SF作家のアキバ事件簿244 ミユリのブログ 世界線の彼方
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第244話「ミユリのブログ 世界線の彼方」。さて、今回は謎組織から御主人様を奪還したメイド達が反撃を開始します。
護衛メイドを蘇生させ"次元ビーコン"の再生動画は、超古代太陽系戦争にまで遡る、メイド達の使命が明らかになって…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 黒い神田リバー
秋葉原の地下でスーパーヒロインを狩る謎組織SATO。その地下司令部から命からがら脱出した僕達。
「すぐ追いつかれるわ。急いで」
「作戦どおり、万貫森にあるカミラの炭鉱跡地に身を隠しましょう」
「え。カミラス?冥王星前線基地みたいな?」
自白剤を打たれ頭が朦朧としてる僕の曖昧な応答。左にミユリさん、右にラギィ。左右を推しと元カノに抱えられ、真夜中のパーツ通りを決死の逃避行。
「テリィたん、大丈夫?…ねぇナセラはどこ?」
「現場に残った。僕達の盾となって…」
「え。ナセラも一緒に脱出したんじゃないの?」
ティルが駆け寄る。彼女は、この世界線の設計によれば僕の許嫁となる巨乳、じゃなかった、女性だ。
「長居は無用。ズラかるわょ!」
3台の逃走用車両、ピンクのキューベルワーゲン、万世橋のFPC、僕のケッテンクラートがstandbyしてる。
「みんな、急いで!カミラ炭鉱で会いましょう」
「テリィたん、もう捕まっちゃダメょ」
「はい、服を着て」
半裸の僕にメイドのエアリ&マリレが声をかけてくれる。3台の車は蜘蛛の子を散らすように走り去る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕のケッテンクラートは、ミユリさんの運転で中央通りを南下中だ。僕は、後席でシャツを着ている。
「テリィ様。黒メイド達に何をされたのですか?」
「大丈夫だ。ミユリさん、気にスルな」
「テリィ様。実は、私の超能力が…」
その瞬間、銃撃音!真っ赤なハンヴィから身を乗り出した黒メイドが短機関銃?を乱射している。
銃口はストレートだから、音波銃ではなさそうだ。恐らくMP5だな。サイレンサーは装着ナシだ。
「銃撃されました!エンジン被弾!」
流れ弾がエンジンに当たり、ケッテンクラートは煙を噴き急停車。僕とミユリさんは飛び降り逃げる。
「テリィ様、こっちに来て!」
赤ハンヴィも急ブレーキをかけて停車。黒メイド達が短機関銃を片手に飛び降りて僕達を追って来る。
「大丈夫?がんばって」
僕を庇うようにして走るミユリさん。
「コチラです。早く!」
「スーパーヒロイン、もう貴女達は逃げられないわ。止まれ!」
「え。しまった、ハサミ打ち?」
万世橋に逃げた僕達を南詰から来た別のハンヴィがヘッドライトで照らし出す。橋の中央部で立ち往生となった僕達は、アールデコ調の橋灯が美しい親柱の上に逃れる。眼下に流れる黒い神田リバー。
「テリィ様、飛び込みます!」
「おいおい。僕は泳げないんだ。知ってるだろ?」
「降伏しろ!手を挙げてこっちに来い!」
ミユリさんは、僕の手を握り just one kiss。そのママ万世橋の親柱から神田リバーへと飛び込む。
追う黒メイド達は、欄干から身を乗り出して懸命にライトで照らすが、黒い川面まで光が届かない。
第2章 なんたってスーパーヒロイン
神田リバーの冷たい川面に首が2つ浮いている。僕は立ち泳ぎ、というか、犬かきだ(因みに戌年w)。
「テリィ様、見て」
ミユリさんが指差す先にボンヤリと舟影が浮かび上がる。水上バスの船着場に係留されてる屋形船だ。
「…というコトは、ココは和泉橋の下かな。確かに橋の上を通る車の音がスル」
「あの屋形船の中に隠れましょう。テリィ様。しっかり。私を見て…さぁ屋形船に乗ってください。ココなら安全です。誰にも見つかりません」
「そうだね…わっ」
ミユリさんは僕の首に手を回し突然むさぼるようなキス。その瞬間、改造手術台の上での出来事が脳内でフラッシュバック…死ねと迫るレイカ。冷酷に微笑む執刀メイド。泣き叫ぶ僕。その記憶を共有して、みるみる両目に涙を溜めるミユリさん。
「なんてコトを」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、蔵前橋通りを逃走中のピンクのキューベルワーゲンでは、ティルが運転中のマリレを責めてる。
「なんでナセラを1人で置いてきたの?」
「彼女が私達に指図したの。その後、改造手術室の方から音波銃の発射音がした。もう死んじゃってるカモ」
「今すぐ引き返して。"時空トンネル"の遺跡に向かって」
慌てるマリレ。因みに、ティルもマリレもエアリも全員がメイド服だ。何しろココはアキバだからね。
「ちょっと!ティル、いきなり何を言い出すの?」
「そうすればナセラを救えるの。自分に何かあったら、必ずそーしろと言われているし!」
「でも、あの遺跡に戻って何をスルの?勝手に落ち合う場所を変えたら、みんなと2度と会えなくなるわ」
そりゃマズいな。
「大丈夫。テリィたんはきっと後から来るから」
「(何その自信?)じゃラギィ警部のコトは見捨てようって言うの?」
「そんなコト出来ない。とにかく!全員が揃うのが最優先よ」
唯一"未覚醒"でスーパーヒロインではないタダの腐女子スピアも合流派だ。運転中のマリレの結論。
