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シムニードの日誌七日目:賢者ガトラー

名前:シムニード

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:八

体力:一七/七

運勢:一三/一〇

装備:背負い袋、金貨三三枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、金縁の鏡、羊皮紙の巻物

祝福:使用済み

 闘技場を出ると、ヴァイクが近付いてきた。

「やあ、なかなか壮絶な試合だったな。生き残って何よりだ。ところで、グランディガンとは、どういう知り合いだ?」

 私は、シャム丘陵地帯での事と、グランディガンに斧を返した経緯を話した。

「なるほどな。あの斧を取り返してくれたのか。奴も喜んだ事だろう。私にとっても、思い出深い品だからな。良かろう、何か力になれる事があれば言ってくれ」

「実は、北門を抜ける為の、呪文の一節を探している。何かご存知ないだろうか?」

「うむ…」

 呪文は、まだ一節も判っていない。何としても、手掛かりを掴まねばならぬ。

「呪文の一節を知っている者に、心当たりがある。そいつの所へ行く道を教えてやろう」

 ようやく手に入れた手掛かりだ。無視する手はない。

かたじけない。行ってみよう」

 私はヴァイクと別れ、南門へと引き返した。

 少し先に、石を積んで塗り固めた大きな家がある。かなり立派な造りだ。恐らく、此処ここの事だろう。

 “城砦都市”の事だ。罠を警戒すべきだが、果たして正面と裏、どちらに仕掛けてあるか? 市井の者の家ならば、玄関にすら罠を仕掛けているかもしれぬが、此処ここが公共の施設、或いは地位のある者の屋敷なら、人のよく通る玄関には罠は仕掛けまい。正面から訪ねよう。

 玄関には、楢の無垢材で出来た、凝った扉がある。真鍮のドアノッカーを三度鳴らすと、間を置かずに扉が開いて、部屋着姿の老人が顔を出した。その足下には、棘だらけの、大型の蜥蜴とかげの様な生き物が擦り寄っている。…私の記憶が確かならば、こいつは棘々獣だ。先程頂いたばかりの食材に出会うとは、希有な事だ。特にこいつは、滅多に見られる生き物ではない。この老人が、それなりの地位にいる人物なのは、間違いなさそうだ。

「…突然お邪魔して申し訳ない。少し伺いたい事があるのだが」

「別に構わんよ。中で伺おうか。ただし、武器を持ったままでは困る。こちらに預けてもらえるかのう?」

 強引に中に入ろうとすれば、足下の棘々獣をけしかけられるだろう。体力を消耗している今、それは得策ではない。それに、目的は呪文を聞き出す事だ。怒らせてしまっては、元も子もない。

「お預けしよう」

 以前武器を置いて、酷い目に遭った気がするが、この場合は致し方ない。

 老人は、私の剣を戸口に置き、私を書斎へ請じ入れる。本当に敵意はない様に見受けられる。

「儂は学者にして賢者、長老ガトラーと申す者じゃ。儂と知って来たのかね?」

 書斎の中は、床から天井まで本が並ぶ、洗練された部屋だ。とても辺境、しかも邪悪な“城砦都市”とも思えない。

「まあ、賢者だ学者だと言うても、今は近所の子供達にものを教えておるばかりじゃがな」

 穏やかで知的な物腰といい、益々(ますます)“城砦都市”の住人とは思えぬ。

貴男あなたの様な方が、何故この様な街に?」

「何、儂は今までの人生に充分満足しておってな。余生はこの悪徳の街を、少しでもまともな所にする為にでも使おうかと思うて喃」

 その物言いに、衝撃を受ける。言っている事が本当なら、彼は学聖とも言うべき存在だ。これ程の人物が、こんな所におられるとは。確かにこの御仁ならば、北門を開ける呪文を知っているかもしれぬ。

「ガトラー師、貴男を見込んで、お訊きしたき事があります」

「ほう、何かね?」

「私は訳あって“城砦都市”を抜け“無限荒野”へ到らねばならぬのですが、北門を開ける為の呪文を知りたいのです。貴男ならば、御存知ではありますまいか」

「“無限荒野”へか。それはまた、尋常ならざる旅じゃな。余程の事情があると見える。…呪文の一節なら知っているとも。喜んで教えて進ぜよう。ただし、今困っている事が一つある故、解決を手伝ってくれるなら」

 老人の目が、私を試す様に光る。

「…私にできる事ならば」

「このところ、幾つかのルーン文字の解読を試みていてな。ある例文に取り組んでいるところなのじゃが、次に来る文字がどれか判らず、そこで止まってしまっている。この次にくるのはどれだと思う?」

 長老ガトラーはそう言うと、私に五枚の紙片に描かれたルーン文字を見せ、次いで別の四枚の紙片に描かれたルーン文字を示す。ルーン文字の心得は多少あるが、これは難問だ…!

 人間のルーンでも、岩侏儒ドワーフのルーンでもない、ほぼ未知の文字だ。これは、暗号図形として見る他ないだろう。表しているのは、文字か数字か…。形を幾ら眺めても、何も思い当たらぬ。考え方を変えるべきか…。全部で六文字で、意味を成すものである筈だ。文字の形から類推できぬなら、六という数から何か思い当たらぬか…。

「…人間が賭け事に夢中になる気分が、少し解ってしまったかも☆」

 女神のどうでも良い台詞が脳裏に浮かぶ。今はそれどころでは…待て。賭け事…六…賭け事につきものといえば…賽子さいころだ。今一度、ルーン文字をよく見る。形は違えど、刻まれている文字数はそれぞれ、二,四,六,三,五。これは賽の目だ! 刻まれた文字数によって、数を表しているに過ぎぬ。ならば残るは…。

 私は、ルーン文字が一つだけ刻まれた羊皮紙を示す。

「見せてくれ。何故これがそうだと思う?」

「これらは、総て賽の目を表している。これが二,これが四,他も同様とすると、残るは一を示すこれという事になる」

「なるほど!」

 ガトラー師は喜びを露わにした。

「素晴らしい! 柔軟な知性がなければ、“無限荒野”を越える事はできぬじゃろう。あたら命を落とす事もあるまい。喜んでお教えしよう。必要な呪文の内、儂が知っているのは一節のみでな。こういうものじゃ」


『封印されたる二本の軸よ』


「残る三行を誰が守っておるかは知らぬが、いずれも都の有力者じゃ。この都では、人よりも人以外の者の方が事情に通じている事が多い故、これをあげておけば役に立つやもしれぬ」

 そう言うと、ガトラー師は私に小さな袋を手渡した。中には、緑色のかつらが入っている。これは、通訳の呪文の触媒となる物だ。


※装備追加:緑色の鬘


かたじけない、ガトラー師。有難く貰い受ける」

 私は礼を言い、剣を腰に提げると屋敷を出た。


※運勢ポイント:一〇→一三


名前:シムニード

職業:魔法使い

流儀:正天秤三角呪法

技量:八

体力:一七/七

運勢:一三

装備:背負い袋、金貨三三枚、ブリム苺の絞り汁(戦闘中以外に飲むと、体力三回復)、竹笛、蜜蝋、蜂蜜、宝石、にかわ、鼻栓、玉石四つ、水晶クリスタルの滝の通行証、剣、金縁の鏡、羊皮紙の巻物、緑色の鬘

祝福:使用済み

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