シムニードの日誌二日目:クリスタ
名前:シムニード
職業:魔法使い
流儀:正天秤三角呪法
技量:八
体力:一七/一五
運勢:一二
装備:剣一振り、背負い袋、金貨六枚、食料一食分、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、グランディガンの斧(戦闘使用時、技量マイナス一)、魔法の呪文の書一頁、蜜蝋、蜂蜜
祝福:正義と真実の女神の加護
ひんやりとした丘の、朝の空気の中を進む。一〇〇米程登った所で、丘の張り出した部分に差し掛かった時、左手の拓けた場所に、何かが見えた。杭が何本か突き立っている。新旧様々な、生首付きだ。人間の物や小鬼の物もあるが、一様に目と口を縫い付けられている。さて、これは、生きている内に縫われたのか、死んだ後か…。
大木に大きく「×」が描かれており、明らかにこれ以上進むなという警告だが、先は二手に分かれており、どちらに進ませたくないのか定かではない。
地図によると、右手は鉱山に続いており、左手はクリスタ丘陵への道だ。先を急ぐなら左だが、鉱山を覗いてみるか。誰が、何を見せたくないのかな…?
数時間斜面を登り続け、漸く頂上付近に差し掛かった時、前方から何か作業をしている様な、騒がしい音が聞こえてきた。足を止め、耳を澄ます。聞こえてくるのは、足を踏み鳴らす音、不平をぶつぶつ言う声、岩に金属が当たる音、だ。
私は道を外れると、足音を忍ばせて、音のする方へと近付いた。木の陰から、音のする空き地を窺う。
かなりの数の小鬼だ。彼等は、輝く岩や鈍く光る金塊を乗せた入れ物を持って、洞窟へ行ったり来たりしている。間違いなく、ここで採掘が行われているのだろう。
こいつは、ワンチャンありそうだ。恐らく、この鉱山に近寄らせぬ為の生首か。小鬼の物も混じっていたのは、手癖の悪い奴がいたのだろう。ひとつ、冒険と洒落込もうではないか。
「…アタック…!」
そう呟いて、私は丘の斜面をぐるっと回り、辺りが静かになるのを待って、洞窟へ忍び込んだ。用心しながら進むと、坑道が二手に分かれていた。
実は、地図には鉱山の内部構造も粗々(あらあら)載っている。出口は左だが、右をまず探索しよう。
右へ右へと進んでいくと、扉で行き止まった。どうする? 諦めるか…いやいや、まだ何も起こってないのに、いきなりすっぱり諦める程臆病ではない。扉を開けてからでも遅くはあるまい…いや、それでは遅い事もままあるのが、“無秩序地帯”の恐ろしいところだが…ままよ、開けてしまえ。
扉には、鍵が掛かっていた。
まだ体力には余裕があるし、ここは魔法で片付けるか。使える呪文は二つ。予知呪文か解錠呪文だが、予知呪文は扉の先の危険を予知する事ができるだろうが、結局こじ開けねばならないのは同じだ。…鍵を開けるならこっちの方だ。
「ブロン・ドーブ・セシオン…」
実は、アナ国の魔法に三文字以上の呪文は必要ない。前半の元ネタが解ったお前は次に、「歳がバレる!」と言うッ!
