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118 勢いで封印指定物を作ることだってある

 マッサージチェアとは、座るだけで体の至るところでマッサージを受けられる椅子型の機械のことである。内部に球体が組み込まれ、ローラーやエアーバッグなどで埋め込まれており、それが自動で動いてマッサージを受けることができるのだ。


 それを早速作った。作り終えた。背もたれの高いソファみたいな椅子を探して見つけることが一番大変だったかもしれない。中々見つからなかったが……どうにか見つかった。奇跡に近いと思うことにした。その内部を魔道具で作り、ローラーがどう動くかとか、エアーバッグの圧でどれくらい締め付けられるか……大変だったけど頑張った。数日かかった。でも、できた。できたのだ。


 今はトレーニング器具でトレーニングして、かいた汗をシャワーで流して、マッサージチェアで体を解して一息吐いている。


「はあ、あっ、あっ……ああ~………………んんん……ふう~……」


 数日かけてこだわった甲斐があった。背中が揉み解され、腕と足にかかる空気圧は程よく、気持ちいい仕上がりである。


 これで、一旦思い付いたものは一通り作れたかな? 空調を完備して、室内トレーニングもできて、マッサージチェアもある。もう、部屋から出なくてもいいのでは? ……まあ、食事とかあるし、まったく外に出ないという訳ではないんだけどね。


 それはいい。室内でのんびりできるようになったのは、怠惰的にプラスだ。


 でも、一つ気がかりができた。いや、できてしまった、というべきか。


 ハンディタイプのマッサージ機。作ってしまった。後悔はない。でも、使い道もない。これは……封印かな。管理人小屋の自作木製タンスに封印しよう。女性用下着とは別のところに。一緒に入れると意味深に見えなくもないから……いや、個人で楽しむ分には一緒に見えた方が……て違う! そうじゃない! 駄目だ。これが手元にあるだけで駄目になってしまう。どうして俺はこれを作ってしまったのか……この、ある意味で禁断の――。


 不意に扉がノックされる。


 それで思考が中断された。誰か来たようだ。扉を見ると、「マグレトだ。他にも居るが、中に居るだろうか? スロース殿」と声がかけられた。マグレトさん? と扉の方に向か――待て。危うくハンディタイプを持ったまま対応するところだった。これは……と室内を見渡すが、これといって隠す場所がなかった。どうしよう。……まあ、もし中に入られて見られたところで、普通にマッサージ機と説明すればいいか。そういう使い方があると知らなければ、一見したところでわからないだろう。適応に椅子の上に置いておく。


 それから扉を開けてマグレトさんに話しかける。


「マグレトさん。どうしました?」


「おお。居たか。いや、ここ最近スロース殿が部屋にこもり続けていると聞いて、何かあったのか様子を見にな。とりあえず、元気そうで良かったよ」


「ああ、なるほど。とりあえず、元気ですよ」


 病気で数日寝込んでいたと思われたかな? そういう報告が挙がったとか? まあ、何にしても心配して様子を見に来てくれたのは嬉しい。それと、心配してくれたのはマグレトさんだけではなかった。


「大丈夫そうで良かった」


「ありがとう。大丈夫だよ」


「面白そうだったから付いて来ちゃった」


「……どうも」


 マニカさんとラストだ。若干一名、心配ではなかったようだ。


「ここに来る前に見つかってな。事情を話したら付いてくると」


 マグレトさんが苦笑を浮かべて言う。そういうことか。ただ、そうなると一つ気になることがある。マグレトさんは本来の目的だから問題ないだろうし、ラストはここでやることがあるのかわからないが自由に過ごしていると思われるからいいとして……マニカさんだ。マニカさんは何かしらやることというか、やっていたことがあると思うのだが……。


 ……とりあえず。


「来てくれてありがとう。皆忙しいと思うのに」


「大丈夫だ。城内に居る友の様子を見るくらいの時間は、いくらでも作ることができる」


「えっと……メリッサが上手くやってくれるといいますか、寧ろ、自分に任せて行って来てくださいと言われまして……」


「あはは。私はもうやることはやったからね。ここはこれから発展するだろうし、手を出すには絶好の機会ではあるけれど、私の力で手に入れた訳ではないから。ずっとここに居る訳にもいかないしね」


 ……まあ、ラストは、そうだろうな。でも、マグレトさんとマニカさんが来てくれたのは嬉しい。メリッサさんには礼を言っておくべきなのだろうか?


 ともかく、何にしても、このまま部屋の外で立たせるのもどうかと思うので、三人を部屋の中へと招く。

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