「やっぱり全員で行動しましょう。もう誰も置き去りにはしない。OK?」
ティルは涙目になり天空を見上げる。ピンクのキューベルワーゲンは月明かりの昭和通りを疾駆する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。屋形船では、僕が修羅場タイムに突入w
「テリィ様。ナセラが私に語ったのです。この世界線では、テリィ様とティルは結ばれる設計になっていると。ソレはfalse or true?」
「ミユリさん。ソレは…」
「だって、世界線でそう決められているのでしょ?」
ミユリさんは、両手を広げて天を仰ぐ。ミュージカルでよく見る絶望のポーズだ。何か逝わなきゃ。
「あの頃に戻りたいよ。何も知らずにミユリさんを無邪気に推してた、あの頃に」
「私もです。こんな日が来るのなら、あの日、あのママ私は音波銃で撃たれて死んでしまえば良かった」
「そんなコト、逝うな」
ミユリさんは、何かを期待して僕を見る。
「だって、私の命を助けた、あの日に私はテリィ様の推しではなくなってしまったの」
「違うょ。終わったんじゃない。始まったんだ」
「え?始まった?」
ミユリさんは、顔を上げる。
「SATOの捕虜になり、改造手術台の上で、もう僕はダメだと思った。でも、ミユリさんの存在が僕を救ってくれた。思い出していた。君の瞳。君の笑顔。君の肌。そして唇。ヲタクには推しを選ぶ権利がある。世界線なんか関係ない。そもそも一般人の手アカに塗れた"結婚"なんてコンセプトがクソ喰らえだ」
ミユリさんはユックリと微笑んで、僕の手の上に手を重ねる。見つめ合う。僕の大好きな笑顔が蘇る。
「あの日、僕は初めて"推す喜び"を知った。ソレを知って、初めてヲタクになれた。明日廃人になろうと、A社員になろうと、僕は構わない。この世界線が僕にとっちゃ人生の全てさ。僕が推すのはミユリさんだけだ。いや、ミユリさんだけを推し続けたい。永久に」
「私を推して。死ぬまで」
「誓う。萌えのある限り」
僕からキス。ミユリさんは推される喜びに打ち震える。あれ、ミユリさんの手先からバチバチ電光が…
どーやらミユリさんの超能力が復活したようだ。スーパーヒロインって、2度覚醒スルんだな。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万貫森のカミラ炭鉱は、産業革命の頃を彷彿させるビクトリアンでスチームパンクな炭鉱の跡地だ。
「ラギィ警部。ミユリ姉様達は未だ?」
「未だょ。貴女達以外、誰も来てないわ」
「こんなに時間がかかるなんて変じゃない?」
炭鉱の外を気にするエアリ。
「もう朝焼けが窓を染める頃だと言うのに」
「OK。来た道を戻って探して来るわ」
「警部。私も一緒に行く!」
危険な任務にマリレが志願。誰も止められない。
「わかった。貴女も来て。私達が戻って来るまで、みんなはココを動かないで」
「ROG」
「マリレ」
呼び止めるスピア。コレも誰にも止められない。
「あのね!私…」
「スピア、大丈夫。私は直ぐに戻るから心配しないで」
「きっとよ」
メイド同士の百合なハグを横目に出発するラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。みんなが心配してるとはツユ知らない僕は、誰かが連れて来たスーパーヒロインと、壊れかけた屋形船で朝を迎える。破れたソファから起き上がる(再び裸のw)僕と(脱メイド服のw)ミユリさん。
「朝焼けが窓を染めたなら…逝くょミユリさん」
「はい。何処へでもお供いたします」
「スーパーヒロインの未来に栄光あれ」
しかし…カチューシャ"だけ"のミユリさん、萌えw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。アキバ中を探し回ったFPCの車内でマリレは以前から気になってた質問をラギィにぶつける。
「警部は、何で私達スーパーヒロインの味方になったの?」
「…世の中には、正義と悪がアル。でも、SATOのやってるコトは、どう考えても正義とは思えナイ。もし自分の元カレがスーパーヒロイン達を守るために無茶をスルとしたら、私にそばにいて欲しいと思うハズ。そう考えただけ」
「ラギィ…貴女、何でテリィたんと別れたの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ふれあい通りを逃げる僕達。新幹線ガード下から黒メイドが飛び出し短機関銃を手に追いかけて来る。
「待て!止まれ!」
「嫌だ。しかし、メイドが警察署の前でMP5を乱射しても誰も取り締まらないとは。今どきの万世橋にはトホホだな」
「今から取り締まるの!黒メイド、銃刀法違反の現行犯で逮捕スル!ミユリ姉様とテリィたん、伏せて(名前を呼ぶ順番が逆かなw)!」
真正面に新橋時代の元カノ、ラギィ警部が拳銃を構えて飛び出す。おぉ!今回はウレしい挟み撃ちだ。
ところが…
「所轄のおまわりさん、コレは音波銃。殺人音波の発射は銃刀法で言う"金属製弾丸を発射する機能を有する装薬銃の発射"には該当しないわ。ごめんあそばせ」
「え。マジ?」
「お願い!伏せてぇー!」
次の瞬間、深夜のふれあい通りを光の奔流が貫く。その光は"圧"がアリ、場の全員がナギ倒される。
「…マリレ?」
マリレが手のひらを前に出すポーズで仁王立ちになっている。"光の奔流"はその手のひらから発射?
