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7.甲子園

 四月、またの名を、卯月。小、中、高校生の学年が一斉に一を足される特別な月。いや、よもすると学年をプラスすることが出来ない者も中にはいるのかもしれないが、秋良たちも無事に進級し、新入部員を今か今かと待ち望む頃になり、春季県大会が開催される。この大会で優勝した所で、甲子園への切符が得られる訳ではない。だが、夏の甲子園をグッと傍に引き寄せるためには、この大会でより良い成績を残し、より良いシード権を得ることは、とても重要なことだった。つまり、最低目標は、ベストエイト。あくまでも、最低であり、出来ることならば優勝して、自信をつけたい。すでに始業式や入学式を終え、授業も始まっているため、大会は土日を使い少しずつ行われる。秋良たちの県ではそれほど参加校数が多くないため、シード権がなくともだいたいは三回、くじ運が良ければ二回勝てばベストエイトだった。篠山高校は、三回勝たなければベストエイトには入れないブロックに納まった。一回戦はあまり聞き馴染みのない無名校で、ピンチの場面を迎えること無く、無難に勝ち進め、翌週の二回戦で前秋の大会で八強だったチームと激突した。相手は強いぞ、舐めて掛かるな、と試合前に檄を飛ばした真冬の予想通り、白熱した好ゲームとなった。初回に秋良が立ち上がりを打たれ二点を先制されるも、その後徐々にリズムを取り戻し、真冬のタイムリーツーベースや紀洋の犠牲フライなどで中盤に追い付く。八回裏には、新二年生で次期キャプテン候補の烏丸大地が、勝ち越しのツーランホームランを放ち、逆転勝ちを決めた。その勢いのまま三回戦を五対零と快勝、見事ベストエイト進出を果たし、ゴールデンウィークの初日の準々決勝、先の選抜甲子園に出場した第一シードの大本命、鳥ヶ浜高校との一戦を迎える。

「挑戦者のつもりで、全力でやるぞ」

 静かに言い放った真冬の言葉に、全員が声を揃えて賛同した。円陣を組み、皆が手を差し出し重ね合わせる。

「さすがに今日は、打たれると思う」

 視線が、秋良に集まった。

「お前、何弱気になってんだよ」

 正幸が茶化してくれたおかげで、チーム全員の緊張した雰囲気が少しだけ和らいだ。ちげーよ、と秋良が苦笑いで答える。

「忙しくなると思うけど、守りは頼んだからな、油断すんなよ」

 珍しく、真冬が声を出して笑った。

「油断なんかすんのは、チームで一番調子乗りのお前だけだよ」

 ドッと笑いが沸き起こり、秋良は少し恥ずかしくなったが、嫌な気持ちにはならなかった。

「だから、バックは任せとけ」

 自信満々に真冬が言い放つ。これだからこいつは頼もしい。

「俺らも、死ぬ気で走り回るんで、先輩は紀洋さん目掛けて、全力で投げてください」

 ショートの二年生、大地が言った。真冬に似たのか、もうすぐキャプテンになる自覚が芽生えたのか、最近の大地はやけにチームの士気を高めようとした言動が目立つ。その調子でチームを引っ張っていってくれよ、と秋良は心の中で願った。柄にもないことなので、口に出しては言わなかったけれど。会話が落ち着いた所で、真冬が絶対勝つぞ、と叫ぶ。チーム全員が、オーと雄叫びをあげて、ベンチから走り出す体勢を整えた。主審の手が上がり、行くぞ、と真冬の声。ダイヤモンド目掛けて、一斉にスタートを切る。整列し、帽子を取った。お願いしますの挨拶と同時に、鳴り響くサイレン。緊張感が高まった。

「待ってろよ」

 マウンドに上り、ロージンを手に馴染ませながら秋良が呟く。

「……甲子園」

 目を瞑り、大きく息を吸う。甲子園を瞼の裏に想像させながら、ゆっくりと息を吐く。学校のグランドよりは、ずっと近づいたように思う。それでもまだ、現実は遠い。相手側のスタンドから、ざわざわと人の賑わいが聞こえてきた。甲子園の常連校は、こんな春季大会にでもそれなりの応援団が押しかけるのか。保護者や友達が何人か来る程度の、こじんまりとした篠山高校とは大違いだった。目を開けて、寂れた三塁側のベンチを見やる。ポツポツとしか人がいないため、それぞれが一瞬にして誰なのか分かってしまう。部員の親も、兄弟も。クラスメイトも──五条春菜も。

「アキラ!」

 パンパン、とミットを鳴らす音。我に返り、ホームベースを見る。上昇気味の心拍数を落ち着かせるように、息を整えてゆっくりと振りかぶった。投げ下ろす腕に、力が入る。調子は、悪くない。後は全力を尽くすだけだった。

