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シムニードの日誌八日目:納骨堂

名前:シムニード

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:八

体力:一七/六

運勢:一三

装備:背負い袋、金貨四七枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、金縁の鏡、羊皮紙の巻物、緑色のかつら、投げ矢二本

祝福:使用済み

「シムニードよ、本来この旅で直接的な助言をする事は禁じられているのですが…」

「何でしょうか、女神よ」

「早めに、できれば今すぐ、水浴びする事を勧めます。イケメンが台無しです。姉妹会議ものです」

「…考慮しましょう」

 言われるまでもなくそうしたいところだ。どうも此処ここは、街外れの様だ。

 墓地か。水夫の話にあった、“城砦都市”の第三貴人に逆らって不死にされたという者が葬られているかもしれぬ。行ってみるか。

 墓地は、木々に覆い隠されそうな程小さなものだった。無秩序に並ぶ墓石の間に、古びた納骨堂が見える。入り口の碑文には、<“城砦都市”の第五貴人―アヴニス卿此処ここに眠る>とある。

 どうやら当たりだな。早速調べてみよう。

 草の生い茂る道を納骨堂に近付いていくと、扉の前に見覚えのある黒い円があるのが見えた。

「ひいいー!? Bダッシュでジャンプですシムニード! けてぇぇぇ!」

 すっかり女神のトラウマになってしまったらしい。私としても、二度と御免だ。

 さて、下水道の穴への対処もあるが、正直体力の消耗が深刻だ。ここらで取って置きを使っておくか。

 ブリム苺の絞り汁を取り出し、呪文を唱えて飲み込む。


※体力:六→五


 呪文が効果を現し、薬効を何倍にも高める。


※装備使用:ブリム苺の絞り汁

※体力:五→一七


 これで、何かあっても余裕を持って対処できるだろう。

「だっしゅ! だっしゅ! ばんばんばばん! だっしゅ! だっしゅ! ばんばんばばん! すくらんぶる☆だ~っしゅ!」

 女神は混乱している。どれ、助走をつけて、と。


※運試し→幸運

※運勢:一三→一二


 穴を跳び越し、納骨堂の扉の前まで来た。さて、どう攻めようか。

 勢いに任せるのは愚か者のする事だ。安易に魔法に頼るのは、小賢しい者のする事だ。まずは、手持ちの品で何か活路を見出せぬか、考えてみよう。

「流石ですねシムニード。この正義と真実の女神が、貴男あなたに相応しい二つ名『冒険野郎シムニ」

「結構です」

 危ないところだった。

 背負い袋の中を確認してみる。

 ううむ、残念ながら、役に立ちそうな物は無いか。

「残念でしたねシムニード。『冒険野郎』になり損ねましたね」

「なれんで良いです」

「うーっ、最近冷たいですシムニード! 下水で歌も唄ってあげたのに!」

 考えてみれば、中に入る前にあれこれ案じていても、仕方ないかもしれぬ。侵入してみるか。扉は静かに開き、私は中に滑り込んだ。納骨堂の中は空だが、奥の壁沿いに石造りの階段があり、下へ続いている。本番はこの先か。

 こんな所で怖じ気づいてはいられぬ。石段を降りてみよう。

 階段を忍び降りる。濃密な死臭が漂い、僅かな水滴の音だけがしている。やがて、暗く広い部屋に出る。明かりは背後から射す僅かなものだけだ。部屋の中央には、棺桶が安置されている。近付くと、軋む様な音が聞こえ始める。棺桶の蓋が、少しずつ動いている! そして、視界の隅で動くものがあり見てみると、壁の窪みから白い亡霊めいた影が滲み出し、私に向かって近付いてきていた。その姿を見た途端、強い衝撃を受ける。集中できない…!

 本能は、今すぐこの場から逃げ出せと訴えている。しかし、此処ここから逃げ出したところで、“城砦都市”から出られねば同じ事だ。何か手はあるかもしれぬ。できるだけの事をしてみるのだ…!

 私は剣を引き抜いた。武器はこれしかない。

 白い影の顔に、入り口からの光が当たる。髑髏の眼窩が嘲笑っている。

「アナ国魂を舐めるなよ…!」

 私は恐怖を圧して、死霊に斬り掛かった。


死霊:技量九,体力八


 私の斬撃は躱され、死霊の曲刀が首筋に迫るのを、危ういところで避ける。


※体力:一七→一五


 間合いを計り直し、死霊の隙を見出して一撃を加える。しかし…

「何ぃっ!?」

 私の刃は、死霊の身体を通り抜け、空を斬った。地の底から響く様な嘲笑が、玄室を圧する。遺憾いかん、普通の武器は通じぬのか…! 狼狽うろたえるなッ! アナ国人は狼狽えないッ! 何か、何か手がある筈だ。今一度隙を見出し、策を練るのだ。

 私は死霊の攻撃を何とか躱しながら、何かこの状況を打開する手はないかと、必死に考えを巡らせた。死霊の凶刃が、幾度もこの身をかすめる。


※体力:一五→九

※運試し→幸運

※運勢:一二→一一


 そうだ、一部の不死には、銀の武器でなければ傷付ける事はできぬと聞いた事があるが…銀の武器など持っていない! 逃げ出す隙は、最早ない。残る手段は、女神に助けを求める事だけだが…女神は、残念そうな顔でハンカチを振っている。万事休すか…! せめて、アナ国人らしく最期の勇気を見せる為、私は雄叫びを上げて死霊に突撃した…。

☆女神様のわくわく死亡講座

「はいはーい☆ この世界の隠れアイドル、正義と真実の女神様ですよ♪

「とうとうくたばっちまいましたね、シムニード…。今や貴男あなたは、死せる冒険者。でも死ぬのも悪い事ばかりじゃありません。技量・体力・運勢をもう一度振り直してやり直せるのですから…。

「えへへ、別の某有名シリーズの14を真似してみました☆ 小賢しく立ち回って、猪口才に死を避けてきたシムニードも、漸くお陀仏deathね♪ あ、今のちょっといいフレーズ? メモしておきましょう。

「今回の死因は、私に対する数々の不敬も勿論ですが、銀の武器を見付けない内に納骨堂に凸しちゃった事ですね。自分で言っていたにも関わらず、魔法を過信して死んじゃうとか、ワロスw

「聖闘士☆矢方式ですので、次回はトールで目覚めるところからリスタートです。かなりの巻き戻しですが、死んじゃったのですから仕方ありませんね。今までの事は、夢のお告げという事で。これに懲りたら、もっと女神への敬意とノリの良いツッコミを心掛ける事ですね、シムニード☆」

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