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DQN  作者: 迎ラミン
第一章 神社
3/23

神社 2

「おはよう、ケイちゃん」

「あ、おはようございます」


 マンションのロビーに下りたケイトが、顔馴染みの女性大家さんに声をかけられたのは、四十分ほど前のことだ。土曜なのでいつもより少し寝坊してしまったが、それでも涼しいうちに、日課としている朝の散歩へ出かけようとしたときだった。


「ケイちゃんも神社にいくの?」

「え?」


 ポロシャツにハーフパンツ、スニーカー、手にはこれから被る予定のキャップという格好で、ケイトはきょとんと訊き返してしまった。大家さんの方は箒とちりとりを持っているので、ロビーや周辺を掃除してくれていたらしい。

 たしか五十九歳だと言っていた大家の(すぎ)()(かず)()さんが、実年齢よりは若く見える顔を左右に向けてから声を潜める。


「神社で死体が発見されたんだって。しかもどうやら殺されたっぽいの。まだニュースにはなってないけど、ザ・マターとかで結構話題になっちゃってるわよ」

「リアリー!?」


 ケイトは慌てて、ウエストポーチから自分のスマートフォンを取り出した。『ザ・マター』というのは百五十字までの短文や画像、短い動画などが投稿できる、全世界で愛用されているSNSだ。ケイトも自分のアカウントを作り、リアルの知り合いにはバレないようにしつつひそかに楽しんでいる。ちなみに杉野さんも年齢に似合わずスマートフォンを使いこなし、複数のSNSにアカウントを持っているのだとか。

 さっそくザ・マターのアプリを起ち上げ、検索窓に《幸浜》と入力して画面をタップする。 果たして、表示されたのは――。


《幸浜で殺人事件という噂》

《幸浜町の御林神社で、死体が見つかったみたい! こわい~!((( ;゜Д゜)))》

《おいおい。幸浜、大丈夫かよ。町長の犯罪行為で全国ニュースになったばっかじゃねえか》


 さらに《御林神社》でも検索してみる。


《今、御林神社。警察だけじゃなくて、野次馬もめっちゃ増えてきた!》

《御林神社の殺人現場到着。ブルーシートで囲まれた現場とか規制テープとか、初めて見たわ》

《幸浜町、おっさんが御林神社で殺されたらしい。マジやばい》


「杉野さん、これ本当ですか?」

「うん。神主さんにメッセージしてみたら、朝早くからてんやわんやだって。罰当たりな事件だって、怒ってもいるみたい」

「でしょうね」


 狭い田舎町のこと、しかも杉野さんは女だてらに五階建てのマンションを経営する、幸浜ではそれと知られた「カオヤク」の一人だ。御林神社はもちろん、町の地場産業である漁業や観光業、町役場、さらには最近少しずつ増えている若い移住者たちの間にも、太いパイプを持っている。今回もさっそく、御林神社の神主さんに直接連絡して真偽をたしかめたようだ。

 彼女の顔の広さには、ケイトも多分に助けられている。何を隠そう、都会にあってもおかしくないほどのセキュリティを備えたこのマンションも、町の教育長と親しい彼女が格安で提供してくれているのである。


 ケイトが幸浜に来た初日、町が用意するという住居のオーナーとして、杉野さんはわざわざ役場まで迎えにきてくれた。聞けば彼女は、教育長を務める()()(ゆう)(いち)氏の二学年上、ともに幸浜出身の幼馴染みという間柄らしい。


「あなたが新しく来てくれた英語の先生ね。お部屋のことに限らず、もし何かやりづらいことがあったら遠慮なく私に言ってちょうだい。(ゆう)ちゃんは、昔っからお尻が重いから」

「勘弁してくださいよ、和子さん。教育長の威厳ってものが……」

「このド田舎で、そんなもん通用するわけないでしょ。あんたが小学三年にもなっておしっこ漏らしたこととか、中学で急に色気付いたのはいいけど、一年間で四人の女の子に振られたこととか、私は全部知ってんだから」

