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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無職になった元ヒーローショーの怪人が現代ダンジョンで無双します 「俺様の歌を聞けぇ!!!!!!!

作者: 怪人工房店長 死蟲(しでむし)

手軽に読んでもらえるように短編に編集してみました

本編も読んでいただけると幸いです!!

この怪人は実在しますがお話はフィクションですだよ?いやマジで

俺ことセヤマ アキヲ、は大変困ったことになっていた。

勤めていた会社が、無くなったのだ。

正確に言うと、借入額が多くなり社長が、セカイからログアウトしたらしい…


ぇ? 明日から無職ですか? 俺、無職ですか?

明日からこの?なんの資格もない俺が?


笑えてきた。色んな意味で笑えてきた。

学生時代から付き合ってきてくれた彼女とようやく結婚できて、来月子供も生まれるというこの時期に、勤め先が無くなり、俺自身にはなんの社会的な地位も無い… 好きに生きてきたらまぁそうか。

すまん産まれてくる子供よ、父はアホゆえにお前に迷惑をかけるようだ…幸い、生命保険は実家のオカンがかけてくれてるから、多少の生活費は大丈夫だろう…


眼の前には、「ダンジョン」の入口がある。何も持たなくともはじめられるお仕事ナンバーワン。5年前から、世界各地に出現しはじめた、モンスターと宝の迷宮。

とりあえず、何もなくとも生命を掛け金に、カネを得られる夢の国だ。


簡単な教習さえ受ければ犯罪歴さえなければ、誰でも探索者になれる。


モンスターと戦えば、ダンジョン由来の素材を得たり、不思議なことに宝箱が出現したりするらしい。

何よりも、ダンジョン内でモンスターと戦うと、身体能力が上がったり特殊な技術を得ることがある…らしい、知らんけど。

今から俺がするのは「現実逃避」だろうと思う、死ぬつもりもないけども勝算があるわけでもない。

だが、首をくくったりヒトを殺してカネを奪ったりするようになるよりはマシだと思った。


で、目の前に今、緑色の小さいオッサンがナイフ持ってゲラゲラ笑ってる。マジ怖え。

ダンジョン最序盤のモンスター、ゴブリンだ。どつきあいをしたらたぶん俺が死ぬ。

なので、反撃させずに斃さなアカン。

え〜マジか?とりあえず木刀で行けるって聞いてそこそこ頑丈な木刀持って来たけど。

コイツを死ぬまで殴るか、俺が死ぬまで斬られるか、みたいなことになんのか?マジで帰りたい。

「ゴギャァァァアアアア!!」

斬り掛かってきた。逆手袈裟斬りで。相手はナイフなので一歩下がる。

と、空振りした。当然、ゴブリンの首筋はガラ空きなので木刀を叩き込んだ、イヤな手応えとともに倒れ込むゴブリン。痛がりながらもこちらの脚をナイフで斬ろうと腕を振りかぶる。アレ?意外と対応できる動きだな?

片脚を浮かせて、ナイフを避けつつ踏み込んで、頭に木刀をぶちかます。

ゴブリンは静かになってキラキラしながら、小さな紅い石を残して消えて行った。

教習で聞いた通り、だけど実際眼にすると、違和感ハンパねえなって思ってたら声が聴こえた。


「初討伐おめでとうございますw」


アタマに直接聴こえた。声によると…。

初めての討伐おめでとうございます!それでは最適化を始めますね!!」

元気な脳内の声とともにナニカはじまった。全身になんかゾワゾワする感触が走る。話には聴いてたけど、大丈夫かコレ?

「安心して下さい!」

安心できる要素が一つもない!

「意識の中の潜在スキルを検証…魔力への適応を開始…

成功しました!ステータスをご確認下さい!元気良く!!ステータスオープンっ!!!!って!!!!」


グイグイ来るなぁ…よし!覚悟キメた。

「ステータスオープン!!!!」

目の前に半透明のウインドウが開く。うわ、実際出るとビビるなコレ。あと、めっちゃ恥ずかしい。


#セヤマアキヲ 30歳

スキル:初級忍術

   武器製作

   防具製作 

   変身 (怪人態)#


クソシンプル過ぎて笑いそうになった、ナニコレ?