 これまでの三戦と比べても、上々の立ち上がりだった。いつも以上に、ボールが走る。カーブのキレも良い。某野球ゲームなら、真っ赤に飛び跳ねるボールみたいな形の顔が連想されるほど、絶好調と言えたかもしれない。それでもさすがは強豪校で、少しでも甘いコースにボールが入れば、凄まじい打球が飛んでいく。だが、内野も外野も、本当によく走り回ってくれたおかげで、打者一巡までは零点で抑えることが出来た。試合が動いたのは、四回の表。鳥ヶ浜高校の攻撃。バットの振りが、急に鋭さを増した。一本、二本と着実に積み重ねられるヒットの数。ジワリジワリと、攻められる恐怖。途方も無いプレッシャーが、ジリジリと秋良たち九人を追い詰めていく。一点を先制され、次の回には三点。六回に二点。七回はなんとか無得点に抑えたものの、八回に再び二点を入れられた。攻撃は、四番ライトの小川がセンター前にヒットを放っただけで、あとは秋良が貰ったファーボールのみ。八回裏に大地が空振りの三振に倒れ、八対零のコールドゲームで幕を閉じた。


「負けたな」

 試合後のミーティングで、誰からともなく呟くのが聞こえた。ただ沈黙と呼ぶにはあまりにも重い、鉛のように深く沈み込んでゆく空気。勇気を振り絞り口火を切ったのは、秋良だった。

「点を取られたのは、俺のせいだ」

 全員が、顔を上げる。

「ごめん」

 秋良だけ顔を伏せるように、頭を下げた。隣に座っていた紀洋が、ポンと肩を叩いた。

「お前だけじゃねーよ。俺らも、打てなかったし、守れなかった」

 恐るおそる、皆の表情を見渡す。誰も、秋良を咎めなかった。

「全員が全員、自分の足りない所を、自覚したんじゃないかと、思う」

 静かな声で、真冬が口を開く。

「だからあと三ヶ月……死ぬ気でやろう。死ぬ気で、練習しよう」

 バッと真冬が立ち上がると、右手を、円になって座るチームメイト達の中央に向けて、差し出した。

「行くんだろ、甲子園」

 明確な目標を今まで一度も口にしたことのなかった真冬が、怒鳴り声をあげた。甲子園に行く。それは、秋良がいつも口にしていた目標だった。秋良がそう口にする度、またこいつは調子に乗って、と誰もが馬鹿にしていた。俺たちが、甲子園に行けるはずなんてないと、チームメイト達は、そう考えているのだと思っていた。それが時には秋良を苛立たせることもあった。それでも秋良は本気だった。だからこそ嬉しかった。真冬が、チームのキャプテンが、甲子園に行こうとそう促してくれたことが。秋良だけじゃなくて、真冬だけでもなくて、チーム全体で甲子園を目指そうと言ってくれたことが。嬉しくてたまらなかった。正幸が立ち上がり、真冬の手に自分の手を重ねた。次いで紀洋が、大地が、小川が──みんなが、我もわれもと立ち上がる。そして、手を重ねていく。やがて最後に、秋良だけが取り残される形となった。

「アキラ!」

 真冬が、再び怒鳴る。

「篠山高校、八年ぶり二度目の甲子園に立つエースは、お前なんだろ」

 気が付けば溢れていた涙を拭い、秋良は笑った。バカ野郎、と小声で照れ隠しの台詞を吐く。全員が、秋良を見た。早くしろよ、と投球練習の時のように、キャッチャーの紀洋が急かした。

「すぐ、行くよ」

 ようやく立ち上がった秋良が、最後の手の平を差し出す。誰ともなく声を上げた雄叫びを、みんなで腹の底から絞り出した。通りすがった誰かが、驚いて秋良たちを振り返ったが、そんなことお構いなく声を出し続ける。いつの間にかその雄叫びは、笑い声に変わっていた。

 球場からバスに乗り、篠山駅前で降りると、秋良たちは高校の部室に戻りバットなどの荷物を置いて帰ろうとした。

「やっぱ、持って帰って、素振りでもするかな」

 誰かがそう言ったのをきっかけに、俺も俺もと、結局全員が各自のバットを持って帰る。秋良も、エースとは言え三番バッターであり、クリーンナップも務めていることもあって、バットを持って帰ることにした。