「よ、余計なことは言わないでください!」


 などと早々に教育長をやり込めていたうえ、自身は若い頃「()()(はら)にある国際交流ラウンジでバイトしてたの」とかで、外国人に対しても非常にオープンで協力的な、ケイトにとっては願ってもない人物だった。ちなみに「小野原」とは、幸浜から電車で十五分ほどのところに位置する最寄りの都市、小野原市のことである。

 そんなこんなで、町で初めて採用されたALTにもかかわらず、ケイトは杉野さんのお陰で快適な住居を手に入れ、地域にもスムーズに溶け込むことができたのだった。

 心ひそかに「幸浜の母」と呼んでいる大家さんの顔を見つめ直し、ケイトは礼を述べた。


「ありがとうございます。全然知りませんでした。お散歩がてら、私もちょっと行ってみます」

「うん。相変わらず朝から暑いし、もう野次馬も一杯集まっちゃってるだろうから、気を付けるんだよ」

「はい。じゃ、行ってきます!」


 笑顔で頭を下げ、杉野さんが言う通り既に陽射しが強いなかへと足を踏み出したのが、八時ちょっと前のことである。




「イッパンジンがいても邪魔になるだけだし、私もお散歩がてら寄ってみただけだから。さあ、離れましょう」


 到着したばかりのセイとテンには少し申し訳ない気もしたが、ケイトは子どもたちを促して一緒にその場を離れた。先ほどの若手刑事も近寄らないようにと言っていたし、何より、この子たちがショッキングな光景を目にしてしまわないよう、今は自分が守らなければ。


「あ、せっかくだから、みんなで(こと)(はま)を散歩しようよ。ケイ先生もいいでしょう?」


 するりと隣に歩み寄ってきたシーが、右手を指差した。御林神社が面した道路の先、防波堤の向こう側には、「琴浜」と地元民が呼ぶ海岸と、その脇を通る遊歩道がある。海岸は岩場が主だが、突き出した場所やテトラポットの上では釣り人がよく竿を伸ばしているし、町民だけでなく観光客もよくウォーキングをする気持ちの良い場所だ。


「OK。私もちょうど、あっちまで行ってみようと思ってたの」


 シーもまた気が利く子なので、こちらの意図を汲んでくれたのかもしれない。内心で感謝し、ケイトも頬を緩めて頷いた。


「じゃあ、さっそく行きましょう! ホウ、セイ、テン。みんなもいい?」

「もちろん」

「私たちもそのつもりだったんだよ。ね、テン」

「うん」


 サイの確認に、残る三人もにっこりと同意する。

 一安心して、ケイトは五人の子どもたちと一緒に、すぐ先の遊歩道の入口へと向かった。




「やあ、ケイ先生。それにみんなも。おはよう」


 同じく散歩らしい知り合いとケイトたちがすれ違ったのは、遊歩道に入ってすぐの細い坂の途中でだった。今はもう慣れたが、少し出歩くだけでも知り合いに遭遇する率が高いのは、本当に田舎ならではだと思う。


()(むら)先生。おはようございます」

「おはようございます!」

「おはようございます」


 ケイトに倣って子どもたちも挨拶する。小さい声ながらテンも中学生たちにしっかりと続き、きちんと可愛らしいお辞儀もしているのが微笑ましい。


「ひょっとして、みんなも神社に?」

「はい。警察の人たちがいたし、もちろんなかは覗けませんでしたけど」


 苦笑とともにケイトは、Tシャツに短パンという、いかにも休日という格好の「葉村先生」に頷きを返した。

 彼、葉村(かず)(たけ)は幸浜小学校の教諭で、つまりは職場の同僚である。一緒にいる子どもたちも、中学生の四人は小学校時代に、そしてテンは今現在指導を受けている教え子という立場だ。穏やかな人柄の葉村は生徒、保護者問わず信頼されており、サイたちも含めて卒業生が気軽に彼の下を訪ねてくることも多いのだとか。年齢はたしか「アラフィフのおっさんです」と、以前に笑いながら教えてくれた。

