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公務当日、朝靄が立ち込める中エマーリエは詰め込み終わった馬車を眺めて両腕を組んだ。


「凄い量の荷物ね」


荷物を載せてある馬車は数台だ。

馬車を囲むように騎士達の馬が囲んでいる。


「オズワルドとマドリーヌ嬢、そして俺達が移動するから警備も荷物もそれなりになるのは当たり前だろう」


「移動するだけでも大変なのね」


アラン王子の言葉にエマーリエは頷いた。


「一応聞くが、公務の目的と日数は把握しているか?」


無表情にアラン王子に見つめられてエマーリエは得意げに頷いて見せた。


「もちろんですよ。アラン様に口酸っぱく言われましたからね。期間は3日。移動、領地に到着。2日目は領主の息子の結婚式に出席後パーティー出席、3日目に城に帰る、ですよね」


「領主の名前は?新婦の名前は?」


「ん?」


アラン王子に聞かれてエマーリエは首を傾げて固まった。

昨日知らされて、領主の名前までは憶えていない。

アラン王子が口を開く前に、いつの間にか来たマドリーヌが答えてくれる。


「ブロッグ家の結婚式で、お婿さんはサンディー、お嫁さんはメリッサですわ。お姉さま」


「あー、確かにそんな名前でしたね」


エマーリエが頷くとマドリーヌはニッコリと微笑んで膝を折って挨拶をする。


「おはようございます。アラン王子、エマーリエお姉さま。数日間どうぞよろしくお願いいたします」


「おはようございます。こちらこそ、慣れない公務なので迷惑をかけるかもしれないけれどよろしくお願いします」


エマーリエも挨拶を返す。


「何でも聞いてくださいね、お姉さま。では失礼いたします」


マドリーヌが去っていくと、オズワルドが挨拶をしにやってきた。


「おはようございます。アラン兄様、エマーリエさん」


「おはようございます」


アラン王子は頷くだけなので、エマーリエがオズワルドに挨拶を返した。

金色のふわふわの髪の毛が風になびいていて今日もとても可愛らしい。


「数日間よろしくお願いします。お兄様と一緒の公務は久々なので僕嬉しいです」


「そうか」


「では、失礼します」


丁寧にあいさつをして、マドリーヌの後を追って乗り込む馬車へと走って行った。

走り方もちょこちょこしていて小動物のようでかわいい。


「本当に似ていない兄弟ですね」


無表情なアラン王子といつもニコニコ可愛らしいオズワルドは対照的だ。

可愛らしいよりはカッコいいアラン王子の方が好みなので命の危機が視えるのがアラン王子でよかった。


「余計なお世話だ。俺は父方の祖父にそっくりらしいからな」


馬車に乗り込もうとするエマーリエにアラン王子は手を貸しながら言った。


「わぁ、凄いふかふかな座席ですね。これなら長時間の移動も苦ではないですね」


馬車の中はエマーリエが想像していたよりも広く、アラン王子が乗り込んできても圧迫感を感じない。

前に座るアラン王子は手に持っていた剣を窓の下に立てかけた。


「ずっと疑問だったんですけれど、アラン様は剣を身に着けていることが多いですよね。王子様なのに、オズワルド様は持っていないですよね」


「趣味だな」


「趣味?」


以外な言葉が返ってきたと、エマーリエは聞き返す。


「騎士になるのが夢だったが無理だから剣だけは鍛えている」


また、また以外な答えにエマーリエは衣裳部屋の騎士のような服が置いてあったのを思い出して頷いた。


「剣は強いのですか?」


「さぁな」


ぶっきらぼうに答えてアラン王子は動き出した馬車の窓から外を眺めている。


「騎士と一緒に訓練したりするんですか?」


エマーリエの疑問に、アラン王子は視線を向けた。


「まだ聞くのか」


「だって、興味があるから」


特に好きな人の事はと心の中で付け加える。


「業務に支障ないぐらいには参加しているが」


「それなら何があっても安心ですね」


もし何者かに襲われてもアラン王子が守ってくれるかもしれない。

ニッコリと笑うエマーリエにアラン王子はため息を付いた。


「それでも、お前の見た未来では俺は何者かに刺されているらしいがな」


「確かに!」


エマーリエは複数の人に刺されているアラン王子の姿を思い出して頷いた。

何度思い出しても辛い映像だが、アラン王子と自分の命も危ないのだ。

何か回避できることはないかと、もう一度よく思い出そうとするがやはり新しいことは思い出せなかった。


「なんで、数人の人に刺されたのですかね」


「考えられる状況としては、何かの式典中に回りを敵に囲まれたか、我が兵に裏切者が居るかだな。クーデター的な何かが起きるのか」


馬車の椅子に深く腰掛けてアラン王子は呟いた。


「クーデター・・・。誰かが王位を狙っているとかですかね」


「色々考えたが、その線は薄いと思う。俺も弟も王位には興味が無い。他の親戚関係も怪しい動きをしているものは居ないのだが・・・もう少し探ってみる必要があるかもしれないな」


「そうですね、私たちの命がかかっていますからね」


「今回はただの田舎の領主の結婚式だから心配はないだろう。それより、覚えることがありそうだな」


アラン王子はこれから行く領地の事がまとめられた資料を差し出した。

昨日、渡されて読み込んだがきちんと覚えていなかったようだ。

エマーリエは顔をしかめて書類を受け取る。


「ううっ、手が痛い」


治療のおかげで痛みもだいぶ引いてはいたが手のせいにして回避しようとするエマーリエだったが、アラン王子には通じない。


「俺が徹底的に覚えさせてやろうか」


「自分で頑張ります」


アラン王子がどうやって覚えさせようとするかは興味があったが、なんだか恐ろしい気がしてエマーリエは資料に目を通し始めた。

エマーリエが思うよりも覚えることは多い。

ブツブツと呟きながら資料とにらめっこをするエマーリエにアラン王子は軽く微笑んだ。




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