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41 その時が来たのかもしれない

 実際に魔法で雨のように雷を降らせてみると、女性たちは固まってしまったので、正気に戻るまで待ってみる。いや、声をかければいいのか。


「あの、大丈夫ですか?」


 返事はない。ただ突っ立っているだけのようだ。


 声をかけた程度では正気に戻らないようだ。なら、もう打つ手はない。ここで迂闊に肩を揺さ振ったりと迂闊に触れようものなら、後々セクハラで訴えられる可能性もある。何しろ、初対面だ。まあ、水色の髪の女性のドッグタグみたいなのは見せてもらったが、それだけ。他の四人についてはまったく知らない。相手がどのような行動を取ってくるかわからない以上、ここで迂闊な行動は取らない方がいいだろう。大人しく待つのが得策だ。


 ………………。

 ………………。

 少し待ってみたが、女性たちはまだ正気を取り戻していない。というか、固まったままなのだが……もしかして、これは時間停止モノなのでは? 知らず知らずのうちに、時間停止の魔法を使っていたのだろうか? もしや、これが俺の願望なのでは?


 なんてことを考えていると、女性たちがいきなり片膝をついた。


「「「「「失礼しました! 無事確認ができました!」」」」」


 謝罪の言葉でいいのかな? なんか雰囲気的にはそんな感じ。謝罪を求めるほど、特に気にしていないけれど。


「僅かでも疑いを持ったこと、失礼しました。目の前であのような魔法を見せられれば信じる他ありません。また、あれほどの魔法を無詠唱で行い、さらに息切れの一つもない。もしや、あなたさまは『大罪持ち』ではありませんか?」


 続けて、水色の髪の女性がそう尋ねてくる。えっと、何持ち? たいざい? た、いざい? ……もしかして、「大罪」? もしそうなら……やっぱり損害賠償請求ですか?


 戦々恐々とするが、誤解ということもある。それに、「大罪持ち」と言われても何を持っているのかわからない。実際は違う可能性もある。なので、水色の髪の女性にさっぱりわからないので詳しく教えて欲しいとお願いしてみた。


「もちろんです。他の『大罪持ち』の方々から、もし『大罪持ち』を見つければ、まずは手厚く保護して欲しいと広く伝えられていますので」


 広く伝えられているってことは、それだけ影響力があるってことでもあるし、実際に目の前の女性たちはそれに従っているようだ。「大罪持ち」の方々とやらは、随分と凄そうだ。


 そうして、水色の髪の女性から詳しく聞く。


 話しによると、「大罪持ち」とは七つの大罪の内のどれかを持っている人物のことを指している言葉だそうだ。今その「大罪持ち」は六人居る。「傲慢」。「強欲」。「色欲」。「憤怒」。「暴食」。「嫉妬」。の計六人。誰もがこの世界に多大なる影響を与えていて、大罪の名と共にその存在が広く認知されている。そして、その六人は残る一人――「怠惰」の「大罪持ち」を捜していて、様々な国にその協力を要請し、様々な国がそれに協力している。「大罪持ち」はそれだけの影響力がある、ということだ。


 また、「大罪持ち」にそれだけの影響力があるため、これまでに自分がその「大罪持ち」だと名乗る者が何度も出て来たそうだが、すべて偽者であると判断されて、場合によってはそれ相応の報いを受けたらしい。それはつまり、俺が違っていたら、それ相応の報いがあるのでは? と思ったのだが、「大罪持ち」はいくつかの判断基準があるそうだ。


 まず一つ。魔法が全属性使える。


 属性は全部で七つ。火水風土光闇無。基本的に人が使える魔法の属性は一つか二つだそうだが、「大罪持ち」はそのすべてが使えて、複合して使うこともできるそうだ。雷もその複合に分類されるらしい。なるほど。確かに、俺はすべて使える。


 それと、膨大な魔力を持っている。


 世界にはそれなりの魔力持ちも居るには居るが、膨大となるとそうは居ないらしい。さらに、先ほどの雷の魔法を放ったあとに息切れ一つせずに普通にしているのは、基本的にはあり得ないそうだ。まあ、確かに、まだまだいくらでも魔法が使えそうだが……。


 あとは、何かしらに特化している。


 現在判明している六人も、それぞれ何かに特化しているそうだ。そう言われても、俺が何かに特化していると問われれば、首を傾げるしかない。そう思えるものがないからだ。強いて言うなら……生存本能がちょっと強いくらいか? ……今後に期待しよう。


 あとは細々としたのもあるが、基本はその三つだそうだ。なるほど。三つ目は首を傾げるが、一つ目と二つ目は確かに該当している。もしかして、もしかするのか?


「あと、『大罪持ち』は『大罪持ち』に会うと、そうだとわかるそうです」


 水色の髪の女性がそう付け足した。それも一つの特性だな。偽者が出ることはない。


 ――で、その「大罪持ち」の可能性が俺にある訳か。残る「怠惰」の「大罪持ち」である、と。


 ………………。

 ………………。

「大罪持ち」かどうかの実感はないが、もし本当にそうなのなら……世界に七人しか居ない訳だし、ちょっと他の「大罪持ち」に会いたくなった。それは事実。


 転移で戻ってくることはできるし、ラオルに話を通して、一回くらいこの森から出ようかな。なんかピンと来た。その時が来たのかもしれない。

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