「ステータス獲得!おめでとうございます!!!!アナタのこれからのダンジョンライフを応援してます!じゃあまたどこかでお耳にかかるのを楽しみにしてまーす!!!!」


「あ…」説明とか無いんかい!

スキル…初級忍術、大学時代にチャンバラばっかりするサークルにいたので、初級ながら手に入ったのがこちら。

武器製作…確かに、小道具の刀とか作ってはいたけれど、ソレ?

防具製作…衣装で鎧みたいなモノはよく作ってたけどな?

で、

変身(怪人態)コレは…こないだまでいたイベント会社での仕事のせいなのか?よりによって怪人とか…

確かに!ヒーローショーなんかの仕事で、マイク片手に喋ったり立ち回りしたりしたけど!スキルに反映されるとか!

そんなことある?!

………うん、諦めよう。ありのままに生きていこう。

幸い、ダンジョンでそれなりに動けるようになれば、それなりの収入にはなるだろう。


それからしばらくは、ダンジョン内でスキルの検証だ。

まずは初級忍術から、ダンジョンの通路を少し外れた小部屋の中で自由に木刀を振ってみる。

おお?スゴい風切音が静かなダンジョンに響く。

なるほど、基本的な動作はチャンバラで培ったものをスキルが補完してくれる感じだな。

人間相手だと、すぐに大事故になりそうな予感。


袈裟斬り、逆袈裟、胴抜き、すべての動作にいい感じの補正がかかる。はぁ…大学でチャンバラやっといて良かった、芸は身を助けるってやつだな。

 と、なると ひょっとして忍者屋敷前でやってた忍者ショーの技も一通りできるかもしれないな。

なんせメンバーが少ないときは俺一人で二丁鎌、鎖分銅、短刀、棒、と、どこのス◯ローンやねんみたいな状況でチャンバラやってたもんな。

また色んな武器持ってきて試そう。


さて…もう一つの怪しげなスキルも、検証しとくか…


 変身… いやまあテレビの番組ではよく見かけるが、現実世界でマジでやることになるとは思わなかった。

 しかも怪人…いや別に、悪いことしようってんじゃないからええねんけど、迷っても仕方がない…やるか!

 「変身!」キーワードとともに発生する、謎のエフェクト。地面からファーって、キラキラしたヤツが出る。不思議な高揚感が全身に走る、うわ!コレすげぇ!

メッチャ気持ちいい!世界のすべてがクリアになるような感覚。

そして、変身が完了した。

出来上がったのは、全身黒タイツの怪しいヒト、だった。

ピッチピチである。

俺はツッコまずにはいられなかった…

 「ガワはついてないんか〜い!!」

 ピコン!

 ヨコでウインドウが開く。(衣服を登録できます)

 待って!そんな話聞いたこと無いけど?ガワと一体化する能力なん?コレ?

なんとなくそういう風に使えとスキル自体が言ってる気がする。

 ヤベエなコレ、舞台衣装に魂宿るやつ?

 しかも変身前提の時点で、たぶん俺等みたいな仕事してたやつにしか発現しないスキルだろう…

 だってネットでこんなスキル見たことないし…

 アカン…コレ以上ここでスキルに振り回されてると、ゴブリンとかに囲まれて死にそうな気がする…

 脳が疲れてるので今日はもう上がって休もう。

 階段はすぐそこだし。振り返って、地上への階段へと向かった。

 

家に帰ったら、嫁様にクソほど怒られた。

 そりゃそうか…

 お前死んだらどないするねん!って。

泣きながらブチ切れられた。ごめんなさいもうしません。

 

3日後…手に入りそうな道具をホームセンターで揃えて再びダンジョンへ。

 変身用のボス衣装も登録してある。

なが年使ってきたオリジナルの怪人衣装「不死身の昆虫忍者 死蟲しでむし」だ。変身できるとなるとテンションがアガる。三十超えても男子はコレでテンションがアガらないやつはいない。(個人的な感想です)

 薄暗いが視界の悪くないダンジョンの不思議。まずは忍術から行ってみよう。腰に差していた二丁鎌を抜き両手に装備。前方に緑色の小さいオッサンことゴブリン発見。ソロだ、二丁鎌のサビにしてくれよう!