「八年ぶり二度目、か」

 秋良が、ボソリと囁く。

「ん?なんか言ったか?」

 正幸に尋ねられハッとした秋良は、何でもないよを首を横に振った。とは言ったものの、ふと八年前のことが気になっていた。八年前に甲子園に行った先輩たちは、どんな試合をしていたのだろう。サウスポーの凄いピッチャーがいる──当時まだ小学生だった秋良にも、そんな話題があったことは微かに覚えている。同じピッチャーとして、彼がどんな人物だったのか、どんな練習をしていたのか、非常に興味があった。今の監督が篠山高校野球部に就任したのは五年前であり、監督に尋ねても詳しいことは分からないように思われた。図書室に行って、インターネットか何かで調べてみよう。そう思い、図書室のある校舎を目指す。ゴールデンウィークではあるが、生徒たちの自習スペースとして、図書委員が交代で図書室を開けてくれているのだ。扉を開け中に入ると、まだ五月病を罹患する前の元気な新入生ややる気に溢れた受験生たちが、懸命に机に向かって教科書と格闘していた。その合間を縫うようにして左手奥にあるパソコンスペースへ足を運ぶ。数台しか置かれていないパソコンは、一台だけ使用されていた。秋良は入り口から一番近いパソコンを選んで、インターネットのブラウザを起動する。検索ワードを入力する欄に、篠山高校と甲子園の二つの単語を入れると、案外すぐに当時の試合結果がヒットした。

「八対一、六対零、七対零、三対ニ、四対一……三対零」

 凄いエースが居たということが真実なのか、県予選で奪われた点数は非常に少なく、今日、秋良たちが敗れた鳥ヶ浜高校でさえニ点に抑え勝利していた。もちろん、それに見合った打撃力もあったらしい。しかし、甲子園では十対ニと大量失点で敗れていたことを思い出し、当時の全国大会一回戦の詳しいスコアを探すことにした。それもすぐに見つかった。失点十、被安打二十二、エラー一。甲子園には魔物が住んでいるとよく言われるが、彼らも魔物の餌食となったのだろうか。ふと、スコアの下に書かれていたピッチャーの名前に気付く。大山。もちろん、聞いたことなど無い名前だった。これ以上調べても何も分からないだろうと思い、甲子園の記録を表示したウインドウを閉じると、予選成績のウインドウが一番上に表示された。それも消そうとして──手が止まる。一回戦、篠山高校のピッチャーの、名前──高倉。心臓が、ドクンと鳴った。二回戦、三回戦、準々決勝、準決勝、そして決勝。時々、高倉の名前と共に大山の名前も見られたが、そのほとんど、特に準々決勝の鳥ヶ浜高校戦では高倉という人物が、一人で投げていた。これは、偶然なのか。秋良の知る、高倉亮という人物とは、偶然同じ名字だったのだろうか。八年前に十八歳であれば、今年で二十六歳。篠山高校に通っていた、高倉亮。全ての辻褄が合うように思えた。

“こいつの野球嫌いは……俺のせいでもあるからな”

 脳裏に、亮の言葉が蘇る。もし、八年前に篠山高校を甲子園に導いたエースが亮だとしたら。甲子園で、亮がマウンドに上らなかったことに、何か複雑な理由があったとしたら。

“甲子園に行ったって、大切なものを失うかもしれへんよ?”

 夏希が何故野球を嫌うのかというその答えは、もしかしたら、そこにあるのかもしれない。全てのウインドウを閉じて、秋良は思い付いたように席を立った。全国大会の一回戦が行われた、八年前の八月十日。パソコンで見た試合結果の画面に表示されていた日付を思い出しながら、十年分の新聞がスクラップされ保管されている棚を探した。八年前の棚を見つけ、八月十日を、いや、試合について載っているであろう、翌日付の八月十一日のファイルを見つけ手に取った。B4サイズに縮小コピーされた新聞記事を、一枚一枚丁寧に探す。スポーツ欄に甲子園の文字。“篠山高校、涙”とシンプルな見出しが目に留まった。記事は、一回戦の試合にしては随分長いように感じられた。

『篠山高校は、大山和也(三年)投手の力投虚しく、本塁打三本を含む被安打二十二の猛攻により、十点を奪われ甲子園を去った。悲劇のエース・高倉亮(三年)投手の左腕を甲子園のマウンドで見ることはなかった。高倉は地方大会では六試合四十三イニングを投げ、失った点はたったの三点。篠山高校初の甲子園出場を果たし、その活躍が期待されたいた』



「ほな、行ってくるわ!」

 亮が、元気よく敬礼。母・志津子がにこやかに笑い、父・茂も珍しく、普段は厳格な表情を穏やかにしていた。

「お兄ちゃん、私らもみんなで応援行くから、頑張ってな」

「おう、任せとき。ナツキの分も、ツキネの分も、兄ちゃん頑張って来るわ」

 まだ小学四年生だった夏希の頭を撫でながら、亮は笑顔で言った。

「それにしても父さん、大阪までほんまに車で行くつもりなん?」

「俺の実家に泊まるつもりやし、会社休ませて貰う分、お土産こうたり、寄り道もしたいからな。車の方が、融通利くやろ。それに、言うとくけど甲子園は大阪やなくて、兵庫やろ」

