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シムニードの日誌八日目:地下下水道

名前:シムニード

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:八

体力:一七/一二

運勢:一三

装備:背負い袋、金貨四七枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、金縁の鏡、羊皮紙の巻物、緑色の鬘かつら、投げ矢二本

祝福:使用済み

 それは、深い縦穴だった。私は何回転もしながら、暗闇の中を落下していく。呪文を唱える間もなく、終点の光が見え、私は猛烈な悪臭を放つ泥濘ぬかるみの中に着地した。

「ぐはっ!?」

 ある意味、死ぬより酷いかもしれぬ。其処そこは“城砦都市”の地下を走る下水道で、地下通路が四方八方に伸びている。それ以前に…気が遠くなりそうな程の悪臭だ! それもその筈、私は今、ありとあらゆる汚物―滑り、排泄物、汚泥、糞尿、酒粕―の中に、首まで浸かっているのだ。

「女神よ…」

 私は思わず呟いた。

貴男あなたが今お呼びになった女神は、現在使われておりません」

 見ると、涙目になって両手で鼻を押さえている女神が見える。うむ、初めて私の加護をせねばならぬ彼女に同情したかもしれぬ。だが、ひとの同情をしていられる状況ではない。左手の方で、不吉な水音がした。壁に小さな開口部があり、其処そこから私の顔目掛けて、滝の様な屎尿と汚水がほとばしろうとしている!

 まさか、まさかこの誇りあるアナ国人たる私が、この様な選択を迫られるとは…! だが、どうせ汚れるなら、危険の少ない方を選ぶべきだ。何が含まれているか判らぬ汚水を顔面で受けるよりも、既に首まで浸かっている汚水に潜る方が、まだマシな筈だ。

「ままよ…!」

 覚悟を決めると、私は息を吸い込んで(これがまたきつかった)汚水に潜り込んだ。

「ぐ、ぐふあっ…」

 これまでで最大のダメージを受けた気分で、汚水の収まった後の地下道へ這い上がる。


※体力:一二→九


 できる限り汚れを払い、これからどうするか決める。何とか、この地下から脱出せねばならぬ。しかし、入り組んだ地下道は、方角すら判らぬ。とにかく、移動せねば。

 指針は何もない。判断材料もない。適当に進むしかないか。私はまず直進し、次の分かれ道を右に、その次も右を選んだ。

 行き止まりに突き当たった。

 元の所に戻っても仕方がない。先へ進めるルートは…私は後戻りすると、最初の分かれ道を右へ行った。

 汚水に膝まで浸かりながら、必死に辿った道は行き止まりだった。舌打ちして引き返そうとしたが、前方の液溜まりが泡立ち始める。先から蒸気を放つ二本の触角が現れ、ぶよぶよとした巨体が滑りから姿を現す。赤く爛れた眼で私を睨み、咆哮を上げて襲い掛かってきた。首のない巨大な頭、太った猿の様だが無毛で滑らかな体躯、こいつは“肥喰らい”だ。よりにもよって、こんなものに出会すとは。


肥喰らい:技量七,体力一一


 召喚呪文と読心呪文を使うには、触媒が足りない。ここは、十八番となりつつあるこいつか。私は竹笛を取り出した。

「フルゥートゥ!」

「ぶるーどぅ、まぎじまむどらいぶ」

 鼻を摘みながらのガイダンスボイス、ご苦労様です女神よ。


※体力:九→八


 竹笛を吹き鳴らすと、肥喰らいは汚泥から躍り出て、その身体で可能な限りの踊りの様なものを踊り始める。その隙に、私は元来た道を引き返した。

 早く此処ここを脱出しなければならぬ。肥喰らいは、集団で食事をする習性がある。他にもまだ、いる可能性があるのだ。

 頭の中で地図を作ろうと思ったが、複雑過ぎて難しい。遅きに失したかもしれぬが、一度通った所が判る様に、壁に目印を付けていこう。とりあえず、左一本目、その後直進。

 見覚えのある行き止まりだ。壁に目印を刻む。

 最初のルートは、肥喰らいのいた所だ。次の、回れ右して、一本目を左、そして二本目を左へ行くルートを選ぶ。

 行き止まり。目印を刻む。

 直進、右二本目、左一本目のルートを選ぶ。

 行き止まり。目印を刻む。

 そろそろ自棄になってきた。右から二本目を行ける所まで行く事にする。

 行き止まり。目印を刻む。

 迷路と悪臭で、頭がおかしくなりそうだ。右一本目を行く。

 見覚えのある目印がある行き止まりだ。

「女神よ、何か歌でも唄ってくれまいか」

「まだだれががーどづぜんどあをだだぐーじげんのよがんーうぇるがむどぅーうぃんでぃーじーでぃ」

 ちょっとほっこりした。直進、右二本目、左一本目。

 最も新しい目印のある行き止まりに来た。

 目印の分布から考えて、右端の道が未知のルートだ。其方そちらへ向かう。

 辿り着いたのは行き止まりだった。しかし、上から光が差しており、バケツを結び付けた綱が降りている。古井戸か何かか? 上水道だった事があるのか? ともかく、出口だ。

 長い綱登りはかなり堪えたが、ようやく日の光の下に這い出る事ができた。


※体力:八→六


名前:シムニード

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:八

体力:一七/六

運勢:一三

装備:背負い袋、金貨四七枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、金縁の鏡、羊皮紙の巻物、緑色の鬘かつら、投げ矢二本

祝福:使用済み

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