 トレードマークの口ひげを持ち上げて、葉村も小さく笑う。


「だろうね。私も三十分ほど前に寄ってみたけど、規制のテープとブルーシートが張られてて、全然わからなかったんだ。顔見知りの漁師さんに聞いたら、七時頃からもうそんな感じだったみたいだよ」


 やはり町内に住む彼もまた、死体発見のニュースを知って神社に立ち寄ったようだ。


「なら、本当に早くに見つかったんですね」


 杉野さんから聞いた言葉を、ケイトは思い出した。たしか彼女も、神社が「朝早くからてんやわんや」だったらしいと語っていた。


「なんにせよ怖いし、嫌だよね。学校でもまたあらためて話があるだろうけど、みんなもくれぐれも気を付けて」

「はい!」


 いち早くシーが返事をすると、「相変わらずシーちゃんは元気だなあ」と、葉村は場の雰囲気を切り替えるように顔をほころばせた。


「ダンス部も頑張ってる?」

「はい。今年も文化祭で踊るし、その前に小野原で発表会もやるんです」

「へえ。そうだ、部活じゃないけど、お祭りの奉納演舞もあるよね」

「はい。けど、これだとさすがに難しいかなあ。まだ今年の練習は始まってないし」


 ケイトも以前聞いたのだが、ルックスが良くて踊りも上手なシーは、いくつかの町内会から選抜された女性たちによる『御林祭り奉納演舞』のメンバーに、なんと小学五年のときから抜擢されているのだという。祭り自体はここ二年ほど開催されていないが、感染症が終息した昨年末頃から、近隣の市町村でのイベントに呼ばれて、再び踊りを披露したりしているのだとか。


「奉納演舞のときのシー、いつもと違っておしとやかで、すっごく綺麗なんですよ」


 などと力説するセイに、「いつもと違っては余計だから!」とすかさずつっこんでいたのもよく覚えている。ともあれ、本人もダンス部に入るくらい踊りが好きだし、その大役を誇りに思ってもいるようだ。

 そんなシーが、大きな目で可愛らしく葉村に訴えかける。


「お祭りはないかもしれないけど、葉村先生、文化祭にはまた来てくれるんでしょう?」

「うん。私もOBだし、何より君たち教え子が頑張ってる姿を見たいからね。サイ君とホウちゃんは学級委員だったっけ。準備とか運営とか大変だろうけど、頑張って」


 どうやら葉村は、幸浜中の文化祭に毎年顔を出しているようだ。本人の言葉通り、彼もまた幸浜育ちの自称「幸浜っ子」で、東京で寮に入っていた大学時代を除き、人生のほとんどをこの町で暮らしてきたとも聞く。


「ありがとうございます」

「手が足りなかったら、遊び回ってるセイにも手伝わせますから」


 サイとホウが笑顔で答えると、名前を出されたセイが、わざとらしく頬をふくらませた。


「遊び回ってなんてないよ! 英語研究部の発表だってあるもん! ですよね、ケイ先生」

「あら、そうなの? 私は初めてだから、よく知らなくて」

「そうなんです! もう、ひどいなあ」


 厚みのある、ひそかにケイトが「セクシーだなあ」と思っている唇をとがらせて、セイが抗議してくる。褐色の肌からもわかるが彼女はアフリカ系とのハーフであり、血筋もあってか特に英語の学習に熱心だ。部活もケイトが副顧問を務める、その名もずばり『英語研究部』に所属。名作文学を原文で読んだり、日本のアニメ映画を自分たちで英語に吹き替えてみたりと積極的に活動している。


