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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第2章 高校1年夏
97/252

第2-40 夢への第一歩

9回裏、稲川実業の攻撃


先頭打者は1番からの好打順であったが、1番、2番と打ち取られる。

ツーアウトランナー無し


祐輔も延長を見通し、次の回に備えて肩を温める為に、控え捕手の森山を連れて軽くキャッチボールを開始した。


3番の足利が左打席に入る。


足利も本塁打を打てるパワーもテクニックも兼ね揃っている、松原が居なければ確実に4番打者であってであろう。

ただこの試合では、左投手の柏木に押さえ込まれていて、いい所を魅せれていない。柏木のストレートも速いのだが、それと同じくらいスライダーの切れが良くて、左打者は手こずっている状況なのだ。さすがプロも注目しているだけあって、この9回まで失投も無く球威も変化球の切れも持続している。


まさに稲川実業の甲子園への道に立ちはだかる大きな大きな壁となっている。


審判のプレイがかかり、柏木が足利に対して第一球を投げた。


インコースからアウトコース低めに流れる様なスライダーが決まり、ストライクが先行した。


続く第2球目


アウトコース低めにストレートを投げ込んだ。


足利がボールに向かってフルスイング


ガツっ!


バットの鈍い音が聞こえ、ボールはショートとレフトの間にフラフラとフライが上がり、レフト前に落ちた。


この試合2本目のヒットにベンチが盛り上がる。


「4番サード松原」


場内アナウンスが流れると、松原への期待なのだろう、スタンドがざわめき始める。


久我海のキャッチャーがマウンドに向かう。


しかし柏木は、

「そんな心配するな。中学の時は有名だったかも知れないが、所詮は中学生の時の事なんだから、軽く俺が捻り潰してやるよ」


マウンドに集まってきた内野手も、柏木の言葉を聞き


「まあそうだな、お前はプロ野球に行く選手なんだから、中学の時の怪物なんて気にする事無いよな。じゃあ、しっかり捻り潰せよ!」


キャッチャーも内野手も定位置に戻っていく。1塁ランナーを返すには長打が必要だ。その為か外野手はかなり深い守備位置に守りを変えている。

この守備位置では、長打は相当難しい、ホームランを除いては・・・


バックネット裏では

「松原君打って!」

と手を合わせてお願いする彩香の姿が目に入る。

耕太「ここで小鳥ちゃんの声援があればな・・・」

勝利はスタンドを見廻すが「やっぱり居ないね。」

耕太「そうだな、でも今日の松原は前の試合と違って集中しているから、長打は難しいけど、ヒットは打てるんじゃないか?」

近藤「ヒットだと点数は入らないかもな」


その言葉にテンションは下がり、言葉を失った。


祐輔もキャッチボールをしながら、戦況を見つめる。


「金ちゃん、打って」


ベンチ横のスタンドから、女性の声がした。

とても打席まで届く様な声では無いのだが、祐輔の耳に響いてきた。


雄輔はスタンドを見ると、タオルを握りしめて祈る様に目を瞑っている。


そして、松原が右打席に入った。


バットを見つめて、


ヨシッ!


そしてバットを構えて、柏木が投げるのを待ち構える。


セットポジションから、第一球を投げた。


ボールはアウトコース低めから鋭くベースに向かって曲がる。

見送れば完全にボールになる低い球だ!


「金ちゃん、打って!」


(小鳥・・・)


完全にボールになる球に向かってフルスイングする。


カキーン!


鋭い金属音が球場に響く。


球場が一瞬、時が止まったかの様に静まり返る。


打球は、バックスクリーンに向かって一直線に飛んで行く。


松原は打球に向かって


「いけー!」と叫んだ。


同じ時、スタンドの女性も立ち上がり


「いけー!」

と大声でボールに向かって叫んだ。


ボールはバックスクリーンに飛び込んで行った。


バックネット裏のスタンドでは、観戦に行った7人が喜びを爆発していた。


彩香は泣きながら

「良かった。これで一歩近付いたわ」


その言葉に不思議そうな顔をして、詩音が問い掛ける

「どう言う事?」


すると奈緒が彩香の代わりに、彩香と祐輔達が親とした約束を詩音に教えた。


詩音「全国一って、彩香の親もとんでもない難題を押し付けたわね。それって遠回しに認めないって事ではないの?」

「そうかも知れないけど、絶対に認めさせてやるんだから」

美希「でも、今日勝った久我海は、昨年の準優勝校よ。決して無理な話ではないわよ」

詩音「まあ今回は心城学園が甲子園に出ないから、優勝できるかもね」



今度は奈緒が不思議そうに詩音に話しかけた。

「詩音って、心城学園のファン?前から心城学園の事を気に掛けてるよね?」


詩音は顔を赤らめて

「それは・・奈緒がいるからに決まってるでしょ!」

と慌てて誤魔化した。


一方グラウンド内


次の回に備えてキャッチボールをしていた祐輔は、打球がバックスクリーンに飛び込んだと同時に、グローブを放り投げてダイヤモンドを回る松原をベンチ前で待ち構えた。


そして松原は三塁ベースを踏みホームへ向かう


「欽ちゃん」おめでとう!」


えっ?


(小鳥・・・)


声が聞こえた一塁側の稲川実業ベンチ上覗き込んだが小鳥の姿は見当たらなかった。


スタンドからホームベース上に目を移すと、メンバーがまだかまだかと松原を待ち構えている。

その姿を見て、失いかけた笑顔が戻り、笑顔でホームベースを踏んだ。


ホームベース上では、劇的な幕切れに選手の興奮はMAXに達していたが、審判に整列する様に注意されると、興奮さながら整列し終了の挨拶を行う。

そしてその後、校歌を歌い終わり、一塁側の稲川実業応援席に走って行き、整列して挨拶を行った。


スタンドも選手も何人も涙を流し 、この瞬間を喜んだのであった。


そしてTV局のインタビューも終わり、全員が帰りのバスに乗り込び球場を後にした。


祐輔と松原が二人掛けの席に座り、ウトウトと眠りそうになった時、祐輔の携帯が震える。


彩香だ


彩香からメッセージが送られて来た。


(祐輔、おめでとう。カッコ良かったよ)


メッセージを読み、ニヤけた表情をしていると松原が

「何、ニヤけてるんだよ?」

「あ〜これだよ」

とメッセージを見せた。


「そう言えば彼女の親に日本一の投手になる約束したんだよな?取り敢えず、甲子園に行く事を報告してきたら?」


「えっ?」


「明日休みだろ?行ってこいよ。ちゃんと向き合えるときに向き合っておいた方がいいと思う」


松原の言葉が重く聞こえる。


「そうだよな、行ってくるよ」


閉まった携帯を再度取り出して、彩香にメッセージを送った。


(明日、休みだから彩香の家に行ってもいいか?)


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