シンデレラが迎えに来た5
小鳥にグイグイ引っ張られ、あれよあれよという間にリムジンに揺られていた。
金沢にリムジン…?東京で乗れる車がなぜここに…?これは誘拐ではないのか…?
まず最初にリムジンは小鳥の家に寄った。
世糸乃とお付きの人が、小鳥のご両親に名刺を渡して挨拶をしていた。
名刺の中身は見えなかったが、これから遠出するからその許可取りのようだった。
その後、小鳥が私の家を教えたので、世糸乃が私の母に挨拶をしていた。
内心、このよくわからない美人の言うことを聞かずに止めてくれるのではと期待していたが
「いってらっしゃい!」とお見送りされてしまった…。
母よ、私はあなたに失望しましたよ…。
ぐるぐる思考を巡らせている間にリムジンから飛行機に乗っていた。
しかも世糸乃のプライベートジェットだと言う。
どこの大金持ちなんだ…?SPらしき男性は1人席に、私たちは対面式の革張りのシートに座った。
(正確に言うと私は小鳥にこの座席に押し込まれたのだ)
座り心地の良い椅子で、居心地の悪い私を差し置いて世糸乃の正面を陣取った小鳥は次々と質問を浴びせる。
「世糸乃様、いつも動画楽しく拝見しております!」
「本当ですか?ありがとうございます!嬉しいです!」
「いつもお美しくて、目の保養でヤンス!美の秘訣はなんでヤンスか?」
お前はどこぞの美容雑誌ライターか。
「そうですね…運動は毎日欠かさずにしていますね。筋トレもしますし、有酸素運動は複数種類こなすことを心がけています」
うーん、なぜ解答までも完璧なのか…絶対用意してるだろコレ…
それにしても、なんだかんだ文句を言っていても、この世の存在が疑われるほどの美人はつい目が離せないものだ。
どのパーツも美しいしパーツの配置も完璧だが、とにかく目が印象的だ。
私は映画やドラマなどの映像媒体において
「輝いている俳優の絶対条件」に目があると思っている。
目は口ほどに物を言うというが、まさにそれだ。言葉にしていない感情や、言葉にした思いを増幅させるのは目の演技に他ならない。
世糸乃はそんな感情を表現できる目を持っているような気がする。
などと考えながら世糸乃をたまたま見ていた時に、目が合ってしまった。
すでに心拍数の高い心臓がさらに高鳴る。世糸乃は他人に見られているのはさも当然かのごとく、ニコっと微笑み話し始めた。
「みなさん何か飲まれます?お茶やジュースがありますよ。あ、奥寺さんはアイスのほうがいいですよね?」
「…ぇ……はい?」