「ミユリ姉様、テリィたん(またまた名を呼ぶ順番がw)!今の内ょ!早くFPCに乗って!」
「マ、マリレ。今、貴女の手のひらから光が…」
「ラギィ!のんびり尻餅ついてナイで。早くFPCを出して!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
裏アキバに広がる万貫森。昔からUFOの目撃情報が絶えない。仲間と落ち合うカミラ炭鉱はその奥だ。
「ミユリ姉様にテリィたん(またまた…以下略)。ココならしばらく安全だわ」
「thank you、ラギィ。でも、僕達に安全な場所なんて無いンだ。あ、先に逝っててくれ」
「わかりました。テリィ様」
おとなしく僕と元カノを2人にしてくれる今カノ?のミユリさん。マジ神。マリレと炭鉱に姿を消す。
「テリィたん、説明して。さっきの"光の奔流"はどーゆーコト?私、ずっとミユリ姉様だけを疑ってきた。でも、マリレもスーパーヒロインなの?まさかエアリも?」
「えっと…YES」
「あぁ何てコト?私の元カレの周りはスーパーヒロインだらけ?コレじゃ私が元カノに格下げになっても仕方がナイわ。テリィたん。貴方、何処までヲタクなの?」
天を仰ぐラギィ。今宵は全員がよく天を仰ぐ。
「ラギィ。君は彼女達の味方だと逝ってくれた。僕達はソレを信じて頼るしかない。実は、僕達全員の命が危険にさらされてルンだ」
「私の命もね…最初から全てを聞かせて」
「彼女達は、自分がどの世界線から来たのか、なぜアキバにいるのか、わからズにいる。彼女達の肉体自体、どの世界線のモノなのカモかもわからないンだ」
一言も発せズ、ただ黙って頭を抱えるラギィ。僕が百軒店のアパートを出て逝った、あの日と同じだ。
「この秘密を知っているのは、僕達とラギィだけだ。彼女達が来るべき人類の進化形なのか、単なる突然変異体なのか…ソレは歴史が決めるコトで、今を生きる僕達には関係ナイ。ただ、彼女達は普通の腐女子として生きていたいだけなんだ。このアキバで」
「…テリィたん。私は外事警察にいたママのコトを思い出してた。この秋葉原で異次元から襲来スル"時空テロリスト"の存在を信じ、彼等を追っていたママは正しかったのね」
「maybe。でも、ラギィのママなら、きっと今頃は僕達のコトを南秋葉原条約機構に突き出していただろうな」
その時、万貫森の稜線から陽が昇り、僕とラギィは眩しさに思わズ目を細める。遮光器土偶のように。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
炭鉱跡地でティルは"超能力教室"を開催中。
「ナゼあんな"光の奔流"を撃つコトが出来たのか、自分でもワカラナイの」
「大丈夫ょマリレ。きっと超能力の使い方がわかってきたンだわ。私も集中するコトで"力"が使えるようになった。いつも、ナセラはソレを私に教えようとしていたわ」
「マリレ。貴女、その"圧のアル光の奔流"をラギィ警部の目の前でぶっ放したの?呆れた」
また1人、天を仰ぐのはエアリ。そーゆー彼女は実は妖精で背中の翅はメイド服の下に折りたたみ中w
「だって!あの時ヤラなきゃ私達は短機関銃で蜂の巣だったのょ!」
「でもさ…ソレで私達の正体がバレたンでしょ?」
「ソレは反省してる。ゴメンナサイ」
しおらしく頭を下げてみせるマリレだが…さて、彼女は誰に頭を下げているのやら。舌を出してるし。
「ラギィ警部はどう動くかしら」
「ソレをみんなで考えましょ?慌てず冷静にね」
「ミユリ姉様…しかし、そもそもラギィ警部は信じて大丈夫なの?テリィたんの元カノょ?」
だから何ナンだw
「とにかく!スーパーヒロインだけで、万世橋地下の"時空トンネル"へ行きましょ?そうすれば、ナセラが助けてくれるし、残りの人は無事に家に帰れるわ」
「そうかしら?ナセラを始末?したレイカが、テリィたんやスピアを放っておくとも思えないし」
「でも、一生この廃坑にいるワケにもいかないわ」
エアリはミユリさんをチラ見スル。慌てて口を挟むスピア。
「エアリ。貴女、秋葉原から逃げる気?」
「だって…ティルの言うコトも一理アル。私達スーパーヒロインさえいなくなれば、タダの腐女子やヲタクのスピアやテリィたん(ココでも名を呼ぶ順が…略)には誰も用はナイでしょ?」
「嫌よっ!」
胸の谷間をチラ見せしながら1歩前に出るスピア。彼女は、いわゆるトランジスタグラマーなんだw
「私はマリレとずっと一緒にいたい」
「大丈夫ょスピア。みんな一緒だから」
「ミユリ姉様…姉様だって、テリィたんと離れ離れになりたくナイでしょ?」
笑顔でうなずくミユリさん。僕の手を握る。
「OK。もう逃げるのはヤメよう。みんなでヲタクな人生を取り戻スンだ。過去にSATOの捕虜になった時間旅行者が"時空テロリスト"として扱われて、どんな末路を辿ったかレイカから聞いた。僕は死んでもスーパーヒロインを守る」
ミユリさんの手にも力がこもる。ところが…
「ねぇヤッパリ逃げるしかナイわ」
「ティル。私達がココで逃げれば"覚醒"した全てのスーパーヒロインが一生逃げ回る人生を送るコトになるわ。SATOは、私達を時空の果てまで追いかけて来る。1度逃げれば、2度とアキバはモチロン、この世界線には戻れない。ソレでも良いの?みんなは?」
「そんなの嫌ょ姉様」
マリレがみんなの気持ちを代弁。
「だったら、闘うのょ」
「SATOの特殊部隊と戦うの?奴等は、私達の全てを知り尽くしてるのでしょ?とても敵わないわ!」