「ああ、そういやそやったわ」

 元々地元であるにも関わらず、ちょっとした言い間違いに亮は頭を掻いた。

「そんでも、めっちゃ遠いやん。十時間くらいかかるんとちゃう?」

「アホ言え、八時間くらいや」

「あんま変わらへんやん!」

 冷静な突っ込みに、家族全員が笑った。

「って、こんなことしてる場合ちゃうねん、はよ行かんと先生に怒られてまうわ」

 勝手口の靴箱に置かれたデジタル時計を見て、慌てたように亮が言った。新横浜駅へ向かうバスが高校で待っている。新横浜駅からは新幹線で甲子園に向かう手筈だった。

「リョウ、気い付けてな」

 地元が篠山であるにも関わらず、すっかり関西弁を身につけた母が、心配そうに語った。

「俺より、そっちこそ気い付けてや。八時間の長旅、絶対疲れるで」

「お兄ちゃんが試合するよりは疲れへんから、大丈夫」

 失笑して、亮が月音の頭を小突いた。月音は、恥ずかしそうに笑う。

「ほな、行ってきます!」

 元気よく言って、家を飛び出した。数日分の着替えや野球道具を詰め込んだ重たい鞄を背負い、商店街の中をひた走る。亮の家から学校までは目と鼻の先だった。学校に着くと、校長先生や教頭先生、同級生や後輩たち、中には野次馬と思われる見知らぬ人まで、大勢の人が見送りに来ていた。高校の壁に、“祝!甲子園出場”と、デカデカと書かれている。非日常な空気に包まれて、いよいよ甲子園に行くのだということを肌で感じた。初めての甲子園は、まるで月面に降り立った宇宙飛行士のように軽やかだった。悪く言えば、浮き足立っているということなのだろう。それでも、興奮は治まらない。公式練習という名の、たった三十分の至福の時。予想はしていたが、あっという間に時間は過ぎてしまった。続きは、試合の時にと思いながらも、どうしても後ろ髪を引かれてしまう。キャプテンとして全員に集合命令を出す時も、時間を忘れていたことにして本当はもっとこの空間を全身で感じていたいと思った。一分、一秒でもここに居たいと願うのは、当たり前のことなのかもしれない。なぜなら、甲子園は高校球児にとって憧れの場所だからだ。開会式まで、あと少し。それまでのたった数日が途轍もなく長く思えた。餌を前にして待てとお預けをくらう犬のように、ムズムズとした気分が落ち着かない。チラチラと時計ばかりを気にしていた。早く、早く試合がしたい。だが、神様は残酷だった。そんな幸せな気分をどん底に貶める事件が起こった。それは、試合を二日後に控え、“今から、そっちに向かう”と親から連絡を受けた数時間後のことだった。監督が、険しい表情で宿舎の亮たちの部屋に駆け込んだ。

「どうしたんですか?」

「高倉……高倉は何処に居る!」

 息を切らして、監督が言った。

「ここに居ますけど……」

 奥の部屋でテレビを見ていた亮が、恐るおそる姿を見せた。ガッと腕を捕まれ、そのあまりの唐突さに驚く。

「どないしたんですか?」

「ご両親と妹さんが……高速道路で、事故にあった」

 一瞬で、頭が真っ白になった。その後、何かを言いながら監督は亮を何処かへ連れて行こうとしたが、もう彼には何がどうなっているのか全く分からなかった。車に乗り込んで、新大阪駅で降りると、そのまま新幹線に乗り換える。自由席なのか指定席なのかも分からぬまま座らされた座席で呆然としていた。今になって思い返してみれば、監督は必至で亮を慰めるような言葉を言い続けていたように思う。その言葉は、何一つ亮の内側に入っては来なかった。

「みんな……無事、なんですか」

 ようやく口にした言葉に、監督がふっと口を噤んだ。言葉を選ぶようにして、何度も躊躇うように息を漏らす。それでも、監督は答えてくれた。

「妹さん二人は、無事だよ。体が小さかったからなのか、壊れた車体の隙間にいて、奇跡的に無傷だったらしい。だけど、ご両親は……意識が戻らないそうだ」

 唐突に、亮の頬を涙が伝った。泣こうと思った訳でも無いのに、体が言うことを聞かなかった。それからは無言のまま、新幹線は走る。一時間ぐらい経ったのだろうか、名古屋駅で二人は降りた。タクシーに乗って病院へ着くと、病室の前で心を失くした人形のようにチョコンと座る月音と夏希の姿があった。傍のベッドで、大量のチューブに繋がれた両親が眠っていた。火傷の跡があった。別人のように体は浮腫んでいて、それが本当に父と母なのか、いっそのこと別人であって欲しいとさえ思った。クククと顔を動かして、月音が亮を見た。少し遅れて、夏希も顔を上げる。亮が、二人を抱きしめた。

