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シンデレラが迎えに来た8




KADOMIYA STUDIOSはどこまでも高い塀が続いていて、どことなくピリッとした空気を感じたが、中に入ると緑があちこちにあり、建物はどれも高くデカいが開放感があった。

ここであの映画やドラマが撮影されていると思うと胸のざわめきが止まらない。



撮影の間に一つの建物に入り、隅の方で見学させてもらった。

まだまだ暑い外と違って撮影スタジオはかなり冷房が効いていて、むしろ寒いくらいだった。


「結構冷えるでヤンスな…」


「うん、たぶん役者さんに当たるライトが暑いからそっちに合わせて涼しくなってるんだと思う…」


「なるほど…余計な汗がカメラに映るのは良くないでヤンスな」


ライトが照らす向こう側にも、こちら側にも沢山のスタッフが動き回っていた。

「アクション」の声がかかっていない間も仕事が大量にあるのだ。



「うっそ…、あれって女優の朝田明里さん?!」


「めっちゃ可愛いでヤンス…」


「オーラがあるよね…」


朝田明里は2年前の朝の連続ドラマで主役を演じて大ブレイクを果たした、今をときめく女優の1人だ。

白く透き通る肌と色素の薄い瞳が印象的で、日焼け止めのCMや清涼飲料水のCMなどに出演し、さらには前年のCM女王に輝き『 清楚の代名詞 』と言われている。


「大人気少女漫画が原作で、学校では目立たない普通の女の子のヒロインが大人気アイドルと恋愛するというあらすじです」


「あんな美女なのに学校では目立たないってありえないでヤンスよ!」


「映画やらドラマではあるあるの設定だよ…」


セットの上の彼女はリボンが水色の黒いセーラー服に身を包み、メイクさんに前髪を整えてもらっている。

目が合った時にニコっと笑うと、数多くのイケメンや美女と触れ合っているであろうメイクさんが耳まで真っ赤にしていた。


「世糸乃様とは違うタイプの美女ですナ…」


「……え!監督って、もしかして木越貞夫さん!?」


「さすが憑依ガールですね」


白髪混じりの短髪をたまに掻きむしりながら、台本を持ってカメラマンに指示を出している。

名監督だが威圧感はなく、少し猫背なところが親近感がわく。


「だよね、だよね!!漫画原作の映画を数多く手掛けてる!

しかも興行的にもいつも成功してる」


「木越貞夫監督はうちでもよくメガホンを取ってくれています。

漫画原作は、原作者やファンがキャラクターに強いイメージを持っているので映像化が難しいのですが、木越監督は原作を尊重してくれるので安心して任せることができますね」


「木越監督といえば、私10年くらい前の『シザー&ドール』ってドラマめっちゃ好きだった!」


「ああ、あの子役がすごい有名なやつでアリマスな!」


「“駆け出し美容師”と“夜になると動き出す等身大市松人形”のコミカルな掛け合いも面白いけど、毎話毎話お客様の恨みつらみを鎮めるっていう陰陽師的な要素もあるっていう、なんでもアリで良い作品だったよね!!!」


好きな作品を語る時の一般的なオタク同様、早口で饒舌に語ってしまった。

周りにいたスタッフの何人かがこちらを見たため、小鳥の後ろに隠れた。





「それでは本番行きます!」





会議室風のセットの中で、セーラー服の朝田明里とスーツをビシッと着こなした中年女性が対面に座っていよいよ撮影が始まる。

朝田明里は目を閉じ、腹式呼吸を繰り返し、役に入り込み感情を引き出している様子だった。

先ほどまでのエネルギーが渦巻く喧騒としていた空気が一気に引き締まる。






「シーン28、1の1」




「アクション!!!」

カチンコの音が鋭く響き渡る。





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