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19 たとえあとで戻るとしても、したくない経験はある

 作った木の家は完成ではない。床はないし、扉もないどころか窓もないので、未完成そのものだ。なので、未完成の木の家として、できてから十日……いや、二週間……う~ん。カレンダーはないし、日の経過も特に数えていないから、特定の日から何日過ぎたとかわからなくなってきた。……多く見積もって、大体半月は経ったと思う。


 その間、未完成の木の家は特に変わっていない。魔法の風の刃で真っ直ぐ切ることで丸太を木材というか板に加工する練習とか、色々と今後のためになる色んな練習や検証をしていたからである。そっちに集中していたので、木の家は未完成なままなのだ。決してサボっていた訳ではない。それに、周囲の探索だけでなく、推定魔物の狩りに行かないと肉が手に入らないのだから、練習だけしていればいいというものではないのだ。だから、サボってはいない。一人なので、色々とやることがある、というだけだ。


 そうした大体半月を過ごして、わかったことがある。


 まず、丸太を軽々と持てる理由だが、やはり無意識下で「身体強化魔法」を使っていたようだ。身体強化魔法……なんというか、魔法と分類していいのかわからないが、改めて確認してみて……要は魔力を体に纏わせて、纏わせた部分を強化するというもので、纏わせる量によって強化具合が変わるということがわかった。


 ただ、感覚的な話だが、魔力があればどこまでも強化できる、という感じはしない。強化し過ぎると逆に身体の方が付いていけなくなる気がする。身体内部を強化すれば多少限界は伸びそうだが、どこまで強化できるかは個人差がありそうだ。


 だから、身体強化魔法が使えるとわかった際に、まず思ったのは俺の俺を強化すればハサミウサギでも切れないのでは? だったが、もしそれでもハサミウサギのハサミの方が勝っていれば……魔法があるのなら魔法無効化みたいなのもあるのでは……と考えると、怖くて試す気はなくなった。失敗した場合、失うものが大き過ぎる。いや、平均よりも大きいくらいか? ……ともかく、角ウサギに対しても尻の穴を強化して通じなければ、今度こそ純潔が……と同じ理由で試す気は欠片もなくなった。


 いや、待てよ。もし失敗しても回復魔法的なもので治療というか修復というか接続というか、あるいは再生というか復元というか復活というか、そういうことができるのではないだろうか? ただ、仮に回復魔法でどうにかなるとしても、試す気はやはりない。そんな経験したくないからだ。


 まあ何にしても、無意識下で身体強化魔法を使っていたというのは、他にも思い当たることがあった。これまで推定魔物から逃げられたり、地面の上で寝ても平気だったのは、その無意識下による使用によるものだと思う。ただ、難儀なものというか、一度しっかりとそうだと意識してしまったことで、今後無意識下で使うことができるか……。これからは意識して使っていくことも重要になりそうだ。ベッドはないし、就寝時は意識していかないと。


 といっても、意識して使えるようになったのは悪いことではない。恩恵はあった。身体強化魔法の要領で、直接触れる必要はあるが、物に魔力を纏わせて一時的な強化ができるようになったのだ。一時的なのは、纏わせた魔力がなくなれば元に戻るからである。でも、それでも十分だ。今後、何かしら役に立ちそうな気がする。


 それと、一つの発見があった。春キャベツ畑の奥に、同規模の別の畑を発見した。その畑にあったのは、玉ねぎ。キャベツが春キャベツだったことを考えると、新玉ねぎの方かもしれない。色も淡いし、丸というよりは平べったく、比較的大ぶりなので間違いないと思う。新玉ねぎかどうか確かめるためには、実際に食べてみるのが早い、と食べてみることにした。春キャベツの時と同様に働いて返します、と思いながら数個確保。


 え~と、確か、新玉ねぎは水分量が多く、みずみずしくて、普通の玉ねぎより辛味が弱くて糖度が高いから甘味が感じられる、だったかな。生食もできるようだけど………………まずは焼こう。そうしよう。いきなりかじるのは冒険過ぎる。


 皮を剥き、水球で洗って、火を通してから一かじり。……うん。やはり新玉ねぎ。独特の風味はあるが、甘味が非常に強い。うん。新玉ねぎで間違いない。つまり、俺は新たな野菜を手に入れた、ということだ。これで食事が少し華やかになった。……華やかになっただろうか? ……まあ、食べられる野菜の種類が増えるのは悪いことではない。良しとしておこう。


 できれば、他の野菜も見つけたいな。春キャベツに新玉ねぎとなると、今は時期に春と考えても良さそうだ。となると、きゅうり、アスパラガスもあるかもしれない。たけのこは……この森に竹があるとはさすがに思えないが……推定魔物とか居るから、もしかしてワンチャン? と思わなくもない。……いや、ないか。期待はしないでおこう。


 推定魔物で思い出したが、新たな推定魔物は見つけていない。だから、主に俺の糧となっているのが魔猪であることも変わっていない。というのも、今は練習や検証をメインとしているし、そもそも魔猪の肉は大きい上に魔法で時間を止めて保存しているので中々減らないというのもある。なので、狩りに出る回数は少なく、獲物が変わっていないので、仕方ないと言えば仕方ない。遠出はその内だ。


 ここ大体半月はこんな感じだった。色々と少し進んだ感じはするし、そもそも何かを急いでいる訳ではないので、スローライフっぽい悪くない日々を過ごしている気分である。

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