04
アイリスはディナーの後、部屋に戻った。部屋の一角には、世代を超えて受け継がれてきた家具や飾り物が所狭しと並んでいる。彼女は椅子に座り、しばしの間、その空間を眺めていた。この部屋は、彼女にとっての秘密基地でもあり、自分のルーツを感じる場所でもあった。
薄明かりの中で、彼女は目の前に置かれている古い写真アルバムを手に取った。そのアルバムには、世代を超えて家族の歴史が刻まれている。アイリスはゆっくりとページをめくり始めた。最初のページには、彼女の曽祖父母の黒白の写真が。彼らはとても若く、アイリスの顔と似た部分を持っているように思えた。彼女の目が曽祖父の手に引き寄せられた。その手には、彼女の持っているのと同じ印が浮き出ていた。
「やっぱり、この印は家族に関連してるのかな…」とアイリスはつぶやいた。
次のページには、彼女の祖父母、そして彼女の両親の若いころの写真が。彼女はじっくりとそれぞれの手を確認したが、同じ印のようなものは見当たらなかった。そのことに疑問を抱きつつ、アイリスはさらにアルバムを進めた。
ページをめくるうち、彼女は家族の旅行の写真や日常の風景に心を温めながら、自分の家族の歴史を辿った。その中には、アイリスがまだ幼いころの写真もたくさん収められていた。しかし、どの写真にも彼女の手の印に関連するものは何も見当たらなかった。
アルバムの最後のページを開くと、一枚の古びた手紙が挟まれていた。その手紙は、彼女の名前、アイリス宛てに書かれていた。驚きながら、アイリスはその手紙を開いた。
「アイリスへ、
もし、この手紙を読む日が来たら、私はもうこの世にいないことでしょう。私はあなたの曽祖母、エレナと言います。あなたがこの手紙を手に取ったということは、その印についての真実を知りたいと思っているのでしょう。
私たちの家族には、代々この印を持つ者が生まれます。しかし、その意味や起源、そして力については、私たちも完全には理解していません。しかし、一つだけ確かなことは、その印を持つ者が、特別な力を持つということです。
あなたがどんな運命を迎えるのか、私にはわかりません。しかし、あなたの心の中にある正義と愛を忘れずに、前に進んでください。
愛を込めて、エレナ」
アイリスは涙を流しながら手紙を読み終えた。曽祖母からの言葉に深く心を打たれ、胸が熱くなった。完全な答えは得られなかったが、この手紙を通じて家族の愛と支えを改めて感じた。アイリスは手紙を大切にアルバムに戻し、部屋の窓を開けると、夜の静けさの中、星空を見上げた。
「おばあさま、ありがとう…。」アイリスは星空に語りかけるようにつぶやいた。彼女の旅はまだ始まったばかりだった。