『黄金のプレスマン』
小アジアと呼ばれるあたり、…今のトルコのあたりに、プリュギアという国がありました。
…違います。月にかわってお仕置きするやつじゃないです。それはセーラームーンです。…プリキュアですらありません。
そんなことはどうでもいいのです。
ミダス王は、プリュギアの王でした。
噴水を備え、季節ごとの花々が咲く美しい宮殿に住んでいました。
ミダス王が美しい宮殿にこだわったのは、山や花や水の聖霊シレノスを招きたいからでした。
シレノスは、美しいものに目がないので、しばしば、山を下りて、ミダス王の宮殿に立ち寄りました。
ミダス王は、どうしても、シレノスに会いたかったので、というのは、シレノスは大層博識で、また、面白い話をたくさん知っているという評判だったので、シレノスが気に入りそうな宮殿をつくり上げたのでした。
シレノスは、ある日、いつものようにミダス王の宮殿に来て、咲き誇る花々を楽しんでいましたが、のどが乾いたので、噴水の水を飲んだところ、そこに流れていたのは水ではなく酒でした。
シレノスは、思うさま酒を飲み、そのままそこへ寝入ってしまったので、ミダス王は、家臣に命じて、シレノスを客間に運ばせると、目覚めたらすぐに知らせるように言いつけ、祝宴の支度をさせました。
シレノスが目覚めると、ミダス王は、飲み放題食べ放題の宴を開き、さまざまな話を聞きました。
十日ほど、古今東西の話を聞いたミダス王は、シレノスの縁者であるディオニュソス神にシレノスを送り届け、大層感謝したディオニュソス神から、何でも望みをかなえようと言われると、手に触れたものを何でも黄金に変える力を願いました。
ディオニュソス神は、ミダス王に、願いどおりの力を授けました。ミダス王は大喜びです。
宮殿に戻ったミダス王は、コックに命じて最高の料理をつくらせました。ミダス王は、ナイフとフォークを持ったとき、ディオニュソス神の偉大さを知りました。ナイフもフォークも、黄金に変わったのです。
ミダス王が喜びの余り、王女の手を握ったとき、王女は黄金に変わりました。我が娘ながら美しいと思いましたが、それを恥ずかしがってはにかむ娘の顔は、もう見られませんでした。
パンも皿もテーブルも、黄金に変わりました。
つらかったのはお風呂です。湯加減をみようとお湯に手を触れたとき、お湯は黄金に変わってしまったのです。ちなみにバスタオルも。変な感じの、裸の王様です。
ミダス王は、ディオニュソス神に許しを請いました。
ディオニュソス神は、宮殿の近くを流れるパクトロス川でみそぎをすれば、もとに戻ると告げ、ミダス王は言われたとおりにしました。
パクトロス川で、砂金がとれるのは、このためだとか。
教訓:ミダス王が触ったプレスマンが、黄金のプレスマンである。