「怖い思いさせて……すまんかったな」

 亮の腕が震えた。月音も、夏希も、鼻を啜り泣きじゃくった。ただひたすらに泣いた。日が暮れるまで、ずっとそうしていると、涙も枯れて、ただ嗚咽を漏らし続けるしか出来なくなった。

「甲子園は……辞退するか」

 黙ってずっと傍に居てくれた監督が、静かに口を開いた。亮が振り向くと、泣くのを堪えていたのか、監督は目を真っ赤にしていた。大きくゴツゴツとした手が、亮の頭を掴んだ。

「お前が居ないなら、試合は出来ん」

 その手を振り払うようにして、亮は首を横に振った。

「試合は……して下さい」

 震えた声を絞り出すようにして亮が言った。

「甲子園は、俺の夢だったんです。父さんも、母さんも、楽しみにしていたんです。だから、試合して下さい。俺が戻ってくるまで……俺が投げる日まで……待ってて下さい……お願いします」

 とっくに出し切ったはずの涙が、ポタポタと床を濡らす。お願いします、と何度も、何度も頭を下げた。分かったと、監督が静かに頷いた。

「お前が戻ってくるまで、待ってるぞ」

 ありがとうございますと、上手く回らない舌をなんとか動かした。流れる涙が止まらなかった。亮を優しく抱きかかえ、頑張れとだけ言葉を残し、監督は宿舎に戻っていった。呆然と見送った後、妹達の横に、再び腰を降ろす。涙で、もう何も見えなかった。グチャグチャになった視界が、涙を零す度にボロボロと崩れて形を変える。張り裂けそうな胸が、それでいて締め付けられるように痛んだ。両親が眠るベッドの傍のモニターが、カラララとアラームを鳴らす。駆けつけた看護師が、モニターのボタンを押して、父の様子を確認した。そんなやり取りを、ただただ三人で黙って見つめていた。不思議とお腹はすかなかった。何かする訳でもなく、話すわけでもなく、両親を見守った。病室内には、亮と月音と夏希の息遣いに、心電図モニターの機械音だけがあった。後は何もなかった。そんな何もない空間で一晩を、そして二晩目を明かした。三人の体力が限界に近づいた、その日。篠山高校は十対ニで敗れ甲子園を去り、両親は亡くなった。


 秋良は静かに新聞のファイルを閉じると、それをすぐに本棚に片付け、図書室を飛び出した。ガチャガチャと野球道具が鳴り、勉強をしていた数人が怪訝な表情を浮かべた。すみませんと軽く頭を下げつつも、急ぐ歩みを緩めなかった。なんともいたたまれない気持ちに急かされるようにして、走る。何も知らなかった。何一つ気付かなかった。亮にとって、月音にとって、そして夏希にとって、甲子園というものが示すその意味を、何も気付くことが出来なかった。どうして野球が嫌いなのかなどと無神経な質問を夏希に投げかけた過去の自分が恥ずかしかった。悔やんでも、己の愚かさを嘆くことしか出来ない。何も出来ないのだ。後悔は先に立たないのだと、昔の偉い人が残した言葉の意味を知った。どうしようもない焦燥感に、ただ走った。葉桜となった並木道をひた走り、駅前のロータリーを過ぎ去った。篠山駅から出てきた男とぶつかりそうになって、辛うじて身を交わす。危ないだろ、という怒鳴り声が背後で響く。ガチャガチャと金属音、そして荒れる呼吸の音。そこに規則正しい足音が重なった。走って、何になる。頭の中で、誰かが尋ねたような気がした。答えは分からなかった。意味など無いのだと、強いて言うならそれが答えだ。亮の元へ。夏希の元へ。意味の無い義務感に駆られ走る。ただ、彼らの元へ行かなければならない気がした。だから、秋良は走っていた。カンカンと、踏切の音が聞こえた。枕木の軋む音を耳にしながら、商店街のアーケードに差し掛かった。コロッケの良い匂いが、今日も立ち込めている。喉の奥で、血の味がした。今日、球場で試合をしてきたばかりだったことを思い出す。体力は限界だったのかもしれない。それでも走ることが出来る、まだ十七歳という若さに感謝した。視界の端に見えた『藤井書店』の看板を目印に、速度を落とす。酸素を欲した体が、大きく上下に揺れた。息も整わぬまま、店の中へ押し入る。

