ギリーの引き金
984年の頃だ、俺の全てを変えた切っ掛けは。
俺が才能か幸福か、そのどちらかを選ぶための試練だったんだろ。
「いいか、その床に落ちているコルトM1861ネイビーはお前の選択肢。私はそれを提示するだけだ」
焼け野原と化した俺の故郷だった村の広場で、奴は地面に落ちたその鉄塊を尻もちをついた俺と共に見下ろしていた。
地面に落ちたその「えむいちはちろくいち」とやらの先端からは未だ硝煙が漂っている。
その硝煙の元凶が何かと聞かれれば、自分しか心当たりが無い。
「お前は、自らの意志で銃を取り引き金を引いた。一人撃ち殺しただけならまだ引き返せる」
洒落た横巻ロールの金髪を揺らしながらそのエルフの男は右隣に横たわっている男の死体に視線を移す。
頭に人差し指程の径の風穴が開いており、後頭部はまるでメイスか何かで砕かれたかのようにグズグズに崩れてしまっている。
そしてこれは間違い無い、俺がやったものだった。
使い方も分からない未知の鉄塊を使って奴の頭に風穴を開けたのだ。
その時の爆音で未だに鼓膜が痛む。
「さあどうする。そのままここを離れ、凡人として生きるかもしくは……」
縦ロール野郎は地面に落ちたM1861を手に取り、俺に差し出す。
「もう一度、引き金を引くかだ。ギリ―・ドルナゾッテ」