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57 止められない時はあるよね

 上空に出現した超巨大火球を見て思ったことは、三つ。


 でっか。まぶし。あっつ。である。


 でっかいのは見たまんま。眩しいのは光源となっているから。あっついのは……いや、そこまで暑くはないか。距離があるからな。なんか暑いな、と感じる程度だ。


 ともかく、それを見たからといって、恐怖とか危機感といったものは一切浮かばなかった。


 だから、特に感想はないというか、三つのことしか思い浮かばなかったので、他の感想を口にするのが難しい。なんか言った方がいいかな? と考えていると、俺が黙ったのは恐怖したからと思ったのだろう。炎バーンが勝ち確高笑いを上げる。


「ハハハ! ハハハハハ! アーハッハッハッ! 今さら後悔しても遅い! 遅いのですよ! ここであなたは死ぬ! 私に燃やし殺されるのです! ですが、悲嘆に暮れなくてもいいのですよ! 何故なら、あなたの死によって、歴史は、これからの未来は変わるのです! 『四魔(しま)』が中心となるのです! 『大罪持ち』ではありません! そのことを、燃えカスとなって知りなさい!」


 炎バーンが上げた杖を振り下ろした。その動きに合わせて、空中の超巨大火球が落ちてくる。でも、落ちたとして、範囲的に炎バーンやグレッサア王国兵が巻き込まれると思うのだが、それはいいのだろうか? まあ、何かしらの対抗策があるのだろう。


「『熱と痛み 遮る 対炎防御陣アンチファイアシールド』」


 炎バーンが魔法を発動すると、自身とグレッサア王国兵たちを内に容れた、亀の甲羅模様の半球体が現れる。詠唱通りなら、あれで超巨大火球が落ちても炎バーンたちは大丈夫ということか。でも、それ、別に必要にはならないよ。俺は超巨大火球を落とすつもりはないから。


 ただ、どうしたものか。いや、やろうと思えば、同質量の超巨大水球でも作ってぶつけることもできるが、それをやると蒸発後の白煙がすごいことになりそうだ。なら、凍らせてから砕くか? いや、それをやると氷の礫が町に落ちて大変なことになる。……面倒だな。魔力で覆って一気に押し潰すか。それが簡単でいいか。


 なんてことを考えている内に、なんか暑くなってきた。それだけ超巨大火球が迫ってきているということだ。思ったよりも速度がある。さっさと潰そう。魔力を溜めながら、イメージをより具体的にするために手のひらを超巨大火球に向けて、圧縮と思いながら手を握り――そうになったところで、不意に鼻がムズムズする。本当に不意のヤツ。あっ、これは止められないな、てわかるヤツ。


「はくしょん!」


 溜めた魔力が放たれた感覚があった。手のひらを向けていたからか、全方位ではなく指向性で。放たれた魔力は衝撃波となって超巨大火球にぶつかり、落下を止める。


 あっ、止まらない。


「はくしょん!」


 また放出された。今度は超巨大火球を少し押し返す。


 あっ、もう一回。


「はっくしょん!」


 大きいのが出て、スッキリ。ついでに溜めた魔力もすべてが出て、なんかスッキリ。ただ、放たれた魔力の勢いはかなり強かったようで、超巨大火球は勢い良くどこかに飛んでいってしまった。ずっ、と鼻をすすりながら、超巨大火球が火事など起こらない、なんでもないところに落ちたらいいな、と思う。


     ―――


 スロースが願った通り、超巨大火球はひゅーんと勢い良く飛んでいき、運良く特に何もない荒野に落ちることになる。本当になんでもないところ。街道が通っているくらいだ。時間も時間で、誰も居ない。


 ――普段なら。


 現在は、セブナナン王国のとある貴族によって手引きされて再び秘密裏に侵攻しているグレッサア王国からの一大隊が夜営をしていた。そこに超巨大火球が落ちる。それで大隊長や中隊長といった上官が軒並み亡くなり、パニックに陥って、この一大隊はなんの成果も挙げられずに撤退することになる。


 のちに、この時生き残ったグレッサア王国兵の間で「裁きの火ジャッジメント・ファイア」と呼ばれるようになる。


     ―――


 ……う~ん。まあ、大丈夫だろ。自然の方が圧倒的に多そうだし、そう簡単に人が居るところに落ちたりはしない……はず。そう信じよう。それよりも今は、炎バーンの方だ。


 炎バーンは超巨大火球が飛んでいった方向をジッと見ていて動かない。放心状態になっていた。グレッサア王国兵たちの方が、え? え? と超巨大火球が飛んでいった方向と炎バーンを交互に見て動きがある。


 しかし、超巨大火球が飛んでいった程度で放心するとは……「四魔(しま)」ってのも大したことないな。それとも、炎バーンだけだろうか? まあ、何にしても指標にはならなさそうだ。もう終わらそうかな、と思っていると――。


「……あれぇ? どういうことぉ?」


 そんな声が炎バーンから漏れ聞こえた。


 なんというか、これは駄目だろう。まともな戦闘にはなっていないが戦闘中であるのに、敵を見ずに隙を晒している。それほどショックだったのだろうか? でも、超巨大火球をどこかに飛ばしただけなのに。


 ……あっ、もしかして、炎バーンにとって超巨大火球は、必殺技。決め技。最強技。あるいはゲージMAX状態で出せる特殊技、HPゲージ残り二割で出せるといった逆転技といった、そういう類だったのだろうか?


 それがくしゃみと同時に飛ばされたのなら、まあ……でも、これでは指標にはならない。さっさと倒すか。うん。

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