 こちらに気付いたゴブリンがナイフを構える。踏み込んで鎌ではたき落とす。地面にナイフが落ちるとともに俺の鎌がゴブリンの足を薙ぐ。足首がもげた。脆いな、そのまま二本の鎌で首筋をクロスに切り裂くと、ゴブリンは光に還っていった。

まずは一つ、腰のポーチに魔石を回収して次のエモノを探す。

 小一時間ほどゴブリンを狩り続けた。

安定した二丁鎌の戦闘スタイルが確立してきたようだ。

不意をつかれない限りは、手首を叩き落として、足元、首筋、の流れ作業で1対1なら大丈夫そうだ。

途中、2回ほど体がふわりと軽くなる感覚があった。

いわゆるレベルアップか。さらに狩りの効率がアガる。

さて、今日の仕上げに変身しての戦闘をやっておこうか。

 

「変身!」

不思議な高揚感とともに、怪人の姿に変わってゆく。

片角の左右非対称な鬼のような顔面。

同じく非対称なプロテクター。

赤と黒のカラダによく馴染んだ、俺様(死蟲)の姿だ!

ギャラリーはいないが、昂ったココロが咆哮をあげた!

「俺様の歌を聴けぇッ!!!!」

無音のダンジョンにこだまする怪人の咆哮!

そして、メインテーマ曲のイントロが鳴り始めた! 

テーマソングが響き渡る、『悪の中の悪(オトコの中のオトコ)』 ガワに仕込んだスマホから、音楽プレイヤーが始動する仕様だ。いけたらいいなと思い、ガワのベルトにスマホケースを仕込んでおいたが、いい仕事しやがる!

音に気づいたゴブリン共がぞろぞろ現れる。


強化された怪人の五感に奴らの所作はトロ過ぎる!!

二丁鎌を構えながら疾走る、すれ違いに喉元を掻っ切り「ひとつ!」

次のゴブリンの武器を片手でいなし、できた隙に鎌を叩き込む

「ふたつ!」

数えるのも、もどかしい!

さらにおかわりのゴブリンを蹴り倒し、とどめを刺し、鎌に引っ掛け引きずり倒し、そのまま集団に投げ込んで慌てふためく奴らの喉笛を、斬り裂いた。

じゃらり、と懐からステンレスのチェーンを取り出す。

両端に、鉄の分銅が取り付けてある。

スキル:初級忍術 のサポートで、自在に操れる鎖分銅である。

振り回し、叩きつけ、巻き付け、さらに鎌でとどめを刺し

敵の集団を蹂躙していく。

何体殺ったかわからないが、辺りが静かになる。

だが、首筋にジリジリする感覚がある…


「ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


咆哮をあげながら、さっきまでのゴブリンのふた周りはデカいゴブリンが奥から姿を現した。

大ぶりな、反りの大きな剣を握っている。

 先手必勝!と、鎖分銅を大ゴブリンめがけて振るった。

体を躱して避けるしか無い攻撃だ。ましてや、ほぼ自在の触手のように操れる鎖分銅である。

 避けた不安定な体勢の大ゴブリンにさらに、鎖分銅が足元から絡みつく。そのまま力まかせに鎖分銅を引っ張ると、バランスを崩して転倒する。

立て直しの時間を与えるつもりはない、二丁鎌を抜きながら走り寄る。交差させた鎌で大ゴブリンの剣を抑え、流し、斬り返してくるスキに、眼球を切り裂き、返ってきた剣を半歩下がって躱し、大ゴブリンの脳天めがけて、鎌を振り下ろす。

大ゴブリンの全身が大きく跳ね上がり、俺様は弾き飛ばされた。流れに逆らわず距離を空ける、地面を転がり受け身を取りつつ立ち上がり、大ゴブリンの様子を伺う。

もちろん武器は残心したまま、だ。

 一際大きな光に還って行く、大ゴブリン。

あとには、少し大きな紅い魔石と、宝箱が残った。


……… 変身が解けた、危険な空気感が薄れている。


 っで?!何やったん?あの変身中のテンション!!あぶな過ぎるやろ!!だいたい何やねん?!一人称変わっとんがな!!俺様て!!!!テーマソングて!!!!