「ティル。私達は自分達の超能力が自分でもよくわかってナイ。と逝うコトは、もしかしたらレイカ達が思っている以上に私達が強い可能性もアル。なんたって私達はスーパーヒロインなのだから」
ミユリさんが語ると全員が大きくうなずく。僕とはエラい違いだw
第3章 みんな行方不明
FPCの警察無線に耳を傾けるラギィ。
「…いいえ。ラギィ警部ですが、朝から出勤されてません。昨夜、ミユリ容疑者と飛び出して行くのを見たという目撃者を保護しています。他にメイド、ヲタク併せて合計6名が行方不明です」
「了解。本件は、外事警察本部にも通知済みだ。以後、本件の捜索指揮は桜田門が執る。なお、件の目撃者の保護も本庁で行う。既に捜査官が急行中」
「ありがたい。助かります」
無線で話しているのはレイカ。傍らに控える目撃者カレルにうなずくとカレルは心から安堵した様子w
「レイカめ」
万貫森で警察無線を傍受しているラギィは、苦虫を噛み潰したような顔で呪詛を吐く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"タイムマシンセンター"の前に黒いSUVが停まっている。物陰から様子を伺うエアリとマリレ。
「黒メイドが乗ってる。SATOのエージェントね」
「失敗したら2度と秋葉原には帰れないけどOK?」
「やるしかない。行くわょ」
メイド2人は手をつなぎ、コレ見よがしに黒いSUVの前に躍り出る。車内の黒メイドが目で追う。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
裏通りのSASジープ。僕を振り向くティル。
「時間だわ」
「黒メイドがワナにハマった」
「OK。レイカに遭わせてあげましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
黒いSUVから降りエアリとマリレを追う黒メイド。メイドを追いかける黒メイド。アキバ的な風景だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ベロゥ捜査官。後は私に任せて」
捜査官が振り向くと…何とサングラスをかけたレイカ司令官が立っている。直立不動になる黒メイド。
「はい。わかりました」
誰もいないパーツ通りに向かって答える。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"マチガイダ・サンドウィッチズ"。自分で呼び出したカレルの前で黒メイドが突然直立不動になる。
「サミズ捜査官」
「はい…わかりました!」
「おいおい。誰と話してルンだ?」
窓の外に向かって応える黒メイド。ソレを見て不審に思うカレル。彼は池袋時代のミユリさんのTOだ。
「ココにいて」
カレルを指差す。一方、彼の意識の中のレイカは、かけていた黒いサングラスをとって命令を下す。
「貴女は乙女ロードへ行って。首都高6号線の出口に古いガソリンスタンドがアルわ。ソコで私が来るまで待機ょ」
「わかりました。レイカ司令官」
「お願いね」
黒メイドは、窓の外に向かって大きくうなずく。思い切り不審に思うカレル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、パーツ通りの真ん中で、別の黒メイドがエアリとマリレを追うのをピタリとヤメて回れ右スル。
「了解。乙女ロードで指示を待ちます」
踵を返しパーツ通りを走り去る黒メイド。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マチガイダ・サンドウィッチズでは、別の黒メイドが窓の外に向かって元気に応答スル。
「わかりました。乙女ロードですね」
「おい。誰と話してるんだょおーい!」
「え。」
その瞬間ピクンと震え夢から醒める黒メイド。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その瞬間、SASジープの助手席に座っていたティルもピクンと震え、瞑っていた目を開く。
「2人の黒メイドに同時に幻覚を見せたのか?」
「YES。乙女ロードへ行けって言ってやったわ」
「どんな相手にもできるの?実際にはないものを見せられるなんて」
後席のミユリさんが半ば呆れたように口を挟む。ティルは笑う。
「現実に目を向けさせるより、幻覚を見せて信じさせた方が手っ取り早いコトってアルでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マチガイダ・サンドウィッチズ。黒メイドはカレルに詰め寄る。
「ねぇ。今、何が起きたの」
「それはこっちが聞きたいよ」
「確認するわ」
黒メイドは不審に思いスマホを抜く。話し出そうとして振り向いたトコロにミユリさんが立っていて、目を見開いた次の瞬間には、彼女のカラダは電撃に撃たれて真っ黒だ。驚くカレル。
「何するんだ!ミユリ、メイド同士はもっと仲良くしなきゃ!」
「マハラジャ。彼女は敵なの」
「敵?俺以外にも誰か…おい一体何が起きてるんだ。教えろ」
ミユリさんは首を横に振る。
「今は教えられないのょマハラジャ」
「おい。教えろよ」
「だから、教えられないの。向こうを見てて」
黒焦げの黒メイドをチェストに推し込むミユリさん。
「嫌だね」
「良いからアッチを見てて。出禁にするわよ」
「え。出禁?」
しぶしぶアッチを見るカレル。ミユリさんはチェストの引き出しに手をかざす。手のひらが高熱を発する。
