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シムニード(二号機)の日誌七日目:<旅の宿>

名前:シムニード(二号機)

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:一〇

体力:一四/九

運勢:七

装備:背負い袋、金貨二六枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、砂

祝福:正義と真実の女神の加護

 雑多な生き物でごった返す街中を歩く。やがて、分かれ道に出た。

 私はヴァイクの助言に従い、波止場を目指して真っ直ぐ進んだ。

 日が暮れてきた。宿を決めねばならぬが、あの<旅の宿>亭は避けたい。しかし、宿を探して廻っても、他に空いている宿はなかった。仕方あるまい、“城砦都市”の街中で野宿するよりはマシ…なのか?

<旅の宿>亭の扉を(くぐ)る。相変わらず、盛況だ。何も知らずに…。いや、知った上での事かもしれぬが…。そこで、予知夢通りに知った顔を見付ける。

「おおい、旅仲間よ!」

(しばら)くだな、フレイケル」

 私の感覚としてはそう間もない事だが、一応そう言っておく。

 フレイケルは酒臭い息を吐きながら、私の肩をばんばんと叩いた。

「“城砦都市”で無事会えて良かった! 友よ、一緒に長居したいところだが、そうもいかぬ」

 そう言って連れを指差す。

「だがあれからどうしていた?」

「トールでマンティコアと戦ったりもしたが…今は、北門を開ける呪文を探している」

「何、マンティコア!? ううむ、聞きたくて堪らぬが、今はな…。北門を開ける呪文というなら、俺の友人で…」

「ガトラー師の事なら知っている」

「む!? そうか…。ところで、宿は決めたか? 此処(ここ)なら泊まれるぞ―だが懐具合は大丈夫か? 俺はさっき、アダルヴの賭博場で当たりまくったところだ! 今夜は懐が温かい! これで一杯呑()って、此処(ここ)に部屋を取るがいい」

 アダルヴの賭博場で大当たりした事を教えたら(夢の中での事だが)落ち込んでしまいそうなので、有難く受け取っておく。


※金貨:二六→三一枚


「とはいえ、此処(ここ)の酒には気を付けろ。何しろ…」

「ジョッキに一杯で人心地がつき、二杯で気持ちが明るくなるが、三杯呑んだら朝まで沈没」

「何!? まさか、常連なのか?」

「まさか。噂で聞いただけだ」

 君からな。

「そうか…相変わらず、侮れぬ男だ。とにかく、また会おう!」

 フレイケルは連れと共に“城砦都市”の夜の中を消えていった。

「もう、シムニードったらドSですね。私に薄い本を何冊描かせる気ですか。この掛け算はアリアリアリアリアリーヴェデルチですよ!」

「女神が私の事をいやらしい目で見るんです」

 宿の亭主の所へ行く。

天辺(てつぺん)の階の部屋で…」

「知っている」

 この不機嫌そうな禿げ面を見ていると、この場で喉笛を掻き斬ってやりたくなるが、ひとまずは我慢する。

「食事は要らぬ。部屋だけ用意しろ」

 そう言うと、叩き付ける様に金貨四枚をカウンターに置く。この様な男にも、冥途への渡し賃は必要だろう。


※金貨:三一→二七枚


 亭主は肩を竦めて上を指す。私は薄暗い階段を登り、暗い部屋に入る。食事を摂りたいところではあったが、胃が痛んでままならぬ。まあ良い。今の気分には相応であろう。私は扉の横に立ち、時間が過ぎるのを待った。

 やがて夜が更けると、階段からゆっくりと誰かが登ってくる音がする。私は息を潜めて、じっと待つ。手には鞘に入ったままの剣を携えて。静かに扉が開くと、見覚えのある禿頭が顔を出す。空の寝台を見て、怪訝な顔をする。

「誰かお探しかな?」

 振り返る前に、剣の柄で後頭部を強打する。昏倒した亭主を寝台まで引きずり、彼の“仕事道具”で寝台に縛り付け、仕掛けを施す。準備が済むと、部屋の隅で少し眠っておく事にした。

 やがて、亭主の悲鳴で目が覚める。明け方の様だ。

「お早う、ご亭主。良い朝だな」

「こ、こりゃあ何の真似で、旦那」

 ほう、よく言う。

「何…今日の仕込みがまだだろうと思ってな…。(いささ)か肉の心当たりがあり、協力して進ぜようというところだ」

「ごっ…! ご冗談を、旦那…」

「冗談だと思うか?」

 亭主の耳元に囁くと、そっと結わえた綱を解いてその手に握らせる。

「おっと、迂闊に手は放さぬ方が良いぞ。滑車の順番は適当に変えておいた。よくよく考えてみる事だ」

 亭主は血走った目で滑車の仕組みを目で追う。

「ああ、この仕組みはなかなか難しいな? 貴様程効率良くいかなかった。一部仕組みが後頭部に廻ってしまったが、許せよ?」

「ひっ」

「では、幸運を」

 私は亭主を置き去りにして、宿を出た。(しばら)く歩いたところで、(かす)かに何かが断ち切れる様な音がした。

「運がなかったな」

 冥土で己が殺した者共に挨拶でもしてくると良い。

「し、シムニード? ドSというより、鬼ですね」

「これは心外な。邪悪な敵に対して掛ける情けなどある筈がないでしょう。当然の報いというもの」

 これで多少溜飲は下がった。先を急ぐとしよう。


※運勢:七→七

※体力:九→一一

※火傷回復


名前:シムニード(二号機)

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:一〇

体力:一四/一一

運勢:七

装備:背負い袋、金貨二七枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、砂

祝福:正義と真実の女神の加護

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