「ははは。もちろんセイちゃんの発表も楽しみにしてるよ。じゃあ、私はこれで。テン君とケイ先生は、また学校で」

「はい」

「さようなら」


 サンダル履きの足で、葉村はのんびりと港の方へ去っていった。




「ケイ先生」


 隣に付いたサイが低い声で尋ねてきたのは、葉村と別れ、遊歩道を数分ほど歩いてからだった。左手には岩場の先に、きらきらと輝く水平線。右手には大きな岩を組み合わせた、防波堤も兼ねた壁が続いている。

 太平洋に突き出た「幸浜半島」がそのまま町になっている幸浜は、かつては石の産地としても有名だったそうだ。ここでしか採取できない『(しよう)(ちく)(いし)』は、皇室御用達にもなったほどのブランド石なのだとか。

 さすがに松竹石を使ってはいないだろうけど、と思いながら石壁にのんびり目をやっていたケイトは、サイに呼ばれて我に返った。


「うん? 何?」


 左手側、海岸寄りを歩くサイが、反対側のホウにもちらりと視線を向けてから、抑えた声音のまま続ける。


「事件のことですけど――」

「うん」


 やっぱり気になるんだろうな、とケイトは内心で納得しながら彼の顔を見た。安全面に関してだけではなく、好奇心も刺激されてしまうのは致し方のないことだ。大人の自分ですら、多少はそういう部分があるのだから。

 くっきりした眉を少し寄せて、サイは続けた。


「殺されたの、『たかだや旅館』の人みたいですね」

「え? ああ、どうなんだろう。そんなこと言ってる人もいたけど」


 そういえば神社で、「高田谷さんの息子」とかなんとかいう言葉も聞こえたことを、ケイトは思い出した。サイが言う「たかだや旅館」とは、つまりそこのことだろう。


「サイ君、まさか知り合いとか?」


 心配になって問い質すと、サイは「いえ」と即座に首を振った。


「多分、僕らのなかで知り合いはいないと思います。小学校のそばにある古い旅館ですけど、今は営業してるかどうかも怪しいんじゃないかな」

「ケイ先生、見たことないですか。(ない)(とう)商店さんのすぐそばです。看板も出てますよ」


 ホウも近くに来て、ちらりと前方を確認しつつ話に加わってきた。仲良く手を繋いで数メートル先を行くシーとサイ、テンに聞こえないよう気遣ってのことだろう。


「ああ、言われてみればたしかに、そんな看板があったかも。でも私、内藤商店さんもまだ入ったことないから」

「相変わらず並んでますもんね。じつは私も、まだ食べたことないんです。食いしん坊のシーはオープンしてすぐの頃、三十分以上並んで食べてきたって自慢してましたけど」


 ホウが苦笑とともに語る『内藤商店』は、幸浜に移住してきた芸能人が開いたラーメン屋である。人気のお笑い芸人だったが、一念発起して本格的に修行を積んでラーメン屋の親父となり、今ではそちらのキャリアでも有名らしい。そして昨年、奥さんの実家にほど近い幸浜を気に入って移住し、この地で新たに店を開いたのだとか。


「美味しいもんねえ、日本のラーメン」


 しみじみと頷くケイトの口調に、ホウだけでなく、真面目な顔で話を切り出したはずのサイまでもが、小さく吹き出してしまっている。日本のラーメンやカレーが外国人に大人気なのは、よく知られた話だ。もちろんケイトも例外ではない。


「あ、ごめんね、サイ君。その、たかだや旅館の話だっけ」


 ハッと口に手を当て、ケイトはあらためてサイを見た。彼も表情を引き締め、「ええ」と脱線しかけたトークを戻してくれる。


「来る前に僕も、SNSや掲示板をいくつか調べてみました。なので、あくまでもネットからの情報になりますけど、被害者はたかだや旅館の次男に当たる、五十歳くらいのおじさんみたいです。発見者は神主さんの奥さん。朝の掃除をしようと鳥居のそばまで下りてきたら、頭から血を流している死体が目に飛び込んできたそうです。近くに血の付いた大きな石もあったので、死因はそれによる撲殺――つまり殴って殺したって説が有力ですが、もちろん警察の発表を待たないと、はっきりしたことは言えませんね」