「マハラジャ。今は何も言えないの。予想外のコトが起きてるけど、マハラジャは巻き込みたくない。黒メイドを絶対にココから出さないで」
溶接したチェストを指差すミユリさん。意味深に微笑んで出て逝くミユリさん。ソレを見届け、早速引き出しを開けようとするカレルだが、溶接されていて開かない。カレルは、黒メイドが床に落とした、銃口がラッパ型に開いた銃を目に止める。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のラギィ警部のオフィス。何とデスクにブーツを載せて書類を見ているのは新米のフィツだ。またの名をレイカSATO司令官。半開きのドアからラギィが現れる。
「言っとくけど、私を殺しても無駄ょ。24時間以内に次の司令官が来るだけ」
「あら。殺すつもりならとっくにやってるし」
「そう。じゃ何しに来たの?」
濡れた子犬のようにビクビクしているラギィ。
「実は…何もかも怖くなったの。自分の命だけじゃなく…恋人の命まで危なくなったから」
はぁはぁと肩を上下させて荒い息。レイカに背を向け開けたロッカーから拳銃を取り出す。
「フン。昨夜、私を撃った時にはかなり威勢が良かったクセに」
「意外な事実がわかった。全てを覆すような事実が」
「貴女は連中の味方なんでしょ?正直に言ったらどう?私はテリィたんの元カノだと」
痛いトコロを突くレイカ。が、ラギィも負けてナイ。
「私からテリィたんを奪った連中は、トンでもない腐女子だったの。このママじゃ秋葉原、いいえ、人類は進化を誤るコトになるわ。偶然、腐女子達の計画を聞いてしまったの。今頃、貴女の部下はみんな消されてる。ウソだと思う?確かめてみたら?」
最初は、男を横取りされた女の恨み節とハナで笑っていたレイカだが、フト真顔になりスマホを抜く。
「ベロゥ捜査官。応答して。ベロゥ?」
空電。別の部下を呼ぶ。
「応答して。サミズ。レイカよ」
またしても空電だ。クスクス小声で笑うラギィ。レイカは顔を上げて、怒りの視線をぶつけてくる。
「私の話を信じる気になった?」
「今すぐ、あのスーパーヒロイン達のトコロへ案内しなさい。今すぐ!」
「条件がアルわ。私の経歴に傷をつけないで。あと、残りの人生を誰にも脅かされずに暮らしていけるって保証して。年金も付けてね…もう1つ。新恋人の安全を保証して」
ニヤリと笑うレイカ。
「終身保護プログラムで新しい人生を用意するわ。貴女と貴女の…新恋人にね。でも、その前にスーパーヒロイン達の居場所を言いなさい。貴女の男と、貴女の幸せな未来を奪った女の居場所を」
怒りたつレイカ。窓の外に視線を飛ばすラギィ。長い、長い、長い溜め息をつく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通りの"タイムマシンセンター"。
既に閉館し、照明の落ちた館内を歩くエアリとマリレ。少し遅れてティルとスピア。全員メイド服だ。何しろココは…(略)。特別展示室に入って逝く。
「何で全員胸の谷間チラ見せのメイド服なの?テリィたんの趣味?…とにかく、スーパーヒロインが揃い次第、新型の音波銃で全員射殺よ」
「ダメ。腐女子も混ざっているわ」
「腐女子でしょ?人類の健全な進化のためよ。多少の犠牲はやむを得ないわ」
物陰に隠れ物騒な会話を交わすレイカとラギィ。2人とも既に銃を抜いている。レイカの銃は、銃口がラッパ型に開いている。SATOが対スーパーヒロイン兵器として開発した音波銃だ…その瞬間、暗転。
「レイカ!」
暗闇で怒りの叫びと苦悶の声が交錯スル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
灯かりが点くと、レイカはイスに縛り付けられている。正面に立つマリレとスピアの手には、奪われた拳銃やら音波銃やらが握られている。
「ラギィの裏切りは最初から計算済みょ。所詮はテリィ様の元カノだもの。今カノの私に心を許すハズがナイわ」
エアリとマリレの背後から、場の空気を支配する声。現れた悪の女幹部?はナノファイバー製の黒メタリックなボディスーツに身を包んだミユリさんだ。思い切り寄せて上げた胸の谷間がクッキリw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたんの元カノだった貴女は、てっきり敵だと思ってたわ」
ティルは、レイカの前ではラギィの後頭部につきつけてた拳銃(実は水鉄砲w)をホルスターにしまう。
「でも、間違いで良かったわ」
「用が済んだらレイカの処分は私に任せて」
「どうするつもり?まさか、殺す…」
眉を顰めるティル。ラギィは苦笑いしてティルを振り向く。
「司法省の友人に引き渡すの。もう連絡してある」
「司法省の友人?どうせ潰されるだけよ。その人、大丈夫なの?」
「大丈夫。彼女もテリィたんの元カノだから…とにかく!裁かれるべきょ。官邸だろうが、人類進化を浄化スル謎組織だろうが関係ない。どちらにせよマスコミが騒ぎ出せばお仕舞いでしょ?そっちにもリークしてある。売り出し中のメディア"ワラッタ・ワールドワイド"の女社長は、実はテリィたんの…」
溜め息をつくティル。
「元カノネットワーク、スゴ過ぎw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
尋問用の強い光源を背に、黒いボディスーツに身を包む悪の女幹部が仁王立ちしている。その正体は、背中やお尻の肉まで総動員して寄せて上げた"深い"胸の谷間チラ見せのミユリさんだ。ハレルヤ!
