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96 上手くいって良かった、と思う

 話し合いから、その日や翌日ではなく二日後にグレッサア王国の王都攻めを開始したのには、もちろん理由がある。


 その日は、集まった時はまだ日は高かったが、話し合いが終わった頃には日が落ちていたので、さすがに闇夜で戦う必要はなしと、王都攻めはしなかった。どこかが抜け駆けして、ということを考えはしたが、そんなことはなかった。いや、まあ、もし、最後の最後で出し抜いて美味しいとこ取りなんてしようものなら、他の三国が黙っていないだろうし。


 それでも、そういうことをするような国がなくて良かった。


 翌日は、所謂降伏勧告を出したからだ。王都を囲んでいるのは四か国の連合と言ってもいい大軍隊で、彼我の差は歴然。未だ王都に残っている民のため、騎士や兵士を無駄死にさせる必要はなく、武装解除して無血開城を願う。また、その際はそちら側の命は王族も保証する。これは四か国の総意である。と勧告してみたが、その返答は矢と魔法の雨だった。降伏勧告を告げた人たちは直ぐに戻ってきたので無事。こうなると思っていたからだ。


 グレッサア王国は徹底抗戦を選択した。まあ、これで降伏するくらいなら、もうとっくにしているはずだから、それはわかってはいたことである。だから、これは念のための最後の確認というだけだ。もしかしたら……なんてこともあったかもしれないのだから。


 それと、この矢と魔法の雨で、王都の壁の上の魔法陣が何かわかった。どうやら、魔法陣の上に立って魔法を放つと、多少ではあるがその魔法効果を増幅しているようである。それで、魔法を雨のように降らすことができたようだ。その時、王都の上空で確認していたので間違いない。上空に居たのは、降伏勧告を告げる人たちを守るためである。もしもの時は介入するつもりだったが、そんなことにならなかった。


 ちなみに、魔法効果の増幅量を多少としたのは、それでも「四魔(しま)」の魔法の方が上だと思ったからである。


 ともかく、魔法陣の効果を確認することができて良かった。どうやら攻撃用のようだ。これで壁自体に何かしらの効果を及ぼすようなものだったなら……もしかしたら、俺がやろうとしたことは失敗していたかもしれない。


 そんなこんなで、開始が二日後になったのである。


 セブナナン王国がグレッサア王国の王都に対する陣形を取ったあと、マグレトさんが戦意を高めるために魔法で軍全体に声を飛ばす。


「セブナナン王国軍よ! 脅威であった『四魔(しま)』はもう居ない! 周囲を見ろ! 我がセブナナン王国だけではなく、ターキスーノ海洋国、シガヒ森国(しんこく)、サスゥ獣国(じゅうこく)の三か国が、我らに呼応して共に戦ってくれる! そして、グレッサア王国の王都はもう目の前だ! 遂にこの時が来た! 来たのだ! グレッサア王国との諍いを終わらせる、この時が! もうここまで来て、恐れを抱いている者は居ないな!」


「「「おう!」」」


「我々の手で終わらせるぞ!」


「「「おおう!」」」


「平和を勝ち取るのだ!」


「「「おおおおお!」」」


 かなり戦意が高まっている。


 その様子を見てから、俺はグレッサア王国の王都の上空へと向かい、他の国の様子を確認。どこもマグレトさんと同じで、代表者が言葉で戦意を高まらせている。


 対して、グレッサア王国の王都の方は……一応要所に兵を集めて防備を固めているが、ビビっているようにも見えた。……でも、今更ビビるか? 包囲されていたのだから、こちらの姿は見えていた訳だし、本当に今更だ。そんなことある訳ない。……ないよな? でも、そうなると、ビビるのは別の理由か? ……あれかな? 四方からの大声が思っていた以上の大迫力で、それに驚いているとか?


 そんなことを考えている間に、マグレトさんが王都攻め開始の号令を出した。それに合わせて、他の国の代表者も号令を出す。四か国の軍が一斉に動き出した。少しずつ前に進み、包囲を縮めていく。グレッサア王国の方は、いつでも矢と魔法の雨を降らせられるように身構えた。


 どちらかも大きな緊張感が伝わってくる。


 そこで、俺が動く。


 王都の壁に魔法的処理がないのなら、万に一つも起こらない……はず。


 しっかりと言葉にして魔法を使う。


「『沈め』」


 魔法を発動。属性的には水と土の複合かな。王都の壁が建っている部分の地面を沼のような状態にして、底なし沼に嵌まったようにゆっくりと沈めていく。門ごと。すべてを。一度に。発動した時より継続する方が、魔力消費がえぐい。でも、どうにかなりそう。ずぶずぶずぶずぶ、と王都の壁が沈んでいく。


 当初、王都の壁の上に居るグレッサア王国軍は気付いていなかったのだが、壁下が騒がしくて確認したり、下がっていく視界に、王都の壁が沈んでいっていることに気付いた。そこからは阿鼻叫喚というか、誰もが壁から飛び降りたり、離れたりしていく。


 ……ほどなくして、王都の壁は完全に地中へと埋まり、グレッサア王国の王都は丸裸となった。

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