「あらアキラくん、いらっしゃい」

 この日の店番は月音だった。ふと、“店員は全員家族”だと言っていた亮の言葉が蘇る。彼らの両親が店に居る所を見たことがないことを思い出した。どうして今まで気付かなかったのかと、思わずに居られなかった。

「リョウさんは……居ないんですか?」

 月音が、申し訳なさそうに笑った。

「ごめんね、お兄ちゃん、今入院してるんよ」

「入院?」

 自分の表情を客観的に見ることは出来ないが、今の秋良はきっと途轍もなく不安な表情を浮かべていただろう。あの記事を読んだ直後なら、なおさらそうだ。だからなのか、月音が今度は優しい笑顔を見せる。

「お兄ちゃん、最近ちょっと働き過ぎて、疲れただけなんやって。病気とかちゃうし、すぐ退院しはるから、そんなに心配せんで大丈夫やよ」

 月音はその言葉に、心配してくれてありがとうと付け足した。病気ではないと聞き、秋良はほっと胸を撫で下ろした。

「ナツキちゃんは、学校ですか?」

「ううん、奥におるけど、上がってく?」

 少し戸惑ったが、すぐにお邪魔しますと頭を下げた。図々しい気もしたが、別に構わないとも思った。奥に行くと、夏希は居間のコタツの所で勉強をしていた。さすがに、冬の寒さ厳しい篠山にも夏の気配を感じ始めた今日この頃だけに、コタツ布団は片付けられているようだった。

「アキラくん、おいでやす」

 秋良に気付いて、夏希が言った。不意打ちの京都弁に思わず吹き出してしまう。

「ナツキちゃんの故郷って、京都じゃなかったよね?」

「ちゃうよ、ってか今時京都の人でも使わへんけどね」

 夏希が笑顔で答えた。

「じゃあ、なんで使ったんだよ」

「なんとなく」

 二人して笑って、秋良は夏希の向かいに腰を下ろした。

「テスト前でも無いのに、勉強?」

 コタツの上に広げられた数学の教科書とノートを指さしながら尋ねると、夏希がパタンと教科書を閉じた。

「当たり前やん。だって、受験生やで。私、真面目やから」

 真顔で言うので、すぐに嘘だと分かった。

「……本当は?」

「……小テストの赤点課題」

 秋良が笑うと、夏希は不貞腐れて頬を膨らませた。その姿がまた微笑ましく感じた。

「リョウさん、入院してるんだってね」

 夏希の動きが、ピタリと止まった。不自然なその反応に、聞いてはいけないことを聞いたのかと不安になった。やや間があって、夏希は静かに答えた。

「大丈夫かな、お兄ちゃん」

「すぐ退院するんだから、大丈夫なんじゃないの?」

 月音の言っていたことを思い出しながらそう答えるも、夏希は難しそうな表情を浮かべていた。直感で、八年前のことを思い出しているのだと分かった。入院ということ自体が、彼女にとって不安なのだと悟った。答え方を間違えたと思い、秋良は言い直した。

「大丈夫だよ。リョウさんは、ちゃんと家に戻ってくるよ」

 うん、と弱々しい返事が聞こえた。胸が締め付けられるような感じがして、何とか元気付けてあげたいと思った。

「心配なら、お見舞いに行ったら?」

「そう、やんな」

 泣きそうな声で、夏希が言った。つられて緩みそうになる涙腺を、必至で喰い止める。ズズッと鼻を啜る音がして、沈黙が流れる。

「でも、怖いねん……病院」

 瞳に留めることが出来なくなった雫が、ポタリと、開いたノートの上に落ちた。二次方程式を解いていたらしい、羅列した数字が滲む。記事を読んだだけでは伺い知ることの出来なかった、夏希の心の傷を、否応なく突きつけられた気分になった。秋良自身の傷ではないはずなのに、苦しくて苦しくて、仕方がなかった。まるで自分のことのように、心が痛む。

