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122 案外やり始めれば、なんだかんだとできる

 依頼されたスロットマシンを作る。


 ………………。

 ………………。

 う~ん。いざ作ろうと思った時、どう作ったものかわからない。いや、まあ、完成した形はわかる。どういう動きかもわかる。アレだろ? 様々な絵柄が描かれたドラムと言われる部分が三本並んでいて、硬貨を入れるとそのドラムが回転し出して、それが自動で止まったり、それぞれボタンで止めたりして、絵柄を揃えるなりして遊ぶヤツだろ? 


 とりあえず、今はどう完成させたものかと思うが、必要な部分を作っていけば、自ずと完成していくと思う。なので、少しずつ取りかかることにした。


 まずは肝となる部分というか、ドラムから作っていく。


 まずは円形のものを用意しなければならない。試作なので木製でもいいだろう。ここで光るのが、俺の風の魔法だ。家を作るのに練習に練習を重ねた成果が発揮される。ただの円形くらい……余裕だ。三本くらい朝飯前さ。まあ、実際には朝飯は既に食べ終えているが。


 寧ろ、ドラムに描く絵柄の方が難題だ。等間隔でならないのもそうだが、俺の絵心が問題というか心配である。いや、俺としては上手く描けていると思うよ。うん。「7」は当然のようにあるとして、残るはこの世界に合わせて「剣」とか「盾」とかの武具類にしてみたが……大丈夫。誰が見ても判別できると信じよう。


 そこに精神を注ぎ過ぎたのか、三本のドラムに絵柄を描いた段階で疲弊していたので、今日はそこまでとした。


     ―――


 翌日。


 基礎となる部分の一つである、レバーを作り、三本のドラムと繋げ、魔道具化して、レバーを引けば回転する仕組みを作った。結構試行錯誤したので、今日のところはそれで止めて休んだ。


 その翌日。


 まだ増産部隊は招集されていない。つまり、時間がある。今日もスロットマシンの方を進めることにした。回転するドラムをボタンで止める魔道具を作り、レバー付き三本ドラムと繋げる。動作確認。レバーを引くと、回転し出すドラム。ボタンを押せば、連動するドラムが止まっていく。なんか感動した。


 熱量が上がり、やる気にガソリンが注がれる。さらに、いくつかの絵柄が揃ったことを認識する魔法陣を作り出して、それを組み込む。動作確認。……動作確認。………………中々絵柄が揃わない。動作確認。………………。………………。ぐっ。ふっ。ふっ。ふっ。怒りを感じるな。冷静になれ。落ち着け。焦るな。大丈夫。……動作確認。………………動作……うがーーー!


 ふて寝した。


 さらに翌日。


 増産部隊の招集はまだ。どうせ揃わないだろうな、と適当にボタンを押していく。揃った。「777」が。魔法陣が反応している。成功だ。天才か? 俺は。「YES! YES! YES!」とガッツポーズをしながら声を上げた。


 その後、冷静になって、今ここで「777」を出したことで、もうこんな奇跡は起こらないのでは? と不安になった。それに、当たるまでの時間を考えると……うん。ギャンブルに向いていない。元々ギャンブルに嵌まるつもりはないので、動作確認ができただけで十分である。


 次の作業に移る。


 イメージの中だとスロットマシンと言えばコインだ。つまり、硬貨。ただ、この世界の硬貨を使うのは、現金をそのまま使うということなので駄目だと思う。なので、風の魔法で木を削ってコインを十数枚作る。それを使う。


 コイン挿入口と、揃った絵柄に合わせた倍率で、置き場からコインが落ちるように魔道具化した落下口を作り、組み込む。そこで気付いた。絵柄が揃ったかどうかを判定するのは真ん中のラインだけだったのだが、確か上下と種類によっては斜めもあったはず、と思い出し、魔法陣の連動でその辺りはどうにかする。


 これで、内部は一旦終了でいいだろうか。細かな演出とかもできるかもしれないが、それらは一旦止めておこう。今は基礎的な部分ができただけで満足である。


 穏やかに眠りについた。


 そのさらに翌日。


 内部ができたので、外側を作っていく。木製の四角い箱なのは、これは試作みたいなものだからだ。完成品をどのような素材で形にするかは、ラストに任せよう。


 そうして、スロットマシンが完成した。気が付けば、あっという間だった、と思う。まあ、何事もやってみなければわからない、ということか。完成記念の動作確認で一回回す。……もう一回。………………もう十回。………………いやいや、もう二十……はっ! いけない。危うく沼に落ちるところだった。


 でも、欠陥が見つかった。このスロットマシンは記憶の世界を基準にしている。だから、魔法なんてない。でも、この世界には魔法がある。身体強化魔法がある。強化具合ではドラムが止まって見えて、容易に「777」を目押しできてしまう。何かしらの対策が必要だ……が、その辺りはラストがどう使うかわからないので、これもラストに任せるか。


 何にしても、スロットマシンができた。

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