ガワの面越しに見てるはずやのに、視界は何の影響も受けてないし?!むしろ、いつも以上にビンビンに研ぎ澄まされてたがな?!… うん、わかった、「変身」ヤバい…マジでヤバい、開放感と全能感。

あと…メッチャ…腹減った!!!!


◆◆◆昼食用に持ってきた、カロリーバーをもしゃつきながら、ペットボトルの水をごくごく飲む。

 飢餓状態を脱し、戦闘結果を確認する。

ゴブリンの魔石(小)130

ホブゴブリンの魔石(大)1

大ゴブリンは、ホブゴブリンだったらしい。

と、宝箱… 今のところ罠があったことはない、と聞いているが…正面には立たず、サイドから蹴り上げる。


 わなはかかっていなかった。


ナカミはなんだ!?


ホブゴブリンの剣 (NR)

アイツの持ってたでかい剣が入ってた。

ありがてぇ、ダンジョン産の武器は、工業的に生産される武器より質が高いと言われている。

この時点で手に入ったなら僥倖だ、ホブゴブリンよ、ありがとう。大事に使わせてもらう。


 魔石を、ダンジョン付随の買い取り所へ持ってゆく。

魔石は、今最もホットなエネルギーアイテムである。

時に電気であり、時に炎であり、おおよそヒトが考えつくエネルギーとしての要素を持っていた、エネルギーに方向性をもたせる事によって、ありとあらゆるモノは、魔石で動かせるようになった。

完全無公害!すごく便利、シズ◯ドライブみたい。

ちなみに、ゴブリンの魔石(小)で、スマホが約2週間待機状態をキープできる。


とか言ってるうちに、査定が終了した。

ゴブリンの魔石(小)¥13,000

ホブゴブリンの魔石(大)¥5000


命張ったにしたら、なんともアレな金額だが、まぁ、よく頑張ったほうだ。無事これ名馬!


 ちなみに、ダンジョンからの買い取りは、最初から源泉徴収分が抜かれていて、後に確定申告の時に収入次第では、還付がある。

 命かけて、税金まで追加で払わされたらかなわんな…

よし、もらうもんもらったし、美味しいもん買って家に帰ろう。

 ホームグラウンドになるだろう、「久宝寺緑地ダンジョン」を後にする。家から自転車で通える距離だ。

強くなれるなら、他のダンジョンも行ってみたくはあるが、しばらくはココだろうと、考えている。

 公開されている情報では、久宝寺緑地ダンジョンのクラスは "F" いわゆる初心者向け、という区割りである。

階層は10層。初心者を抜ければ日帰りでクリアできるというロケーション。

休日に入って、小遣い稼ぎをするのにちょうどいいらしい。

逆に、平日は俺のような暇のある人間しかいない。ありがたいロケーションだ。


***その頃、買い取り所では…

「一階だけで、18,000とかヤバない?」

「ゴブリンだけやなくて、ホブゴブリンまで倒したみたいやねん」

「見た目、普通のさえへんおっちゃんやったけど、意外とやるやん?」

「ソロでゴブリン130体討伐するとか、聞いたことないねんけど…」


「へーくしょい!」

 その頃、駅前のスーパーで買い物をしていたアキヲは、盛大に、クシャミをした。昭和のマンガである。


お読みいただきありがとうございましたプロローグから2話を短編としてまとめました!応援したるわ!って思われたなら、☆とかイイネとか感想とかいただけると幸いです☆

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