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17 一人で居ると無意識で口に出してしまう

 とりあえず、衣食住の住に取りかかる前に、血抜きした推定魔物の魔猪の肉を、魔法で丁度いい火を出して焼いて食う。


「……もっ、もっ………………ふう。……『()に、()事を与えて、()実する』。これで『胃食充(いしょくじゅう)』は揃った。なんてな」


 ………………。

 ………………。

 わかっているよ! 言ってみただけだって! ついでに上手いこと言ってみた、みたいにも思っていないから! そもそも、聞いている人なんて居ないし、誰かに聞いているつもりもない! ただ、一人で居るとこういう意味のわからない、不意な思い付きみたいなことを言ってしまうんだよ! だから、これに意味はない! 意味はないのだ! 笑かそうなんて思っていないから! ……ぐすん。


 でも、別に人恋しいとも思っていない。どこか人が居る場所を探して移動しようは少しも思っていない。強がりでもなんでもなく。だから、ここで住を充実させるつもりなのだ。……いや、()()実も、別に狙っていないから。


 ともかく、この拠点としていた、不格好なデブリハットがある場所に、本格的な拠点を築くことにした。その目印となる建物を作る。


 探索した際に鉄の類――つまり鉱石の類は見つけられなかった。実はどこかにあるかもしれないが、少なくとも今は見つけられていない。あるのは、森の中ということで木だけ。となると、木造の建物になる。遮音性が低いとか、虫が……とかデメリットな部分はあるが、今は木しかないのだし、その辺りは魔法でどうにかできないかな? とも思う。


 ……待てよ。魔法でどうにかできるのであれば、魔法で土を盛り上げて上手くやれば……いや、魔力的なのがなくなれば崩れてしまうから駄目だ。俺の魔力量がどれくらいかわからないし、長く維持できないのであれば意味がない。即席とか短時間ならありかもしれないが、それなりに長い時間となると、一から作った方がいいと思う。


 なので、木造だ。


 失敗を前提にして、小屋というかログハウスというか、簡易的ではあるが完成図を頭の中に思い浮かべる。まずは小さくても一部屋だけでいい。いきなりいくつも部屋がある家とか無理。素材、技術、道具類などないものばかりなのだから。でも、魔法でどうにか………………まあ、とりあえず、やってみよう。


 まずは整地だ。不格好なデブリハットの周囲を確保する。土属性の魔法で木の根元の地面を盛り上げて、根ごと木を押し出して倒していく。もちろん、俺の方に倒れてこないように倒す方向には注意する。ある程度の範囲を確保した。必要に応じて範囲は広げていこう。


 ……う~ん。ここまでやっておいてなんだけど、ここって誰かの土地だったりするのだろうか? あるいは推定魔物が居ない訳だし、それ以上の何かの縄張りか? ……土地代というかショバ代とか要求されたらどうしよう。……その時は夜逃げだな。木造なら燃やして証拠隠滅もできる。つまり、木造で作るのは間違っていないようだ。


 場所を確保したら、今度は木材の確保を行う。さすがに生木を使うつもりはない。まずは乾燥させてから……だけど、確か通常で半年から一年、あるいはもっとかかる時もあるとかないとか。さすがにそんなに待てない。なので、魔法の出番である。要は、木の中の水分量を減らせばいいのだ。その辺りを脳裏に浮かべながら、火属性の魔法で焼くのではなく、風属性の魔法で乾かすのではなく、水属性の魔法で水分を操って抜くように……。


「『乾燥』」


 倒した木々の一本に向けて魔法を発動。青々とした葉は枯れて朽ち果て、枝と根は細くなり続けてそのまま割れ砕け散り、幹は圧縮され続けて自壊するように折れ砕けて粉々になっていった。残ったのは破片というか残骸というかなれの果てというか……。


 一陣の風が吹いて、破片はまだしも粉々となった部分を攫い、空に舞い上がってどこか遠くに運んでばら撒いていく。


「……元気でな~!」


 手を振りながら見送った。


 見送ったあと、反省。一人反省会。やり過ぎてしまったのは明白。砕けるまで乾燥しなくていい。ほどほど。そう。ほどほどでいいのだ。結論が出たので一人反省会を終わらせ、たくさんある倒した木々を相手に練習していく。


 ………………。

 ………………。

 何本か駄目になったが、一度コツを掴めばあとは簡単だった。木の大小はあれど、感覚でこれくらい、というのがわかるようになって、実際にコツを掴んでからは失敗していないので、もう大丈夫。一人反省会の開催はしなくてよさそうだ。


 倒した木々をすべて乾燥させて、次は木材を作る……のだが、ここで悩む。頭の中で描いたログハウスは丸太だ。イメージ的に。でも、魔法である程度加工できるのであれば、木を板状にすることもできるのではないだろうか? こう、風属性の魔法でスパッと切って。


 ………………。

 ………………。

 いや、丸太でいこう。規則正しく正確に、同じ大きさ太さで切れる気がしない。先はわからないが、今は無理な気がする。そういう精密操作はおいおい練習していくとしよう。今丸太作りだ。風属性の魔法で風の刃が回る輪を作り出す。その輪の中に木を通し、枝や根、皮を削るように切り落としていく。最後に上下を切り落として、丸太を作っていった。

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