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95 見たままを描くのも難しいよね

 勇気を出して、聞いていませんでした、と伝えて、改めて何ができるかを確認してきたのかを教えてください、と尋ねる。マグレトさんは苦笑を浮かべ、他の代表者たち――女性提督シーミゥさんは、さすが「大罪持ち」は大物だと笑い出し、守樹長ユグシアさんはマグレトさんと同じく苦笑を浮かべ、総長ライレンさんは、本当にこいつに任せて大丈夫なのか? という視線をマグレトさんに向けた。すいません。こんなんで。マニカさんは無反応。俺と同じく聞いていなかったと思われるが、そもそも俺に誰が誰を説明していたから仕方ない。


 そんな俺にマグレトさんが教えてくれる。


 ………………。

 ………………。

 なるほど。グレッサア王国の王都の門は四方にある。元々王都の門ということで頑丈ではあるが、今は要塞化が進んだことでさらに頑丈になった上に、突破するのが難しいくらいに厳重になっていて、開けるためには多くの犠牲を払う必要があるくらいだそうだ。なので、できるだけ被害を少なくして、王都の門を開けたいが……どうしようもない。


 そこで、俺に白羽の矢が立ったというか、どうにかできますか? と確認してきたのである。それに俺は「はい」と答えた、という訳か。


 うん……できますけど、何か?


 今その方法は思い付かない。何も思い付いてもいない。でも、感覚的にはどうにかなるんじゃないかな? である。だから、大丈夫。俺の感覚は確かだ。……確かだよね? 自分の体を見ながら自分に問う。何も答えてくれない。でも、そういう感覚はしている。だから、きっと大丈夫。


「改めて、任せて」


 親指を立てて、了承の返事をした。


 そのあとの会議というか、グレッサア王国の王都内をどう攻略していくかの話し合いを行うのだが、俺はあまり口出ししなかった。ここで俺が出しゃばって一人で色々とやってしまうのは違うと思うからだ。以前、マグレトさんが言っていたと思うが、今後のために協力してグレッサア王国の王都を落とすというのが大事だと、俺も思っているからである。だから、王都の門をどうこうしたあとのことはなるべく関わらないようにしようと思う。


 まあ、それだと、そのあとは暇なので、様子見しつつ、危ない時は手を出そうとは思っているが。居ないとは思うが、「四魔(しま)」みたいなのが他にも居た場合、大変だと思うから。


 そう考えている間に、話し合いの中でグレッサア王国の王都の要塞化がどこまで進んでいるのか、その確認ができないのはやはり不利だな、という意見があった。それを聞いて思い付くことがあり、これくらいならいいよね? とマグレトさんに頼んで紙とペンを用意してもらい、受け取ると一旦外に出て飛翔する。


 グレッサア王国の王都の上空で待機して、上から丸見え状態でスケッチ。グレッサア王国の王都に居る人たちは……俺を指差して「あれはなんだ! 鳥だ! 飛行機だ! いや――」という流れになっていないので、気付いていなさそう。


 ちなみに俺の絵は……自画自賛ではないが、悪くないんじゃないかな? と思う。でも、絵描きになったところで売れるとは思えない。この道で食べていくのは止めておこう。


 しかし、思ったよりも要塞化は進んでいるようだ。兵士が慌ただしく動いているのが見える中、王都の壁の上や城壁の上にいくつかある要所には、矢や槍などがかなりの数が配備されているし、何やら魔法陣が描かれている場所もある。ただ、魔法陣が描かれている割には、王都の壁や城壁から魔法的な何かは感じない。今だけかな? 発動すれば何か起こるのかもしれないが……う~む………………。


 考えながらも手を止めずに描き続け、これで大丈夫だと判断したところで描き終え、戻る。話し合いが行われているテントに戻り、描いたものを見せた。「おお」とか「へえ~」と感心の声を頂きました。


 あとのことは任せる――が、その前にマグレトさんに質問。


「王都の壁って残した方がいい? あそこって、占領したあと使い道ある?」


「できれば残して欲しい。今後は、この四か国が交わる場として、交流や行き来が頻発して発展していくことになると思うからだ。修繕もできるが、それまで防衛力が低くなるという事態は避けたい」


「なるほど」


 そういう予定があるのなら……まあ、できるだけ破壊はしない方がいいか。一応、スケッチしている時に思い付いたことがある。でも、失敗するかもしれない。そうなった時が恥ずかしいので黙っていよう。駄目なら最悪壊すまで。その時の足りない防衛力は、寄り道延長ということで。


 そのあと、話し合いが終わると、各国は戦闘準備を始めて……二日後。


 グレッサア王国の王都攻めが始まった。

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