「そりゃあ、八年前にあんなことがあったら、怖いのかもしれない」

 夏希が、顔を上げて秋良を見た。濡れた瞳を丸くさせていた。どうして知ってるのかと、目が語っていた。その無言の問い掛けに、秋良は正直に答えることにした。

「ごめん……新聞記事で読んだんだ、八年前の事故のこと」

 それに納得したのか、夏希は何も言わずにまた俯いた。ポタポタと、数学のノートを濡らした。鼻を啜って、また涙を零す。

「でも、リョウさんは、ナツキちゃんを置いて、どっかに行ったりしないよ」

「……うん」

「だから、大丈夫だよ」

「…………うん」

 止まらない涙を夏希は服の袖で拭った。白いTシャツが、僅かに濡れた。ありがとうと夏希が答えた。

「お見舞い、行こっか」

 彼女を勇気付けようと、秋良は提案した。夏希はそれに黙って頷いた。善は急げだと思い、今から一緒にお見舞いに行くことにした。時計は午後六時を過ぎた辺りを指し示しいたが、面会時間にはまだ間に合うだろう。午前中に試合をしていたとは言え、疲れ果てた体はまだ動きそうだった。それに、出来るのなら亮に今日の試合結果も伝えたいと思っていた。だから、今すぐ行きたいと思った。夏希から病院の場所を聞いて、電車では行けない場所だと分かると、少し躊躇したが、それならタクシーで行こうと秋良が言った。タクシー代なら出すからと言ったが、夏希はそれを嫌がった。事故が怖いからと、バス通学を拒んでいたことを思い出す。八年前の事故は、こんな所にも傷跡を残していたのだなとその時になって気が付いた。

「俺も一緒に乗るから。だから、大丈夫」

「そんなの、理由にならない」

「なるよ」

「ならないよ!」

 声を荒げて、夏希が言った。喜怒哀楽の怒の部分を初めて見たことで、夏希が持つ四つの感情全てを知ったような気がした。ごめんと、夏希が謝る。人は何故、怒鳴った後にすぐ謝るのだろう。冷静にも秋良はそんなことを考えたが、真冬を思い出し、そんなことは無かったと自分自身に訂正した。

「甲子園が……野球が嫌な思い出なら、俺が良い思い出に変える。車に乗ることが嫌な思い出なら、俺が良い思い出に変えるよ」

 夏希は俯いたまま静かだった。我ながら恥ずかしい台詞を口走ったなと、思わず苦笑いを浮かべる。

「だから、行こうよ」

 秋良が手を差し伸べる。夏希は、また涙を流していた。答えない彼女に痺れを切らして、秋良は彼女の手を掴んだ。夏希はそれを拒まなかった。

「だから、行こう」

 今にも消えてしまいそうな声で、夏希はうんと答えた。秋良は彼女の手を引っ張って居間を出た。驚く月音を余所目に、店を飛び出す。月音への言い訳は、帰ってきた時にしよう。そう思って、二人して商店街を駆け抜けた。駅前のロータリーで、タクシーを拾った。乗り込んで、行き先を告げると、機嫌が良いのか、運転手が意気揚々と返事をした。ロータリー回り、病院へ向けてゆっくりと走り出す。いつまでも手を繋いだままの二人を乗せたタクシーの屋根には、さくらんぼの絵が描かれたランプが、静かに光を灯していた。

 タクシーを降り、受付で教えて貰った亮の病室は、四人部屋だった。右奥に亮が居て、向かい側のベットは誰も居ないのか、荷物がなくガランとしていた。

「坊主、それにナツキやないか!」

 二人の姿に気付いて、亮が驚くように言った。亮からしてみれば、入院していることを知らないだろう秋良に、病院に対するトラウマからお見舞いには来ないだろう夏希が居たのだから、驚くのも無理は無い。

「こんばんは」

 秋良が頭を下げると、何故か夏希も頭を下げた。兄妹なのに、彼女の奇妙な行動に微笑む。もしかすると、久々の病院に少し緊張しているのかもしれない。あるいは、嫌な思い出のせいかもしれない。

「なんやお前ら、いつの間に仲良くなったんや」

 亮が、ニヤニヤしながら尋ねた。そんな聞かれ方をすると、ちょっとだけ恥ずかしくなる。

「入院したって聞いたんでビックリして、一緒に来たんですよ」

「そーか……ありがとな」

 切な気な笑みを零す亮に、秋良は出来るだけ元気な声で続けた。

「それに、春季大会の結果も伝えたかったんで」

「おおそうか、もうそんな時期か。どやったんや?」

 夏希が、ふと顔を上げた。そう言えば、彼女にもまだ結果は伝えていなかったことを思い出す。野球嫌いと言え、興味があるのだろうかと思い、嬉しくなる。

「ベストエイトまで行きました。今日が、準々決勝で……鳥ヶ浜高校に負けました」

「あっこは強いからなあ。でも、ベストエイトなら頑張ったな!」

 ポン、と秋良の肩を亮が叩く。本当に入院患者なのかと疑いたくなるくらいに、明るい口調だった。なんとなく、無理をしているようにも思えた。夏希がいる手前、疲れた様子を見せられないと思っているのだろう。あるいは、秋良に対してもそうなのかもしれないが、だからこそ彼は過労で倒れたんだと思う。

