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11 細かいことの積み重ねで気付くこともある

 ………………。

 ………………。


 ………………。

 ………………。

 ……ふぅ。イたした。気持ち良かった。いや、違う。何が違うかというと、別に賢者タイムとなった訳ではないということだ。まあ、女性用下着があるので、それで妄想を逞しくすればいずれ到達する高みではあるが、そういうことではない。それとは違う快感だったのだ。こう、出さないように我慢し続けたあとに一気に放出する快感というか……あれ? これだと何か似たような感じに……ともかく、俺がしたのはトイレを作って排泄行為をしたということである。


 当初は本当に困った。ここは森の中。しかも未開。キャンプ地なんてない。どこまでも自然。都合良くトイレなんて人工物はどこにもない。小ならまだしも大は、ね。まず場所だ。どこでも良さそうだが、どこでも良くないというか、こう、解放してはいけない感覚を解放しそうというか……何にしても、俺の中の倫理観が許さなかった。許容範囲外である。せめて、誰も居なくとも誰にも見られないところがいい。


 気にするのは場所だけではなく、そもそも拭くものもないのだ。木の葉で――とは一瞬考えた。でも、悲惨な未来というか、流血の未来というか、間違いなく切れると思う。下手をすれば切れた分拡張することもあるかもしれない。それはあまりにも危険なため、直ぐにその考えは捨てた。


 そこで俺は一計を案じて……結果。魔法ですべて解決した。させた。力技、でいいのだろうか? まず、魔法には属性があるので、地面に干渉するなら土属性だろうと、土属性の魔法で地面に穴を作ろうとした。少しばかり抵抗みたいなのはあったが、無理矢理押し通す。我慢にも限界があるからね。それで、ぶつを落とす穴を作ろうとして気付く。真下は不味いというか、洋式なんてものはないので和式スタイルでいこうとしたのだが、それだと万が一で体勢を崩して穴に嵌まる、あるいは落ちる可能性がある。何より、周囲からは丸見えだ。は、恥ずかしい。


 なので、まずは人が立って進めるだけの大穴を斜めで作っていき、途中で洋式スタイルの便器――その時は波が引いて我慢できそうだったのでこちらにした――を土を固めて外観だけ似せて作り、斜めの大穴をさらに奥へと作っていく。この辺りで、と思うところで作るのは止めて、土の便器があるところへと戻って、まずは致す。便座が土を固めただけなので思っていた以上に冷たくてビックリしたが……スッキリした。


 それで、次は魔法の水球を尻に当てて水洗い。何度も。綺麗になったと思うまで。排水はそのまま水球を落とした。あと、冷たい水でもいいのだが、便座の冷たさがあったので温かい水球にする。さらに心地良くなった。綺麗にはなったが濡れたままで黒ズボンを上げる訳にもいかず、今度は魔法で温かい風球を作って当てて尻を乾かす。そして、最後に土属性の魔法で排泄先を少し埋めて臭いが籠らないようにしてから終了。


 他にも何かしらの方法はあると思うが、緊急性が高かったので、まずはこれでいいと判断した。これから食事を取るようになれば常設が必要になるので、何かしらの考えは必要である。


 それと、スッキリしたことで一つ思い当たることがあった。食事を取ったのだから、歯磨きも必要だ。でも、ここには歯ブラシも歯磨き粉もない。……考えた末、しばらくは魔法の水で綺麗に洗った指ブラシとしっかりとしたうがいをすることで落ち着いた。生活用品を充実させたい。


 まあ、トイレにしろ、指ブラシにしろ、魔法って便利だな、と思った。


     ―――


 人は欲に対して我慢できる。欲からの誘惑を払うことはできるのだ。強い意志――そう、鋼のような意志で抗い、跳ね除けられる。でも、欲も強い。一度負けはしても、ここぞという時――たとえば心身が弱っている時とか、悪魔のような蠱惑的な囁きで誘惑してくる。そういう時はいくら鋼のような意志があっても抗い難く、跳ね除けづらい。


 でも、欲はなんでもかんでも悪い訳ではないのだ。言ってしまえば、あれをしたい、これをやりたい、は欲であり、行動力へと繋がる。悪いことばかりではない。自己責任ではあるが、時には我慢せず、振り払わなくてもいいことだってあるのだ。


 だから、俺が今後について諸々の行動を起こす前に、本能が求めるままに肉を欲して推定魔物を倒そうとしても構わないのではないだろうか?


 うん。構わないよ。肯定する。


 この場には俺しか居らず、俺の意見はそのまま全会一致となった。


 なので、まずは推定魔物を倒すことから始める。俺の戦力確認も兼ねているので重要なことだ。うん。もちろん、武具や道具はない。でも、詰んでもいない。ここ最近の魔法行使で気付いた――いや、元から可能性感じていたけれど、転移ができたことや、洗濯や浄化、大穴作り、トイレとすべて魔法で解決したことで、それが確信に変わったのだ。


 魔法は素晴らしい。なんでもできる。しかも、魔法を使い続けても魔力が切れる様子はない。……まあ、魔力消費が激しい感じのを連発した訳ではないのでなんとも言えないが、とにかく便利に使えることがわかったのである。


 それを念頭に入れておけば、推定魔物を相手にしても魔法で戦える、はず。解体も魔法でできる、と思う。……やってやれないことはないはずだ。


 俺は今、肉が食いたい。そのために行動開始だ。

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