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アイリスが運命の石に触れた瞬間、彼女の意識は時空を超え、遥か昔の光景に引き寄せられた。眼前に広がるのは、緑豊かな森と青い空の下、一人の少女が笑顔で駆ける姿だった。その少女の顔はアイリス自身のものと酷似していた。
彼女はファローネアの古代の街並みを駆け巡り、周囲の人々と楽しげに交流していた。アイリスはその少女が「リリア」と呼ばれることを直感的に感じ取った。リリアはファローネアの王家の一員であり、その時代における運命の石の守護者でもあったことが彼女の意識に伝わってきた。
リリアの日常の中で、彼女が運命の石の前で祈りを捧げる場面が続いた。その際、アイリスの手の甲に刻まれている模様が、リリアの手にも浮かび上がっていることがわかった。リリアは運命の石と深い絆で結ばれており、ファローネアの平和を守るための大きな役割を果たしていたのだ。
しかし、その平和も長くは続かなかった。突如として現れた闇の勢力が、ファローネアの街を襲撃し、運命の石を狙ってきた。リリアは石を守るため、自らの命をかけて戦ったが、その中で彼女は深い傷を負い、命を落としてしまう。
その後、運命の石はリリアの家族によって隠され、アイリスの世代までその存在が忘れ去られてしまった。しかし、リリアの遺志は、アイリスに継がれることとなり、彼女は再び運命の石の守護者として目覚める運命にあった。
時空を超えた旅が終わり、アイリスの意識は再び遺跡の中心部へと戻った。彼女の目には涙が滲んでいた。リリアの犠牲、その重み、そして彼女自身の運命と役割。すべてが一瞬の中で理解されたのだ。
ロレンが心配そうにアイリスの顔を覗き込んだ。「大丈夫か、アイリス。」
アイリスは深く息を吸い込み、涙を拭いた。「リリアという女性の記憶を見たわ。彼女は私の先祖で、運命の石の前の守護者だった。今、私が継ぐべき運命と役割を理解した。」
ロレンは彼女の言葉に頷いた。「それは重大な使命だ。しかし、私たちならば必ず守り抜くことができる。」
アイリスは運命の石をしっかりと握ったまま、その温もりと共鳴を感じながら、新たなる運命との対峙を決意した。