「南秋葉原条約機構のレイカ司令官。ヲ互い自己紹介は不要のようね。知ってるコトは全て歌ってもらうわ。ピシッ(鞭の音)」
「私はレイカ。認識番号は…」
「貴女の神経を自由にコントロールするコトが出来る。今から数分後、貴女は私に"お願いだから一思いに殺して"と泣いて頼むコトになるのだけれど、その時もチャンと痛みを感じられるようにね。マァどちらにせよ、貴女は全て歌うコトになる。今際の際に」
レイカの瞳に死への恐怖が浮かぶ。
「全ては貴女次第ょ。ナセラは何処?殺したの?答えなさい!ピシッ(鞭の音)」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕達は"タイムマシンセンター"のバックヤードでミユリさんのプレイ…じゃなかった、尋問をモニターしている。
「ミユリ姉様のあの胸の谷間は何?願望?それとも、モニターしてるテリィたんへのアピール?」
「おいおいエアリ、なワケ無いだろ。ミユリさんはナセラの情報を聞き出そうと必死ナンだ」
「テリィたん、鼻血が出てるし…で、そろそろティルの出番だけど」
ミユリさんのプレイ、じゃなかった、尋問をニマニマ見物していたエアリは、急に醒めた顔になる。
「あのね。相手が起きてる間は、潜在意識には潜り込めナイの」
「あら。でも、テリィたんの時は出来たじゃない」
「ソレは、テリィたんは起きてる間も妄想ばかりしてるからよ」
一同、大きくうなずく。何なんだw
「ちょっち待ったぁ!僕は、自白剤を打たれて意識朦朧の半睡眠状態だったンだ。ソコんトコロ、夜露死苦」
「矢沢?紅白歌合戦でも見たの?…とにかく!何でも良いからレイカの潜在意識に潜り込んで。ナセラの情報を掴むまで夢から覚めてはダメょ」
「ROG]
目を瞑るエアリ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
女王様(SM)、じゃなかった、悪の女幹部、コレも違った、ミユリさんのセクシーな尋問は続く。
「ナセラはどうしたの?今、どこ?コレは、元ナチから買った人体用の改造手術台ょ。正直に答えなければ、貴女のボディをゆで卵みたいにスパスパに切り刻んあげる。タップリ時間をかけて1枚ずつね。そして、痛みが完全に感じられるように神経は切らズにスルわ。だ・か・ら、最後まで貴女の意識はハッキリしたママってワケょ。ヲホホ」
「…ギブアップ!私、負けましたわ(回文)。縄をほどいて。ナセラに遭わせてあ・げ・る」
「やはり、貴女は居場所を知ってたのね」
うなずくレイカ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その瞬間、エアリがレイカの潜在意識に潜り込む。
「バッカじゃないの?ナセラはとっくに音波銃で撃ち殺した。いくら寄せて上げても所詮は貧乳。脳の成長がマジ中二並みだわ」
レイカの潜在意識の中で、黒メイドが死体袋にナセラの死体を詰めてチャックを閉めている。
「この死体は、国連本部で"時空侵略"が既に始まっているコトの証拠として、各国の代表団に見せましょう。未明に神田リバー水上空港にSATOの専用飛行艇(シーガルX00)が降りるから、ソレまで空港の女子トイレに運んでおいて」
エアリは、黒メイド達が死体袋にバイヲハザードのステッカーを貼ったトコロで目覚め、カラダをピクンとさせる。取り囲んでいた僕達は、一斉に質問を浴びせる。
「エアリ!何が見えた?ナセラは生きてた?」
「…残念だけど、ナセラは死んだみたい」
「え。」
絶句し気まずい沈黙が流れる。全員にクルリと背を向けるティル。しかし、秒で復活し再び振り返る。
「いいえ。ナセラは死んでないわ。彼女は不死身だモノ。だって、駅ソバでは、いつも富士見ソバを食べてたし」
「富士見ソバを食べると不死身になれるの?一体どーゆーコト?」
「…とにかく!ナセラが言うには、私達には彼女を生き返らせる超能力がアルんですって」
ティルは、意味不なドヤ顔だ。
「どうやって生き返らせるの?」
「もしもの時は、神田リバードックっていうアイヌ人が乙女ロードにいるから、彼女を探して"光の石"をもらえと言われてるわ」
「あ。あの"光る石"のコトだな」
僕がアッサリ逝ってのけると、ティスは驚きの余りツンのめって巨乳を僕にぶつける。マジ快感だ。
「テリィたんは"光の石"を知ってるの?」
「神田リバードッグとはヲタ友だ。"光の石"もゲットしてる」
「テリィたん、マジ今宵抱いて欲しいレベルでリスペクト。じゃ残るはナセラの遺体だけね。在処はわかったんでしょ?」
全員がエアリを振り向く。
「YES。神田リバー水上空港の女子トイレ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"タイムマシンセンター"のバックヤードのロッカーの影では、マリレがラギィに詰め寄っている。
「その司法省の元カノとは何処で落ち合うの?バイパスのドライブイン?ねぇラギィ聞いてる?どこでレイカを引き渡すつもり?」
「未だ決めてないわ」
「ホントは、そんな知り合いなんかいないのでしょ?」
ラギィの顔を覗き込む。
「あのね、マリレ。レイカのコトを突き出せば、貴女達スーパーヒロインのコトも全て話さなきゃならない。一般人の検事なら誰も火の中の石は拾わない。でも、彼女なら大丈夫。だって、テリィたんの元カノだから…とにかく!レイカのような人殺しを秋葉原で野放しにするワケにはいかないの。エージェントのトポラ、虎ノ門精神病院の入院患者達、私の deep throat だったステブ捜査官…彼女は、他にも大勢殺してる。コレは所轄の意地なの…貴女達だって皆殺しにされるハズだったのよ」
マリレは唇を噛む。
第4章 シーズンの終わりに
ステージ上の椅子に縛られ、縄を解こうともがくフィツ捜査官、じゃなかった、SATOのレイカ司令官。
「くっ……」
