18 気になる表現って、意味もなく何度も言いたくなる
たくさんの丸太を作った。でも、大量の木くずもできた。このまま放置するのはもったいない気がする。燃料として使えるけれど、リサイクルできるものらしいし、何かしらの他の使い道もあるかもしれない。なので、一旦残しておく。
それと、実際に一部屋だけとはいえ、作った丸太の数で大きくないログハウスを作るのに足りるかどうか……。まあ、足りなければまた丸太を作ればいいだけだ。材料となる木はそこらにたくさんある。
あとは、住のために丸太を組み立てるだけだ。でも、それが問題。ただ組み立てるだけでは意味がない。丸太だ。崩れて終わり。接着剤がないのだから、当然の結果だ。いや、確か、米か小麦粉でのりが作れ……ああ、どっちもない。縄があればいいのが、それもないのでやっぱり無理。……待てよ。丸太だけで組み合わせられるように、丸太の端の方を横から見て凹状になるように切り抜いて、そこを嚙み合わせながら組んで四角形を作る。それを斜めに積み重ねていけば崩れることはないし、奇抜だが立派なログハウスに……なるか! ドアも作れないし、中に入れたとしても住めるスペースがないわ!
……う~む。待てよ。崩れないように支柱があればいいのではないだろうか? たとえば、一本の真っ直ぐな長い棒を作り、その直径に合わせた穴を丸太に空けて、空けた穴に真っ直ぐな棒を入れつつ、凹状に切った部分を交差するように組み合わせながら積み上げていけば……崩れることなく、丸太の壁ができるのではないだろうか? おお!
いやいや、そもそも交差した四辺の外側に、ズレないように棒なり角材なりを作って立てておけばいいのでは? おおぅ!
案が二つも出るとは。う~む。どっちにしようか………………良し。決めた。穴に棒の方にしよう。穴に棒、という言葉が気に入った訳ではない。穴に棒、という表現がなんか卑猥な気がするのは関係ない。そちらの方がしっかりした壁になって、そう簡単に崩れることがないと思うからである。決して、穴に棒、と言いたい訳ではない。出番ですか? と俺の俺が反応しかけたが、違うので落ち着かせた。
考えた通りの作業に移り、サクサクと棒を作って穴を空けて棒を通してみる。……上手くいった。どうやら、今、真っ直ぐは無理だが円形なら上手く空けられるようだ。次、丸太の端の方を凹状部分に風の刃で切り抜く。これも上手くできた……と思う。長い直線は無理だが、これくらいならどうにか……まあ、多少のズレはご愛敬ということで。
そうして加工した丸太を組み合わせて積み上げていく。三段くらいで崩れないか、ぶれないか確認したが大丈夫。丸太が足りなくなれば新たに確保しつつ、手が届く範囲まで積み上げたあと、それ以外の高さを求めて、次は多少歪むのを覚悟の上で、木製のはしごを作った。踏み場が一枚だと直ぐ折れそうなので、二段重ねにして強度を上げておく。
そうしてできた木製はしごを使い――手を上げて軽く飛んでも届かないくらいの高さまで丸太を積み上げて。
次は屋根。……屋根? どうしよう。イメージ的には三角の折れ屋根だが、今は作れる気がしない。しかし、さすがに屋根がないのは困る。未だ雨には遭遇していないが、降る前に用意しておきたい。でも、板はまだ作れないし、丸太を並べても隙間から水滴が落ちてきそうだ。
……まあ、いいか。雨は魔法で弾くとかできそうだし。結界とかで。
………………。
………………。
「決壊! いや、違う! 結界だ!」
一瞬、家が崩れる姿が脳裏を過ぎったが、違う。そう、結界だ。簡単? に作れる安全な場所が確保できる手段というか魔法があるじゃないか。今の今まで忘れていた。それがあれば俺の尻もまだ純潔……いや、うん。純潔のままだった。そこを忘れてはいけない。そこを間違えてはいけない。誰も目撃していないのだから、俺は純潔だと言い切ることが大切だ。
……うん。そうだけど、そうではなくて、今は屋根だ。結界も大切だが、結界は家ではない。俺は今家が欲しいのだ。なので、屋根はバラバラにならなければいいや、と穴に棒処理をした横並びの丸太の一面を用意して、それがズレ落ちないように穴に棒処理の要領で四方の丸太の壁の上に突起棒を作り、それに差し込むようにして上に乗せる。あと、残していた葉付き枝なんかを上に載せて……屋根の完成。
……あれ? そういえば普通にというか、苦もなく丸太を持っているというか担いでいるな、俺。横並びの一面の丸太なんて、普通は持てないはずなのに。……これはあれか? 身体強化魔法的な? 文字通りの身体能力強化を無意識で使用していたってこと? ……また思考が逸れた。これはあとで検証しておくことにする。
次に、風属性の魔法で丸太の壁の一面の一部を長方形に切って……開け放たれたままだが出入口が完成。扉は一旦置いておく。板が作れるようになってからだ。
もう一つ、出入口とは別の丸太の壁の一面の上付近の一部を正方形に切り……開け放たれたままの窓の完成。こちらも板が作れるようになれば、一辺が突き出るように開く窓的なのを作ろうと思う。それまで一旦置いておく。
これで――家の完成だ。一旦ね。豆腐みたいな家だが、それでも今の俺からすれば十分だ。ここまでできたことが嬉しくて、両手を上げて喜びを露わにする。
そして、改めて出来上がった家を見て、中に入って気付く。
………………床は?
外に出て空を見る。もう日が暮れそうだ。明かりの魔法はある。疲れもなんか感じられない。でも、気力はない。うん。明日の自分に任せて、不格好なデブリハットを家の中に移して、なんかこれは違う気がすると思いながら寝た。
―――
翌日。別にこれまでと変わらないのだし、一旦、床は真っ直ぐな板が作れるようになってからでいいか、と諦め……いや、諦めた訳ではないから、後回し……だとなんかあとでやらなくてもいいかと思いかねないし……今後やるべきこと、とした。