「そ、そう」


 すらすらと、しかも知らない日本語まで丁寧に説明され、ケイトとしては曖昧に返事をするしかなかった。サイらしいと言えばらしいが、どこまでも落ち着いており、まるで自身が警察関係者のようですらある。


「ちなみに僕が知ったのは、ホウからメッセージをもらったからです」


 自分を挟んで視線を送られたホウが、一つ頷いてあとを受ける。


「うちのお父さんが、魚市場で漁師さんから聞いてきたんです。神社で死体が見つかったみたいだって。そうしたら実際、すぐにパトカーが家の前を走っていって」

「なるほど」


 なんとか冷静さを取り戻したケイトも、二度三度と頷きを返した。

 ホウの家が営む相泉旅館は神社からもほど近く、通りを挟んで幸浜港に面している。売りは、魚市場で直接仕入れてくる海の幸を使った磯料理。お陰様で固定客が付いており、町そのものが廃れつつある現在も、なんとか商売を継続できているのだと、いつだったかホウ自身が教えてくれた。

 ちなみに、手が空いているときはホウも家業を手伝っているが、「バイト代としてもらえる、臨時のお小遣いが目当てなんですけどね」と、いたずらっぽい笑顔で語っていたのもよく覚えている。


「つまり、ヒガイシャは地元の人ってわけね」


 ふーん、とケイトは小さく唸った。何か恨みを買うような出来事があったのだろうか。それともまさか、通り魔(これもドラマで覚えた言葉だ)的な犯行か。だとしたら、ますますこの子たちの安全に気を配らなければ。


「あれ?」


 ホウ、サイ、そして前方の三人へと視線を巡らせたところで、ケイトは別のことも思い出した。被害者と思しき「高田谷さんの息子」について、神社ではたしかこんな台詞も出ていなかったか。「ずーっとフラフラしてた」とか、「幸浜に戻ってきてたんだ」とか。

 ということは幸浜出身ではあるものの、しばらく町にはいなかった人物なのだろう。さらに言えば、そのやり取りしか聞いてはいないが、周囲にあまり良い印象を持たれていなかったのかもしれない。


「DQN、ってやつかしら」


 日本語のスラングを思い浮かべ、なんて読むんだっけ、と視線を宙にめぐらせたところで、聞こえていたらしいサイが再び笑いながら教えてくれた。


()(きゅ)()ですね。若いのはヤンキーとも言います。ケイ先生、本当に変な日本語まで詳しいですね」

「ああ、イエス。ありがとう。そうそう、ドキュン。アウトローを気取る、バッドな人のことよね」

「はい。私たちの世代はさすがにもう絶滅してますけど、この通りの田舎だし、昔の幸浜にはいっぱい生息してたみたいですよ」


 同じく笑ってホウが続く。絶滅や生息といった言葉はわかるので、まるで大昔の生き物のような扱いに、ケイトも釣られて笑ってしまった。


「地元に戻ってきたバッドガイ、か」


 なるほど、と笑顔を収めて考える。


 ――だったらリベンジとかアベンジされる可能性も、たしかにあるかも。


 いずれにせよ詳細は、警察や町役場からの発表を待つしかない。そして何より自分の役割は、教師として子どもたちを物騒な事件から遠ざけ、守ることだ。


 こんなにいい子たちなんだもの。


 視線を前方に向ける。原生林に覆われた幸浜半島の先端部が、海と空をバックにくっきりと映えている。


「ケイ先生、テンがおっきな蟹さんを捕まえましたー!」


 セイの声。いつの間にか二十メートル以上も先に行っていた残る三人の子どもたちが、岩の上から元気に手を振ってくる。


「凄いね! 私にも見せて!」


 自身も大きく手を振り返し、ケイトは前方へと足を速めた。

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