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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第2章 高校1年夏
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第2-34話 謎の観客

7月24日 稲川実業(準々決勝)


祐輔を応援するため、耕太、奈緒、彩香と何故か詩音も一緒に祐輔の応援に行くことになった。

詩音は直接球場に行った方が全然早いのだけど、みんなが待ち合わせしているマンション群のA棟前に詩音も来る事になっていた。


そして約束の時間になり、詩音を除いて待ち合わせ場所に集まった。


彩香「まったく、直接行った方が早いのに・・・」


すると、大きな高級車が待ち合わせ場所の近くの道路に停車して、後部ドアが開くと車から詩音が降りて私たちの所に駆け足でやってくる。


「ねえ、全員が乗れる車を用意してきたから、車で行きましょう?」


もちろん断る理由も無いし、この暑さを凌げるのであれば断るどころか大歓迎である。


4人は素直に喜びを口にした。


耕太「マジで!すっげえ嬉しいよ」


詩音の表情が緩み、ほのかに顔が赤くなる。


そして全員で車に乗り込む。


車内はとても快適で、あっという間に球場に到着した。


そして車を降りると、


耕太「熱っ!」


耕太の言葉に反応して、詩音が

「耕太君、大丈夫?」


その横で勝利が

「詩音さん大丈夫だよ。耕太の口癖みたいなもんだから」


あれ?

まったく勝利の言葉には反応せず、奈緒と彩香の所に歩いて行き、

「早く球場に入ろうよ」

と二人の腕にしがみついて、球場に誘導した。


奈緒「まだ試合開始まで30分ぐらいあるけど、どうする?」

耕太「ちょっと小腹が空いたな」

彩香「じゃあ、ファミレスでも行こうか?確か近くにファミレスがあったと思ったけど」


勝利「うん。じゃあファミレスに行こう」

とファミレスを探しながら歩き始めた。


そしてファミレスを見つけて、店に入ると6人掛けの席に座った。


耕太「俺、飯を食おうかな?」


すると詩音が

「私もメシ食おうかな?」



奈緒「詩音、ダメだよ、そんな言い方。男みたいよ」


彩香「耕太が、メシ食おうなんて言うからよ!はい言い直して」


耕太「分かったよ、ごはん食べようかな?」


彩香「はい、詩音も言い直す」


詩音は照れながら

「私もごはん食べようかな?」


詩音の態度を見て、奈緒が思わず微笑みながら「詩音って面白いね」


結局、耕太と詩音がランチを注文して、勝利はパンケーキ、女性群はフルーツパフェを頼んだ。


しばらくして


詩音と耕太に「今日のランチメニュー」の和風ハンバーグがテーブルに置かれ、そのすぐ後に女性陣が頼んだフルーツパフェが運ばれた。


詩音は明らかにハンバーグでは無くて、フルーツパフェが気になっている様子である。


奈緒「もしかして詩音はハンバーグでは無くて、フルーツパフェが食べたいんじゃないの?」


・・・・・ズバリだったのだろう、返事が無い。


奈緒「ハンバーグ辞めてフルーツパフェにすれば?勝利か耕太のどっちかが詩音のハンバーグを食べてあげてよ?」


勝利が「じゃあ僕が食べようかな?」


と言ったが、詩音は勝利の言葉を無視して、耕太の前にハンバーグを置いた。


わかりやすい


耕太「えっくれるの?本当に?」


詩音「うん。食べてくれる?」


耕太「やったー。いただきます」


詩音はまた顔が赤くなる。

詩音の表情を見て、奈緒と彩香が顔を見合わせて微笑んだ。



そして、食事を食べ終えた5人は、球場に向かった。


チケットを購入して、バックネット裏の席に陣取り、5人が固まって横に座る。

グランドでは、ちょうど練習が終わり、ホームベースを挟んで両チームが整列している所であった。


これから祐輔の準々決勝が始まる。


相手投手はこれといって凄い球を投げるような感じではない。しかし1,2番を打ち取り早くも2アウトとなってしまう。しかし3番足利のヒットが飛び出して、4番の松原が打席に入るとスタンドがざわめき始める。注目の高さがうかがえる。


そして松原も期待に応えてヒットを放つと、スタンドがまたざわつく。



隣にいた奈緒が小さい声で話し掛けてくる。


「ねえ勝利、前の子だけど、タオルを握って泣いてるわよ」


奈緒に言われて前の子を見ると、年齢は同じぐらいの女の子である。髪はョートカットで、眼は二重で少しキツイ眼をしている。体は細いのだが頬っぺたが少しふっくらとしている。そして掴んでいるタオルをじっくりと覗き込むと、昔流行ったヒーローの絵が描かれているタオルである事が分かった。


女子高校生には不釣り合いなタオルに疑問を抱く。


それにしても何で泣いているのだろう?


両チーム0点のまま2回を終えて、3回表の稲川実業の攻撃が始まる。

1アウトランナー1,2塁で松原の打順を迎える。


相手投手はアウトコース低めの球を自在に操り、分かっていても長打を打てるような球は投じない。

先程もきれいに流し打ちをしてヒットを打っていたので、この打席もバットスィングを見る限りヒットを狙っている事がうかがえる。


そして第1球目 予定通りアウトコースの低めを打ちにバットスィングを開始すると、いきなり前の女の子が立ち上がり、


「清ちゃん」と大声で叫んだ。


松原はバットを止める。前の女の子も恥ずかしがりながら、タオルで顔を隠して席に座った。


そして第2球目、アウトコース低めのボール球を、強引に打ちにいく。


ボールがバットに当たり、高い高いフライがライトに飛ぶ。


すると前の女の子が「入って!お願い入って!」


と大声で叫ぶ。


打球は、大きな放物線を描きながら、なんとライトスタンドの上段に吸い込まれていった。


スタンドの歓声がMAXとなる。


前の女の子は、恥ずかしそうに先程と同じようにタオルで顔を隠しながら、スタンドへの出入口に向かって歩き出した。


ホームインした松原は、スタンドに向かって何か言っていたが、歓声にかき消されて何を言っているのか聞き取れなかった。


祐輔の準々決勝は8回コールド勝ちとなり、後2回勝てば夢の甲子園への切符を掴めるところまで登りつめたのであった。


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