるくらいの強さじゃ、

余程の者が来ない限り負けることがないじゃろう、」


シルフィードは自分のことを言われているため話に入れずなんとも言えない表情になる、


「そうですか、

ですが気を付けてくださいね、

その者が強くても油断はしないでください、」


「わかっておる、

じゃから安心してわしを見送ってくれぬかの?」


(いい夫婦だな、)


幽霊さんは遠くから見守っていた、


それからシルフィードは老夫婦から色々話を聞いてから宿に戻った、


出発前にいい話が聞けたとシルフィードは思った、


幽霊さんはマクスウェルにことごとくスルーされていじけている、

これを書きながら自分の老後を考えてしまった、


まだ20代なのに、

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