「八年前のリョウさんみたいには、抑えられなかったです」

「なんや……知っとったんか」

 はい、と秋良は苦笑いで答えた。今日、コールド負けしましたと正直に打ち明けると、亮は笑ったり呆れたりすることなく、頷いた。夏希は静かな面持ちで、二人の会話を聞いている。

「そんでも、俺かて県で優勝したんは最後の夏だけや。春は、俺も打たれたからな」

「そうだったんですか?」

「当たり前やろ。たとえ県大会っちゅう程度のもんでも、強豪校でも無いのに優勝に導けるようなほんまに才能のあるピッチャーなんて、ほんの一握りや」

 亮は笑いながらそう語った。甲子園を経験した、いや、甲子園を経験するはずだっただけあって、妙に説得力があると感じた。だが逆に、それはつまり才能が無ければ甲子園には行けないと言われているように聞こえた。秋良自身にそんな才能があるのだろうか。弱気になりそう考えていると、それが伝わったのか、亮が豪快に笑い始めた。

「けどな。才能なんて無くたって、甲子園の切符は手に入んねん。なんでか分かるか?」

 いきなり疑問形で尋ねられ、咄嗟に答えることが出来ず口籠る。甲子園に行くためには、それ相応の実力が必要だと思う。点を取られないためには、投手力が必要だし、守備力だって必要だ。得点を取るには、打撃力や戦略だって必要になる。才能という言い方がふさわしくないにしろ、実力は必要だと感じた。だが、秋良にはそれを上手く言葉に表すことが出来ず、結局何も答えられなかった。

「野球は、一人でやるスポーツとちゃうからや」

 心が揺さぶられたような気がした。

「グランドに立つ九人が、ベンチに座る仲間や監督が、スタンドで応戦するみんなが、それぞれ必要なんや」

 もちろん、人数足らんかったら、ベンチに誰もおらへん時もあるけどな、と自分で自分の言ったことに突っ込みを入れ、亮は笑った。それでも、亮の言うことは分かる気がした。実力に溺れ、チーム競技であることを忘れ奢れれば、チームメイトたちの逆鱗に触れるだろう。あるいは己の実力を過小評価し、打たれたのは自分のせいだと背負い込んでも、それはチームプレイではない。前者にせよ後者にせよ、自分のことしか考えていないのではないか。これまでの自分が、そうだったように。

「チームの皆は、最高の仲間だと思います」

 甲子園へ行くのだと、そう言った真冬の言葉を思い出す。あの秋季大会の時までは、考えられないことだった。甲子園は自分だけの目標だと、一人で抱え込み足枷となっていたのかもしれない。その両足に巻き付けられた重りが、外されたような気持ちになった。普段は秋良に手厳しい真冬だが、本当は秋良のことを認めてくれていたのだろうか。共に甲子園を目指したかったからこそ、厳しく言い続けてくれたのだろうか。感情表現の苦手な真冬のことだから、そうなんじゃないだろうかと思えた。だから──。

「だから、あいつらと一緒に、甲子園に行きたいんです。だから……リョウさんの分まで、頑張ります」

 亮がまた、切なそうな微笑みを浮かべた。

「俺をあんまり、重荷にすんなよ」

 秋良も、それに笑顔で答えた。病室を出て、完全に日の暮れた帰り道。なかなかタクシーが捕まらず、のんびり最寄り駅に向かって歩いて行く。とは言っても三十分以上かかる距離に駅があるので、途中でタクシーが見つかれば良いなと思い、歩く。静かな夜道を五分ほど歩いた所で、夏希が口を開く。

「やっぱりアホやろ……アキラくんって」

 突然のことだったが、どうしてとは聞かなかった。正確に言えば、聞けなかったと言うのが正しいかもしれない。理由がある訳ではないが、夏希がそう尋ねた気持ちが想像出来る気がした。

「アホでも、俺は甲子園に行くよ」

「そういうとこが、アホなんやって」

 泣いているのか、夏希が服の袖で涙を拭うような素振りを見せる。街灯が少なく、その真相はよく分からない。秋良は、黙って夏希の手を握った。同じ歩幅で、一歩、二歩と歩いて行く。

「ありがとう」

「甲子園を目指すのは……自分のためだよ。お礼を言われるようなことじゃない」

「……ありがとう」

 今度は、秋良は答えなかった。二人の間を、また沈黙が流れた。車が一台も通らない、静かな静かな、夜。三日月も西の空に沈み、しし座が空高く昇っている。まだ夏の訪れには早いのか、少し肌寒い。繋いだ手のひらからの温もりが、それを幾分か和らげてくれていた。駅まではまだ二十分くらいは掛かるだろうか。タクシーも通りそうもないので、きっと歩き続けることになるだろう。今の秋良には、それでも良いと思えた。

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