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130 気分を上げる演出は大事

 ターキスーノ海洋国軍の大半がホームシックになった。海に帰りたいらしい。ということは、海をその身に感じたい、ということだ。


 だから、最初は海を感じられるものを作ればいいのかな? と考えた。たとえば、砂浜とか、潮風とか、貝殻とか、それらを魔道具化して、より海を身近に感じられるように、とか。でも、それらを考えた時、それでいいのか? とも思った。確かに、それらでも海を感じることはできるかもしれない。


 でも、海ってこう雄大というか、巨大な自然そのものって感じじゃない? きっと、ターキスーノ海洋国軍も、その巨大さを感じ取りたいのだろう。小物ではなく、大物で。体の一部ではなく、体全体で。全体の全力で海を感じ取りたいはずだ。


 それができれば、きっとホームシックなんて吹き飛ぶはず。


 だから、俺が作るべきは海そのものだと考えた。


 といっても、本当に海そのものが作れるとは思っていない。規模はどうしても小さくなる。ただ、小さ過ぎても駄目だ。でも、体全体で感じられるくらいの大きさは、必要である。まあ、それは後々場所の許可をもらうとして、俺が魔道具として作るべきは仕組みの方だ。


 構想はある。記憶の中に流れるプールとか、波があるプールとか、それらを魔法具で再現すればいいのである。水流操作、だろうか。海っぽく、大嵐とか再現できたら、ターキスーノ海洋国軍からすれば訓練とかに使えるかもしれない。砂浜の砂はいざとなれば、海があるところから運んでくるとして、潮風は……そういう風を流す魔道具でいけ、そうな気がする。これも風力操作できるようにすればいいかもしれない。


 まずは、この三点でいいだろう。その他の海要素はターキスーノ海洋国に任せて、大元を作ることに注力しよう。


 感覚的には、どれも魔道具化できそうではある。ただ、問題が一つ。できると思える感覚の前提となっているのは、効果が高い直接刻む手法であり、尚且つ俺の膨大な魔力があればこそ、なことだ。そこを解決しない限り、この構想は成立しない。


 なので、そこを考える。


 こちらに集中できるように、魔石使用冷暖房の方は免除された。まあ、今では魔法陣を描ける人が居るので、増産部隊だけでも大丈夫なので助かったと言える。


 一日中部屋に籠り、思い付くままに試作、実験を行う。


 ………………。

 ………………。

 何度も失敗した後、ピカッと閃いた。


 いや、待って。やり直す。


 俺の頭部の後ろに、魔法で小さな雷を走らせて――閃いた。


 こういう気分を上げる演出は大事だ。


 高揚した気分のまま、閃いたものを作った。複数の魔石を同時に使用することで、一つ一つの消費魔力を抑えつつ、互いに増幅し合って、直接刻むのと同じくらいの効果を発揮する――そんな装置ができた。まあ、B2くらいの大きさの基盤みたいな形になってしまったが、初めての試みだったので仕方ない。とりあえず、小型化はおいおい思い立ったらとして、これは「魔導基盤」と名付けよう。


 この魔導基盤を用いれば、小規模ながら海を再現できる……と思う。俺の頭の中限定の理論上ではあるが可能である。あと、潮風もいける……と思う。後は、それらを操作する魔導基盤を作って……動くかどうかは実際に使ってみないことにはどうにも……。


 という訳で……。


「そんな感じなんで、場所と人手をください」


 マグレトさんにお願いする。


「う~ん、と……え? 海を作る?」


「はい。まあ、実際の海からしたら小規模ですけど。あっ、『小海(プチシー)』と名付けよう」


「いや、そういうことではなく……ま、まあ、できたらできたで観光に使えそうではあるし、警備の方もターキスーノ海洋国軍がしっかりと守りそうではあるけど………………さすがに元王都内には無理だから外になるけど、それで構わないなら」


「それで大丈夫」


 寧ろ、元王都内だと狭過ぎる。


 ともかく、許可と手伝いを得られたので、元王都の外――というか、ほぼ隣に「小海(プチシー)」を作る。手伝いの人たちは、主に外側だ。大体……記憶を頼りに言うのなら、ドーム一つ分くらいの敷地面積を、壁で囲ってもらう。その間に、俺が魔法で内部に深さ5mくらいの大穴を空け、土魔法で砂浜を作り、手伝いに頼んで砂浜の一角に海の家を建ててもらう。


 建ててもらっている間に、大穴の方に水を海水にするのと波を起こす魔導基盤を、壁の方には潮風を吹かす魔導基盤を設置する。海の家に地下を作って、そこに色々と操作できる魔導基盤を設置して、さらに地下を掘り進めて通路を作り、各魔導基盤と繋げる。魔導基盤とこの地下通路は浸水しないようにした。メンテナンスが必要な時もあるからだ。


 そこまでやってから大穴を水で満たして、操作魔導基盤で水を海水に変えて、潮風を吹かせる。


 確認。


 ……うん。海だ。海を感じる。


 後は、壁とか水の循環をどうするのとかあるけれど……うん。とりあえず、一旦完成でいいか。


 それから、数日後。諸々の問題を解決して、王都の隣に高い壁に囲まれた大型施設「小海(プチシー)」がオープンした。

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