扉が小刻みに震え、取っ手が廻る。
※体力:一五→一三
開いた扉に滑り込む。
広い倉庫の中を、あちこちに立つ蝋燭の光が照らしている。部屋の一角に黒い岩石が山積みになっており、傍のバケツにも同様に岩石が詰められているが、こちらは蝋燭の光を反射して、鈍く煌めいている。部屋の中央には、圧縮器だか石切器だか判らないが何やら機械が置かれ、鬼がそれを動かしている。一方の端から岩を落とし込み、取っ手を回すと、音を立てて岩が砕ける。鬼は私に気付くと、手を止めて唸り声を上げた。
恐らく、黒い岩石は宝石か何かの原石だろう。鬼さえどうにかしてしまえば、あれは私の物だ。
「さあ、ショウタイムだ」
鬼:技量八,体力七
腕前としては互角か。ならばやはり、魔法の出番だな。覚えのある呪文は、銭盾呪文、防壁呪文、石化呪文。銭盾呪文は金貨を使った盾の術、防壁呪文は基本魔法の壁の術、石化呪文は読んで字の如く石化の術の筈だ。この内石化呪文は、触媒の石の粉を持っていないので使えない。防壁呪文は強力だが、消耗が激し過ぎる。ここは銭盾呪文で戦闘を有利に…。
「シムニード…聞こえますか、シムニード…」
「め、女神よ…!」
「シムニードよ、よくお聞きなさい。貴方は『さあ、ショウタイムだ』というフリまで振っておいて、ただ消耗が激しいからという理由だけで、防壁呪文を使わないつもりですか?」
「えっ? 仰る意味がよく…」
「振ったネタは、多少の無理をしても回収する。それが、貴方に課せられた、もう一つの使命なのです」
「マジですか」
「マジですシムニード。どうせ貴方は、無茶をして死んでも、夢オチが許されているではないですか」
「神だからって何言っても許されると思うなよこのアマ」
「大体、カサンドラと比べて貴方の性格は真面目過ぎて、今一つ盛り上がりに欠けるのです。ここらでひとつ、何か面白いキャラを開花させて、神々のウケを取るのです」
「何処の誰と比べられとるのか判らんが、神々が余程暇だというのは解った」
「それではシムニード、頼みましたよ? アナ国の、ひいては世界の未来は、貴方の双肩に掛かっているのです」
「うむ、説得力ナッスィング」
※この間二秒。
という訳で、何やらしょうもない理由で、防壁呪文を使う事になった。やれやれ、体力の消耗的に、割に合ってるのかこれ…。
※体力:一三→九
鬼が躍りかかってくる。
「困った暴れん坊ちゃんだ…」
ルパッチマジックタッチゴゥ!
「ドッドドッドッドッドゥ」
すると、鬼の眼前に不可視の壁が出現し、鬼の突進を食い止める。訳が解らずに壁を叩く鬼に、小首を傾げて微笑んでみせる。
その隙に、机の上の宝石を引っ掴んで、部屋を出た。宝石は金貨一〇枚の値打ちはある物だが、アナ国ではないので釣りが貰えるなどとは期待しない方が良いだろう。
装備追加:宝石
「…これで満足ですかね?」
「ディ・モールトですシムニード。できれば、壁にめり込んだ鬼を、キックで倒して欲しいところですが」
「無茶言うな」
「この調子でお願いしますよシムニード。これでウチの妹に、『今度のウチの子、イケメンライダーなんだー♪』と自慢できます」
「モチベーション駄々下がり、痛み入ります」
「では、今後も貴方が女神の使徒として相応しくない判断をしそうになった時、私の声に耳を傾けるのですよ?」
「ありがたい筈なのに、使徒の基準がウザい」
…やれやれ、クールに決めていく筈が、今後も余計な茶々が入りそうだ。
「…三文字だと、ウィザードよりはオーズだと思うが」
辺りを彷徨いている小鬼共に気付かれぬ様移動する。
※運試し
→幸運
※運勢:一二→一一
上手く小鬼共には見付からずに通り過ぎ、降り道へと入る。
鉱山を後に、降り道に沿って森を抜けていく。二時間程歩いて日も傾きかけた頃、前方の丘の中腹に、村が見えてきた。やれやれ、今夜は野宿をせずに済みそうかな?