歯を食いしばり、力を込めた瞬間…ステージの下から、ひょっこりとカレルが顔を出す。ソレでなくても征服願望の強いカレルは椅子に縛られたメイドのレイカを見てさらに舞い上がる。つけ込むレイカ。
「貴方の元推しのミユリがラギィ警部を監禁してるわ」
「え。警官を監禁?ソレは萌えるな」
「ミユリ達が戻る前に、この縄を解いて。私を自由にして」
レイカのかなり無理して出してるアニメヴォイスに急かされて、ホイホイと縄をほどくカレル。
「あら?音波銃を持ってるの?私に貸して」
おとなしく音波銃を渡す。ようやく縄が解けたら、足音が近づく。ミユリさんとマリレがタイムマシンの動画を背に歩いて来る…そして、数歩遅れてラギィ警部。一瞬で場の空気が凍りつく。
「ラギィ?貴女もスーパーヒロインとグルだったのね!人類の裏切り者、処断スル!」
罵るレイカ。素早く隠し持っていた音波銃を構える。ソレに気づいたラギィも銃を抜き叫ぶ。
「危ない!みんな、伏せて」
同時に銃声。互いに外して連射モード!"タイムマシンセンター"の展示物や映像スクリーンが次々と撃ち抜かれ、破片が飛び散り、斜めに銃痕が開く。
「スゲぇコレはサバゲーのプレイだね?」
実弾が飛び交う十字砲火の中、脳天気に立ち上がって、ヘラヘラと笑うカレル。ソレをラギィと見間違えて音波銃を構えるレイカ。引き金に手をかける…
「やめて!」
次の瞬間、マリレが飛び出し、両手を突き出すとセンター中がまばゆい光に包まれ、その"光の衝撃"でレイカはボロ人形のように吹っ飛ばされる。悲鳴とともに画像スクリーンに叩きつけられ、様々な展示物を道連れに、ハデな音を立てて崩れ落ちる…
静寂。
ミユリさんとマリレは一瞬、視線を交わす。ステージの真下で両手を広げバンザイしながら倒れているレイカ。拳銃を構え、慎重に近づくラギィ。レイカの音波銃を遠くへ蹴飛ばしてから右手の脈を取る。
「…死んでる」
その言葉に、全員が息を呑む。そこへ、ミユリさんの叫び声が被さる。カレルを胸に抱いている。
「なんで…なんでマハラジャがココに…!」
「私が撃った弾だわ。しっかりして! 何でこんなコトに…誰か彼を助けて!」
「即死だわ」
息を飲むメイド達。すると、みんなの視線がミユリさんに集まって逝く。一歩、前に出るミユリさん。
「お願い…助けてあげて。お願いよ!」
ミユリさんは、無表情に、しかし、迷いなく、カレルの胸に開いた赤い弾痕に手をかざす。廃人になるコトすら厭わない深い集中。左右から手を添えるエアリ、そして、マリレ…"タイムマシンセンター"全体が、やさしい光に包まれて逝く。
「ぷはー」
突然、カレルが大きく息を吸い、目を開く。風呂上がりのビールを飲んだ的な間の抜けた声。そのシャツから血は消え、残るのは銃弾が開けた穴だけだ。
「俺は死んだのか?1回死んだ俺を、ミユリが助けてくれたのか」
「いいえ、テリィ様ょ。マハラジャが気を失っている間にテリィ様が(イカサマな)ハンドパワーで…」
「そ、そーなのか?マジか?」
カレルは、僕の瞳をのぞき込み告る。
「テリィ。俺がミユリの元カレだったコトとか、今、お前が俺の元カノを推してるとか、ソンなコトはどーでも良い。俺は、一生テリィの味方だ」
重いなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、物陰でメイド2人が深刻顔で話し込む。
「そう自分を責めないで。マリレ、貴女は殺す気はなかったンでしょ?」
「いいえ、私は殺す気だった。あんな奴は死ねば良いと思ってた。そしたら…死んでしまったの。私は歩くデスノートになってしまった」
「うーん。さっきのは正当防衛だったし」
懸命にスーパーヒロインを慰めるスピア。
「私が人を殺したコトに変わりはナイわ。姉様がPMCを立ち上げようとしてる矢先に、私は人を殺し、破壊と殺戮の天使でいられた…オマケにナチスの残党だし」
「でも、貴女は国防軍。プロイセン軍人の血を継ぐ家系でしょ?」
「とにかく!コレで貴女ともサヨナラだわ。私は危険人物。近づけば貴女が危険」
突然の別れ話に慌てるスピア。
「待って。危険なのは今までだって同じでしょ?」
「違うわ。私自身が危険人物になったの。私は自分の超能力を制御出来ズにレイカを殺した。私の近くにいては危険なの。貴女を巻き込みたくない」
「サヨナラなんて言わせない。今まで以上に貴女は私の支えを必要としているくせに」
ほとんど涙目で叫ぶスピア。
「スピア…貴女の支えは要らない。重いし」
「でも、私には貴女が必要なの。ミユリ姉様とテリィたん(呼ぶ順が…略)はあんなに不釣り合いなのに意味不な強い絆で結ばれてる(ヒドいなw)。なのに、マリレは何でこんな風に私のコトを切り捨てるコトが出来るの?どうして?」
「マジ愛してるからよ」
突然の大声に息を飲むスピア。口を半開きにスル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、僕にも危機が訪れる。何とミユリさんが僕に別れ話を…ところがメタルで黒のボディスーツ、そしてナゼだかワカラナイけどスンゴイ巨乳になってるミユリさんが、何か深刻な話を切り出して来るのだが、僕の視線はミユリさんの深い胸の谷間に吸い込まれ出て来れない。視線のブラックホールだ。
「テリィ様。ココから先は私達スーパーヒロインonlyです。長い間、お世話になりました」
「…え?何か逝ったか?僕は僕の意思で逝く。ヲタクには推し(の谷間w)を選ぶ権利がアル。自分は何のために廃人になるのか、その権利は何者にも奪えない。スーパーヒロインも世界線も関係ない。
僕の推しは僕が選ぶ。口出しするな」
「…私を推して。死ぬまで(always)」
ミユリさんは微笑んで巨乳をブルルンと震わす。素晴らしい。が、きっと、コレは夢に違いない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバー水上空港。出発ロビーのコインロッカー前に黒メイドが2人張り付いている。
「ねぇコッチよ。レイカ司令官がお呼び」
「え。コッチね?」
「YES。コッチ」
