46 人や場合によっては不審者に見られてしまう恰好もある
部下の女性が目を大きく見開いたあと、訝しげな感じで俺を見てくる。
「……本物、ですか?」
「私たちはそう判断して同行してもらっています。力も見せて頂きました。王都に戻り次第、確認はしますが、まず間違いありません」
マニカさんが断言。メリッサさんたちも同意するように頷く。ただ、当の本人である俺は内心で首を傾げる。まだ確定ではないけどね。まあ、ラオルがそうだと断定しているけれど。
ともかく、俺のことは一旦横に置いて、まずは他の部下の人たちと合流することになった。
―――
無事に合流した。総勢二十人。全員女性。男性居ないんですか? と尋ねてメリッサさんが理由を教えてくれて納得した。その二十人の半分くらいは俺に対して当初懐疑的な視線を向けてきた。別に気にしていない。マニカさんが直ぐに取り持ったというのもあるが、そもそも俺に自覚がないのだから、それが態度に出ていたのだろう。懐疑的に見られても仕方ない。
服装も普通だし、マントくらいはどうにか用意するべきだったか? もしくは顔を隠せるフード付きローブだろうか? どこかの銀河系の騎士に見えて、外見的説得力を獲得できたかもしれない。まあ、先に怪しさの方が満点になりそうだが。
そんなことを考えている間に、マニカさんたちの話し合いは行われていた。ひそひそ声ではなかったので聞こえていたのだが、いい案が浮かんでいない。ただ、合流する前に視察できるところは終わっていて、ある程度の相手側の規模予測は立っていた。
相手側――グレッサア王国の兵は町の門の前に陣取って出入りをできなくしていて、見えている範囲だと数百人規模。あと、町の中にどれくらいの数が居るかは不明。ただ、喧騒のようなものは聞こえてこないので、町の中に居る数はそこまで多くはないと予想。
町の兵や冒険者の方が多いはずだが、反抗している雰囲気はない。話が事前に通っていたか、あるいは町長や主要な住民が人質になっていて、反抗できていない可能性がある。領主は別の町に家があるので、ここには居ない。
相手側の指揮官はおそらく町の中。
ここまで派手にやっているのでセブナナン王国側が察知して兵を出すのは時間の問題だが、そうなればどれだけの被害を出して撤退するか不明。最悪、町が潰れる可能性もある。
大体そんなところ。凡そや可能性ばかりになってしまうのは、門の前に陣取られているのでバレずに中に入って出ることができず、それ以上の情報収集ができずに町の中を確認できていないからである。
なるほど。よくわかった。つまり、現状だと相手側が要求している俺かマニカさんが出ていかないと、町に大きな被害が出るということか。
そんな状況でもどうにか起死回生の一手がないかと、マニカさんたちはまだ話し合っている。
そろそろ、日が暮れそうだ。
………………。
………………。
俺はマニカさんたちが頑張って今日中に町に向かうとした時、密かに思っていたのだ。ああ、木の板の上ではなく、ベッドの上で毛布でもなんでも包まって眠れる、と。文化的な生活や魔道具の勉強だってしたかったのに……それなのに……なんでその邪魔をするかな。
ムカムカしてきた。良し。あいつら潰そう。多分できる。感覚的に脅威とはちっとも思わない。数百人規模であったとしても。数千人規模でも。数万人規模でも。いや、数万だと面倒か。ともかく、そんな感じなので、作戦とかいいんじゃないかな? 少年〇破――じゃなかった。正面突破でもいいと思う。
……いや、駄目か。門の前に陣取っている相手側ならともかく、町の中に居るのがどこに居るのかわからない。初見なので町の中で迷う可能性もある。正面突破して騒ぎになり、それで町の人に何かあるというのも……面倒だ。
なら、バレずに入れれば……まあ、できるけれど、それで問題解決には至っていな………………いや、待てよ。俺一人なら問題解決には至らないが、マニカさんたちを巻き込めばいいのではないだろうか? 少なくとも、俺より町の中に詳しいのは確かだ。
……そうしよう。マニカさんたちは未だに打開策が浮かんでいないようなので、俺に協力して欲しいとお願いする。
「マニカさん。マニカさん。もし、バレずに町の中に入れれば、どうにかできる?」
「それは……はい。今ここで話し合いを続けるより、色々と情報を精査もできて、取れる手段が格段に増えますので、それこそ一気に事態を逆転――いえ、終息させることも可能だと思います。それくらい今は情報が何も足りていませんから……え! そう尋ねてくるということは、どうにかできるのですか?」
「うん。できるよ」
笑みを浮かべて答える。勝手にやってもいいけれど、一応マニカさんから許可をもらい、早速行動に移すことにした。




