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7 一人だと無意識で口から出てしまうもの

 洞窟を見つけた。入口はかなり大きいが、陽の光は奥まで照らされておらず、奥の暗闇から先はどうなっているのかわからない。まあ、広かろうが狭かろうが、どちらにしても推定魔物が居る可能性はある。もしくは冬眠の熊……は六本腕の巨大熊も外に居たし、日中は暖かいから大丈夫だと思う。絶対とは言えないけれど。でも、他に行ける場所はない。いや、別に洞窟に行かなくても森の中を進めばいいだけなのだが……迷子はさらに迷子になるだけな気がする。


 ………………。

 ………………。

 良し。行くか。洞窟へ。正直、洞窟に入るとか、ちょっとワクワクしている。


     ―――


 洞窟の入口から中の様子を窺う。まあ、少し先は暗闇が広がっているので窺うまでもないかもしれないが。あと、感覚的に何かしらの気配の類はない。これ、洞窟の中に入ったとして……光源がないと何もわからないな。本当に少し先は暗闇だ。


 こういう時、松明の一つでもあれば少しは安心なのだが……落ちている枝を見つけて、その先に魔法で火を灯せば……いや、それだと焚き火の火と変わらないから、真っ裸への火花による火傷は怖い。それに、松明はそこらの枝ではなく、油分の多い木のものでないといけなかったような……それか布とかを針金で巻いてとかだったような………………どちらも手元にない。詰んだ。


 ……待てよ。詰んでないかもしれない。そうだ。魔法だ。魔法の火を出し続ければ……いや、空気が循環しているかどうか怪しい場所で火を灯し続けるのは危ないな。却下。違う。何も火でなくてもいいのだ。要は明るくなればいいのである。


「……光あれ」


 視界が真っ白になった。それ以外は何も見えない。失敗したのがわかる。多分、暗闇を照らすという曖昧なイメージによる結果だと思う。もう少し抑えた……そう、懐中電灯とか部屋の電灯くらいで十分だったのだ――と考えつつ、本能で体が勝手に動く。両目を押さえ――。


「……目が……目が……」


 様式美を行った。


 ………………少しの間大人しくして視界が戻るのを待ってから、再度「光あれ」と魔法を使う。今度は成功した。俺の頭上に周囲を照らす光る輪っかが現れる。これは……32形くらいか。というか、頭上に輪っかって天使か? と言いたくなる。まあ、背中に翼はないけれど。でも、他に誰かが見ている訳でもなく、これで暗闇を照らせるのだから、いいか。気にしないことにした。洞窟の中へと入る。


     ―――


 ………………。

 ………………。

 うん。狭かった。というか、直ぐに曲がり角があって、曲がると直ぐに行き止まり。うん。ワクワクを返せ、と思ったり、思わなかったり……いや、思った。正直思った。仕方ない。一応、行き止まりの地面に枯れた草が敷き詰められているので、ここは寝床だと思われる。サイズ的にはでかい何かのだろう。……何にしてもここの主は今居ないようので良かった。それに、それ以外の発見はあった。ここに来たのは無駄ではなかったのだ。


 何を発見したかと言えば、白骨化した人たちである。まともな状態のものは……ない。ところどころ欠けているものばかり。となると、ここに逃げ込んだというよりは、ここの主にやられて……だろうか。ただ、白骨化するまでの時間は環境にもよるが、大体夏だと10日くらい、冬だと数ヶ月くらいだとなんとなく知識が残っているが、腐臭は一切しないし、それよりも長くここにあったのではないかと思われる。まあ、そこを考えても仕方ない。


 重要なのは、その白骨化した人たちが着ている服だ。そう、服。ただ、パッと見た限りだとかなりズタボロなものばかりで、着られるものがあるかどうか怪しい。あと、剣に短剣、兜や鎧といった武具の類もあるが、どれも錆びて朽ちたものばかりで使えそうになかった。


 まずは確認だ。ごめんなさい、勘弁してください、と白骨化した人たちに向けて手を合わせて軽く頭を下げてから、いつここの主が戻ってくるかわからないが、それでもこれ以上傷付けることが忍びなくて、丁寧に服だけ取っていく。武具の類は錆を落とせると思えなかったので手に取るのを止めた。


 服は朽ちて着られないものばかりだったが……どうにか黒シャツ、黒ズボン、ブーツの一式は揃う。下着はなかった。いや、違う。正確にはあるにはある。女性用と思われるのが……。(ブラ)ではなく(パンツ)の方が。……いや、うん。さすがに無理。そもそもそれで隠し切れないし、誰も見ていないからといって着用はちょっと……何より変態過ぎる。できて頭装備………………ないな。ないない。


 というか、これが女性用下着であると直ぐにわかるものって……おかしくない? ここは異世界だ。一応、推測だけど。まあ、武具があるから間違いはないと思うが。そうなると、よくあるのは文明レベル的には中世とかその辺りが妥当だと思うのだが……違うのか? もしかして、思っている以上に文明レベルは高い? それとも服とかだけ進んでいる、だろうか?


 う~ん、と悩むが、そもそも女性用下着を見ながら悩む姿は、誰が見ていなくてもちょっと……ねえ……と思ったのと、この場では答えは出ないことに気付いて考えることを止めた。

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