この地域は、ヤング丘陵だ。
とにかく腹が減っていた。住人達が、見慣れぬ私の出で立ちをじっと見詰めている。…焦るんじゃあない。私は腹が減っているだけなんだ。腹が減って死にそうなんだ(余計な魔力を使わされたから) 私の様な身形は、この辺じゃあ浮いてるんだろうな…。何でみんな、髪を伸ばして頭上で結い上げているんだろう…? だが、不思議な美意識を感じる。何でもいい、めし屋、めし屋はないか。
「ええい、ここだ。入っちまえ」
居酒屋の中に入ると、奥の方から銅鑼声が聞こえていたが、私を見るなり客達はぴたっと話をやめる。村人が数人、テーブルを囲んでおり、胡散臭そうにこちらを見ている。
「…しゃぁい」
「済みません、食事できますか」
「クリスタに何の用だい、あんた? エールなら金貨一枚だよ」
結局食事はできるんだろうか? それともこういう店は、基本酒の客ばっかりなのかな? まあいい、喉も渇いている事だし、さっと呑んでぱっと出よう。面倒がなくていい。そうとなれば、喧しい若者よりも、静かな老人の隣が嬉しい。
※金貨:六→五枚
私は老人の隣の席に座ると、挨拶代わりに話し掛けた。
「…この時期は、道がぬかるんで嫌になるな」
「そうさな、雨があるのは良い事じゃが」
それで漸く店内の緊張が解れ、元の賑やかさが戻ってきた。
老人は村外れに住む農夫で、クリスタ丘陵の事情に精通していた。
「何でも、<王者の宝冠>が盗まれちまったらしいな」
「!…もう噂になっているか」
「そりゃあな。人の口に戸は立てられん。まあ儂等は、あまり外の事には関心がないが。あんたは何処から?」
「そのアナ国から。もっと先まで行く予定だが、正直既にアナの自分のベッドが恋しいね(変な無茶振りされるし) 途中、小鬼の生首が飾ってあったが、鉱山はもう人間は使ってないのかね?」
「すっかり物騒になったからな。あんな所まで石を掘りに行く奴は、もうおらんよ。それこそ、手癖の悪い小鬼くらいじゃろう」
「全くだ」
その小鬼と鬼を出し抜いてきたんだがね。
「さて、儂はそろそろお暇するよ。旅の人、クリスタからは二本の道が伸びておる。一本はアリアドネの家の傍を通っておるが、もしアリアドネが家にいたら、あんたは少々頭を使わにゃならんぞ。もう一本の方は丘を登って、“大いなる者の領分”へ通じておる。儂はあんたに旅先で運命の女神の幸運が舞い込む様祈っとるでな。ここから先、恐らくこれが助けになる筈じゃ」
老人が手渡してくれたのは、アモフという林檎の様な果物だった。彼の畑で採れた物で、とても栄養豊かな物であり、他の食べ物と合わせて摂るとぐっと疲れが取れるという。
「これは忝ない。貴方にも、正義と真実の女神の加護があらん事を」
あり過ぎるとウザいがね。
※食料追加:アモフ(食事の体力回復二倍)
※運勢:一一→一二
体力的には宿に泊まりたいところだが、あまり高い様だと野宿をせざる得ないかもな。取り敢えずは、宿に行ってみよう。
私は宿屋を探した。
「スミマセン、いいですか?」
「どうぞ、ウチは何でも美味しいよ!」
ちなみに、一夜の宿賃が金貨三枚、栄養たっぷりな食事の代金は金貨二枚だそうだ。
そんなに高い訳ではないが、両方支払うと、宝石を除いて綺麗にすっからかんになってしまう。でも、お腹もペコちゃんだし、せめて食事だけでもしていこう。
「…デザートもあるし」
懐のアモフを取り出して、ほくそ笑む。
早速席に着いて、食事が運ばれてくるのを待つ。
「おお、来た来た、来ましたよ」
※悪臭熊のシチュー
・名前に反して、香り良し。
・肉が柔らかく、ジューシィ。
・一緒に入っているのは、ここで採れた野菜。新鮮。
・量はたっぷり、これだけでお腹一杯になる。
・残念ながら、自前の食料はここでは食べてはいけないらしい。がーん、だな。
「いいじゃないか。こういうのでいいんだよ」
※金貨:五→三枚
※体力:九→一二
「お客さん、泊まっていくかい?」
「ノー! ヤド、ヤドハダメデス」
何故か片言で返すと、私は村外れまで行き、木の下に今夜の寝床を定めた。
ここでまた食事もできるが、食料が乏しいので、一日一食で我慢しよう。
眠ろうとするが、奇妙な物音で度々目を覚ます。しかし、一応休む事はできた。
※体力:一二→一三
私は、日の出と共に歩き出した。
名前:シムニード
職業:魔法使い
流儀:正天秤三角呪法
技量:八
体力:一七/一三
運勢:一二
装備:剣一振り、背負い袋、金貨三枚、食料一食分、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、グランディガンの斧(戦闘使用時、技量マイナス一)、魔法の呪文の書一頁、蜜蝋、蜂蜜、宝石、アモフの実(食事の体力回復二倍)
祝福:正義と真実の女神の加護