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133 そういう風があっても……いえ、なんでもありません

 植物園を作ることになった。場所は、「小海(プチシー)」の王都を挟んで反対側。当初は利便性を考えて「小海(プチシー)」の近場にしようとしたが、もし何らかの要因で潮風が小仏縁に直撃したら、と考えると容認できない、と守樹長が言い、まあ、どれだけしっかり防ごうとも、今後絶対に、となると断言はできないので、俺とマグレトさんが折れて、王都の反対側という位置になったのである。


 規模は「小海(プチシー)」と同じくらい。これくらいであれば、内部の状況にもよっては、森を感じることができると思う。


 そして、俺、マグレトさん、守樹長の三人で植物園の大体の概要を纏めて、「小海(プチシー)」に対抗するようなものなので、植物園「小森(プチフォレスト)」と名付けた後、シガヒ森国軍に、これでいいよな? 文句ねえよな? というか、文句言ったらマジでぶっ飛ばす……とまではやらないけれど、それくらいの気概で提案。「も、問題ありません!」の後、「あ、ありがとうございます!」と返事をもらい、植物園「小森(プチフォレスト)」の建設が始まった。


 シガヒ森国軍が返答した際、震えていたのは……まあ、俺だけではなく、マグレトさんと守樹長からも圧が放たれていたので、仕方ないと思う。


 まあ、今回の件のきっかけを思い返すと、面倒なことを言い出しやが……まあ、観光名所が増える分にはいいんじゃないかな。うん。


 早速外観造りが始まる。「小海(プチシー)」建設の際にも手伝ってくれた人たちが参加してくれたので助かった。実績があるからね。ただ、「小森(プチフォレスト)」は天井があるというか、陽の光が入るように天井にはガラスのドームが設置される予定なので大変だ。頑張ってもらいたい。


 内部はこちらが、というかシガヒ森国軍が主動で作っていく。正直、植物園を提案したが、俺は植物には詳しくないのだ。観葉植物に向いているのとか、見た目とは裏腹に猛毒があって危険だとか知らん。でも、シガヒ森国軍は詳しい。凄い。なので、内部の内装も含めて、まるっと任せることにした。


 自然と共に生きるエルフだから当然、と守樹長は言っ……てはいないが、顔が物語っている。


 ちなみに、興味本位で聞いてみたが……あるそうだ。人を丸呑みできるサイズの食人植物が。さすが異世界。というか、それ、最早魔物では? と思うのだが、分類上は植物だそうだ。……解せぬ。


 それと、エルフだからはもう一つあった。最初の方に確認した、草花の成長を早める魔法である。魔法なら俺も使えて、何なら膨大な魔力任せで植物園内の草花を一気に成長させることもできるのでは? と思ったのだが駄目だった。


 使えなかったのだ。ただ、これは不思議なことではない。事前に、これはエルフ特有の魔法だから、使えなくてもおかしくないというか、それが当たり前、普通のことだと魔法を教えてくれた守樹長から告げられていたからである。だから、種族特有(ユニーク)なら無理だからな、と俺も思っていたので、別にショックではない、ということだ。


 でも、使えないとわかった時の守樹長の安堵は、本当に心底という感じだった。教えた魔法を使おうとした相手()が「大罪持ち」だからね。万が一、ということも考えたのだろう。


 もしくは、これでエルフとしてのアイデンティティが保たれる、と思ったのかな? そこを侵す気は毛頭ないが。


 ということもあって、内部はシガヒ森国軍に任せることになったというのもある。それと、「小海(プチシー)」の管理と警備をターキスーノ海洋国軍が行うのと同じように、「小森(プチフォレスト)」はシガヒ森国軍が今後の管理と警備を行うことも決まった。なので、うん。自分たちのやりやすいように作ればいいと思う。


 そうなると、俺のやることはないと思ったのだが、ところがどっこい。あった。


 空調設備関係を魔道具化できないか、と守樹長から尋ねられた。魔法でどうにかすれば? と思うが、できない理由を二つ告げられる。


 まず、植物園内に風を吹かせて空気の循環はできるが、そもそもシガヒ森国軍ということで軍人、兵士であるので常日頃の訓練は威力を高めていくのが通常であり、寧ろ、微風の類は苦手としており、それが継続となると困難。そのため、制御を誤って、植物園内にいきなり強風が吹く、なんてこともなりかねないらしい。


 それって寧ろラッキー風というか、スカートを履いている人が居たらスカートが捲り上がって……いや、うん。それは良くない。良くないぞ。……でも、偶にはそんな日も……いえ、なんでもありません。


 それともう一つは、風を吹かせるのはまだしも、湿度の上げ下げとか無理、それも細かく管理するとか、植物園内に効果を及ぼすのとか余計に無理、というものだった。


 そうか……それは難しいか。


 そこで俺に白羽の矢が立った。守樹長は、俺が除湿と加湿ができる空気清浄機の魔道具を作ったことを知っていたのだ。尚、リークはマグレトさん。


 それの植物園全体をカバーできるほどのものが作れないか、と守樹長は打診しに来たのである。


 なるほど。そういうことか。


 確かに、それは俺にしかできない。なので、その依頼でいいのかな? と受けることにして……今はもう魔導基盤があるので問題なく作ることができた。

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