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94 一気に伝えられても困るよね。すみません。

 周辺各国の代表者たちと、挨拶を兼ねた会議が始まる。うん。俺には関係ないというか、グレッサア王国の王都攻めは俺ではなく、セブナナン王国を含めた各軍でなければならない。そういう話だから。なので、俺は大人しくしていようと思う。口を出すつもりはない。まあ、求められれば援護くらいは、という感じだ。


 司会進行はセブナナン王国軍の一人で、挨拶を兼ねた紹介から始められた。


 まずはセブナナン王国から。マグレトさん。マニカさん。後方の武官や文官たち。それと、俺も。他の「大罪持ち」に確認してもらっていないが、セブナナン王国は俺が「怠惰」の「大罪持ち」であると確信していると紹介された。周辺各国代表者一行からの視線が俺に向けられる。


 ……興味深そうなのが大半で、中には好戦的な感じのもあった。好戦的なのはちょっと……。でも、疑いの視線はなかった。セブナナン王国軍がここまで迫った経緯についてはある程度聞いているだろうし、それが可能なのは「大罪持ち」しか居ないからか、あるいはセブナナン王国が認めているのなら、もしくはこういう場でそういう視線を向けないようにしているだけか。……できれば最初の考えで合っていて欲しいものだ。こういうこともすんなりいくように、他の「大罪持ち」と早く会いたいものである。


 そう思っている間に周辺各国の代表者たちの紹介があって、気が付けば終わっていた。


 ………………。

 ………………。

 まっずい。まったく聞いていなかった。いや、聞こえてはいただろうが、頭の中に入っていない。どうしよう。……マグレトさん……は、駄目だ。


「まずはこうして呼びかけに応えて集まってくれたことを嬉しく思う」


 既に今までに調べた情報を開示して、グレッサア王国の王都をどう攻めるか、会議を始めていた。そのために来たのだから、周辺各国の代表者たちもスムーズに参加している。う~ん。これは邪魔できない。今更、えっと、誰が誰ですか? とは言えない。そういう空気ではなくなってしまった。


 なので、申し訳ないな、と思いつつ、隣のマニカさんにこそっと尋ねて教えてもらう。


 とりあえず、セブナナン王国よりもグレッサア王国を中心に置いての位置取りの方がわかりやすいかな。


 まず、セブナナン王国は西から攻めたから……時計回りでいこう。


     ―――


 北から攻めてきたのは、「ターキスーノ海洋国」。その名の通り海に接していて、海業が盛んな国。特に観光というか、リゾート地の一つで有名らしい。また、当たり前だが海軍が存在していて、海の上では相当強いそうだ。


「それは違うな。陸でも強いぞ」


 その国の代表者に訂正を入れられた。聞こえていたようだ。とやかく言われないのは、俺が「大罪持ち」だからだろうか?


 その代表者。


 三十代くらいの女性。濃い青色の長髪に、鋭い目付きが特徴的な美人顔で、軍服のような衣服を着ている。ただ、頭にある船長帽のような帽子は斜めに被り、軍服の胸元は開けられているので豊満な胸がチラリと見えて、腰からサーベルような剣を提げているので、どちらかと言えば海賊船の女船長に見える。


 そんな代表者の名は「シーミゥ」。有名らしい海軍の提督だそうだ。


 グレッサア王国が攻めた理由は、海を手にするためらしい。


     ―――


 次に東部から攻めてきたのは、「シガヒ森国(しんこく)」。俺が居た森ほどではないが、かなり広い森のすべてが国土となっている国。この森であられる恵みの中には神聖な力が宿っているものもあって、それを求めて訪れる人も居るそうだ。


 まあ、俺が居た森は恵みを手にするのは難しいし、神聖とは真逆な行為が頻発しているから、こっちとは全然違うな。


「……」


 代表者から笑みを向けられた。俺は平気というかなんとも思わなかったが、今のでドキッとする人の方が多いだろう。


 何しろ、その代表者。エルフである。


 実年齢はわからないが、見た目で言えば、二十代くらいの男性。長い金髪に長い耳、碧眼が目立つ、芸術品のように整った顔立ちで、白衣のローブを身に纏っている。多分、細見。入って来た時は長い杖を持っていたが、今は自身の後ろに控えている別のエルフに持たせている。


 そんな代表者の名は「ユグシア」。本来はもっと長い名らしいが、こっちの方が手軽だからと自ら告げてきた。「守樹長(しゅじゅちょう)」という肩書きがあるそうだ。


 グレッサア王国が攻めた理由は、森の恵みを狙ってということだが、他にもエルフで人身売買行為をするため、といくつか理由があるそうだ。


     ―――


 最後は、南部から攻めてきたのは、「サスゥ獣国(じゅうこく)」。国土は広く、その分だけ、他種族が暮らしているそうで、人もそこに含まれている。自然の豊かさと工芸品が有名ではあるが、それ以上に強兵であることの方が知れ渡っているそうだ。


「……」


 だからだろうか。俺に好戦的な視線を向けてきたのはここだ。「大罪持ち」はどんなもんだ? と戦ってみたいのかもしれない。


 その代表者は、所謂獣人。


 判断が難しいが、四十……いや、三十代かな、な男性。いや、オス? ともかく、金の鬣に丸い耳、顔はライオンそのもの、茶褐色の体毛に覆われた体は人型だが、手先足先は獣のようで上半身は裸に、ゆったりとしたズボンを履いている。あと、胸毛がすごい。もっふもふ。


 そんな代表者の名は「ライレン」。サスゥ獣国軍・総長という肩書きだそうだ。


 グレッサア王国が攻めた理由は、支配して強兵を手にするため――つまり、自国の戦力をより強くするためらしい。


     ―――


 そんな感じで教えてもらった。マニカさんに、ありがとう、と小声で伝える。多分、覚えられた、と思う。不安に思っていると、不意にマグレトさんから声をかけられる。


「――ということで、スロース殿、どうにかできるか?」


「はい?」


「できるのか! なら、被害を大きくしないためにも、どうにかしてくれないだろうか?」


「……はい?」


 いや、最初の「はい」は肯定した訳では……えっと……。


 ………………。

 ………………。


 勇気を出して、何をお願いされたのかを聞いた。

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