次の瞬間、エアリとマリレに殴り倒される黒メイド。白メイドvs黒メイドのタッグマッチ。萌え。
「この黒メイドがロッカーキーを持ってるハズ。あったわ…ビンゴ。死体袋よ。中身は黒メイドだけど、多分ナセラ」
「コインロッカーに死体?利用規定に違反してる」
「車を回して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の地下。超古代文明の"科学センター"の遺跡。ココには未完成の"時空トンネル"が眠っている。その冷たい床に、ナセラが変身したと思われる黒メイドの死体が横たわる。
「この黒メイドは…マジで何者なの?」
エアリは"光の石"を手に取って困惑した表情を浮かべる。マリレは黒メイドの死体を見下ろしている。
「私が最後に見た時、ナセラは確かにこの黒メイドの姿だったわ」
メイド達は、全員が円を描くように立ち、それぞれ一つずつ"光る石"を手に取る。次の瞬間、石が一斉にオレンジ色の光を放つ。光は波のように広がって黒メイドの死体から骨格が浮かび上がらせる。続いて血管のような赤い筋が走り、光の明滅の中で何度も不思議な像が揺らぐ。やがて、光が収まると死体だったハズの黒メイドは息を吹き返し、ゆっくりと上半身を起こす。
「…生き還った?」
「ナセラ!貴女が死ぬワケないと思ってたわ」
「ティル、私が死んだら困るでしょ?」
ナセラの首っ玉に飛びつくティル。
「教えてょナセラ。あの丸い物体は、どうやって使うの?」
「ヲタクや腐女子の前では話せないわ」
「おいおい。僕とスピアのコトか?」
ナセラはうなずく。ミユリさんが食い下がる。
「テリィ様は私達のリーダーなの。だから、教えて。あの物体の使い方」
「ダメよ。私に与えられた任務は、スーパーヒロイン4人を守るコトだけだから」
「任務?」
何のために誰が誰に下した任務だょ?
「…アレは通信機でしょ?アレを使えば、誰と通信が出来るの?」
「だ・か・ら、今は未だその時じゃないの」
「ねぇ私達が生まれた世界線と交信出来ルンでしょ?ナセラ、貴女は何故ソレを阻もうとスルの?」
フランス人みたいに両肩をスボめてみせるナセラ。
「作動させれば"連中"に察知されるからょ」
「はい?"連中"って誰よ?」
「未だ見ぬ未知の敵。誰がどの世界線から現れるか分からない」
ミユリさんは1歩前に出て、ナセラを睨む。
「もしかして…貴女も知らないのね?知ってたら、もう使ってたハズだもの。貴女は私達の護衛役ね?だったら、私達のリーダーは誰なの?」
「どうしても使うというのなら、止めはしない。ただし、責任は自分達でとって」
「いいや。ナセラ、貴女には未だ任務があるハズよ。私達が追跡されないようにして」
すると、ナセラは口の端数㎜で苦笑、右手を挙げてバルカンサインを作る。光が走り、次の瞬間、彼女の姿は死んだハズのレイカ司令官に変わっている。
「私が司令官となった今、SATOはもはや脅威ではなくなったわ」
そう言い残して、ニヒルに笑い炭鉱から出て逝くナセラ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんは"丸い物体"を手に取る。
「コレを作動させましょう」
「え。姉様、どうやって作動させるの?」
「…意識を集中させるだけで良くない?さっきみたいに」
全員が"丸い物体"に手を置き、目を閉じる。精神ヴォルテージが高まり、次の瞬間、渦巻く光が天へと伸びて逝く。みんなが目を開くと、炭鉱に2.5本の光が降り注ぎ、その中から1人のメイド像が現れる。
「この動画を見ているというコトは…貴女達は無事なのですね」
彼女はメイドの姿をしている。
「私は、貴女達が受け入れやすいように、貴女達の文明に即した姿で現れています。貴女達は、超古代太陽系で起きた"3つの太陽の戦い"で死に絶え、滅亡した文明のクローンなのです。私達のDNAと人類のDNAが融合し、その肉体とメイド服を得たのです」
彼女は、ミユリさんに微笑みかける。
「ミユーリ。貴女は神に愛された王でした」
全員の目から涙がこぼれる。
「…この人、もしかして、私達のマジお母さん?」
「しかし"敵"もまた地球に降り立ちました。自分達の超能力を信じて戦いなさい。いつか、貴女達を再び抱きしめる日を信じ、私達は深い眠りにつきます。愛する子供達に神田明神の栄光あれ」
光と共に動画は消える。ティルが口を開く。
「コレが私達の世界線って奴なの?」
「こんな使命があったなんて」
「何が起ころうと4人で立ち向かいましょう」
ミユリさんは、静かに息を吸う。僕の前に立つ。
「さよなら、テリィ様」
いきなりキス。だが、次の瞬間、冷めた目で僕を見上げる。僕は…炭鉱を後にスル。追いかけようとするミユリさんをエアリとマリレが引き止める。
「見送ってあげて」
僕は、1度も振り返るコトなく、足早に炭鉱の跡地を立ち去る。残された4人のメイドは、冬の晴れた青空の下、立ち尽くしている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
発信音は、時空を貫き、途切れるコトなく続いている。世界の彼方此方で光が灯って逝く。コーヒー農園で、灯台で、タワーマンションで…そして、太陽の裏側に潜む"死の艦隊"で。
コレは、終わりの始まりだ。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"主人公は王家の末裔"をテーマに、シーズン最終話に相応しい盛り上がりを画策してみました。
さらに、今回後半よりAI活用に着手、思わぬ感情表現など満載のシーズン最終話となりました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、ますますハイテク感ある駅前となった川崎で、お正月明けの2026.1.4脱稿となりました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




