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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第2章 高校1年夏
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第2-29話 骨髄移植

勝利は全身麻酔で骨髄液の採取を行う手術を受けている。

全身麻酔下で、血液が造られる腸骨(骨盤)に専用の針で骨髄液を採取し、その骨髄液を私の体に点滴で取り込むのだ。


私より勝利の事が心配になる。採取が終わったら、また大会に参加すると聞いているけど、そんなに早く大会に出れるのだろうか?


点滴を見にきた看護師に確認する。

「骨髄採取をした人は、どれくらいで普通の生活に戻れるんですか?」


「入院は3日後に退院出来るけど、血液が正常に造られるのは2週間ぐらいかかると思うわよ」


「えっ1週間で正常に戻るのでは無いんですか?」


「感染症を確認するのは1週間だけど、2週間は安静にしていた方がいいわよ」



確か勝利は1週間後の試合で復活すると言っていた。ちゃんと先生に話したのだろうか?」


「あの、すいません。ちょっとお願いがあるんですけど?」


「何?」


「骨髄採取を受ける人が、1週間後の試合に出場すると言っていたんですけど、医師は知っているのか確認しといてもらっていいですか?」


「えっそれはちょっと危険だわ。後で先生に言っておくわ。

ただ莉乃ちゃんは、今は自分の体の事だけを考えてね」


「はい、ありがとうございます」



看護師が私を心配する気持ちは分かる。この手術を受けるまで、かなり強い抗癌剤の投与が行われていて、私の身体は体力も気力も限界に近かった。

それでも今の私は、勝利より授かる未来の種を絶対に無駄にしたくない、勝利との未来の為に、決して泣き言なんて言ってられない。


大事な野球の大会を欠場し、痛みを伴う手術を、私の為に受けてくれている勝利の気持ちを裏切る事なんて出来ない。


私、絶対に頑張るからね


「莉乃ちゃん、そろそろ時間よ」

看護師が入ってきて、骨髄移植の準備が出来たことを伝えられる。


医師「これから骨髄を点滴するからね。どうしても副作用が起こると思うけど、僕たちを信じてくれれば絶対に治してみせるからね」


医師の言葉に頷き

「はい。よろしくお願いします」


早速点滴の準備をする。


まるで輸血の様に、採取した勝利の骨髄液を私の中に入れる準備は完了し、いよいよ点滴が開始された。


入ってくる感覚は伝わらないが、勝利の想いが入ってくるのは伝わる。


勝利、ありがとう


私の体、頑張って!


自分の体に声を掛けた。


そして点滴が終わると医師が

「具合は悪く無いですか?」


「はい」


「ちゃんと血液が造られるまで、この部屋で過ごす事になる。菌が体に入らない様に外部の菌を防がないといけないからね。血液がきちんと造られるまで、なるべく面会も制限する事になるからね」


今までの孤独な期間を考えれば、それぐらい我慢出来るし、どんな副作用があろうと、私は耐えてみせる。医師に自分の決意を伝える様にしっかりと返事をする。


「はい、分かりました」



(耕太)


7月15日の激闘を終えて、次の4回戦は7月17日に荒田高校との試合が組まれている。


安川さんも今までフォームの指摘をしても受け入れなかったが、2回戦で打たれた事で、ようやくフォームの指摘を受け入れて改造を行った。

フォームを改造した事により、コントロールが数段良くなり、何とか戦える状態にはなってきた。

左投げの加藤も、一球一球感触を確かめながら投球練習を行った。


勝利が戻るまでは負けられない


プライドの高い安川さんも勝利だけ頼る事を認めたく無いのだろう

勝利が抜けてからは、今まで見た事が無いような熱気が伝わって来ているのであった。



7月17日


試合は真夏の太陽が激しく襲ってくる午後1時。


球場は雲一つ無い炎天下で両チームが試合前の挨拶を終えた。


1回表心城学園の攻撃


1番打者の本田が打席に入り、審判のプレイが掛かり、試合開始のサイレンが鳴り響きるなか第1球目を投げた。


真ん中に入ってくるストレートをフルスイングでボールを捉えた。打球はレフトとセンターの間を深々と破った。

打った本田はセカンドで止まった。


2番打者のセカンドの上野はきっちりと送りバントを決めると、3番の川田はセンター前にヒットを放ち、早くも先制点を奪う。

しかし心城学園の攻撃はここで終わらない。

続く近藤は今大会2本目のホームランを放ち、5番の俺もヒットで続き、更に6番の後藤、7番の大竹と連続安打で一気に5点を奪う。


前回の試合で澤田と対戦した事で、嘘みたいにボールがよく見える。


こうなると守備でもコーナーを突くピッチングに凡打の山が積まれ、終わってみれば12ー0の5回コールドで勝利を奪い取った。


やったー


グラウンドでは、まさかのコールド勝ちに喜びの輪が出来る。

スタンドの心城学園の応援団も歓喜に酔いしれた。


これならイケる!


監督とコーチも、次の試合に頭を切り替えた。


5回戦は、7月19日の土曜日であり、この後の試合の勝者と戦う事となる。

どちらもノーシード校だが、勿論、油断は禁物である。


心城学園は、この場に残り次の試合を観戦する事とした。


バックネット裏に陣取り、試合を観戦する。


俺の横には奈緒が、座っている。


初回の大山台高校の攻撃は、2アウトから3番4番の連続2塁打と5番打者のライト前ヒットで2点を先制する。


「クリーンアップは、抜け目が無いな」


奈緒が不思議そうな表情で質問する

「クリーンアップって何?」


「3、4、5番の中軸の事を言うんだよ。まだ野球を覚えて無いのか?」


照れ隠しで微笑みながら

「でもスコアはつけれる様になったわよ。でも専門用語は、分からないよ」


そうか、そういえば一生懸命スコアのつけ方を勉強してたもんな。


「そうか、野球用語で分からない事があったら何でも聞いてもいいぞ。俺が教えてやるからな」


すると満面の笑みで

「耕太ありがとう」


ダメだダメだダメだ!


また奈緒への想いが強くなってしまう。


高まる胸の鼓動を必死に抑えようと我慢していた。


近藤が近づいて来た

「あの投手、かなりいい球を投げるぞ!」


つい奈緒の事ばかり見ていて、大事な試合をうわの空で眺めていた俺は


「あっあ〜」


とうなづく事しか出来なかった。


そしてグラウンドを見ると、大山台高校のエースが球を投げた。


伸びのあるストレートがキャッチャーミットに収まる


ズボッ


こ、これはヤバイぞ


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