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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第2章 高校1年夏
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第2-23 恋の連鎖

7月8日(火)


(美希)

明日は心城学園の2回戦が15:00か

1回戦も応援に行けなかったので、2回戦は観に行きたい。

授業が終わり帰り道、彩香と詩音と駅に向かう

「ねえ、彩香?」

「何?」

「明日さあ、午後から一緒に休まない?」


すると詩音が、この話に飛びついた。

「私も行く!」

彩香「詩音は生徒会長なんだから、ズル休みはマズイでしょ!」

詩音「じゃあ、朝から休む」

美希「そうだね。それなら大丈夫だよ」

彩香「いやいやダメでしょ」

美希「じゃあ彩香、休んでよ」

彩香は根負けして頷いた。


よかった


近藤君に別れを告げた時に胸の締め付けられる感覚が私を襲った。

しかし、たまにLINEで連絡をとっているが、その時は締め付けられる感覚ではなく、どちらかと言うと暖かい気分になる。ただ今は、明日近藤君と会う事を考えると、あの時の胸の締め付けが襲ってきていた。


そして翌日


結局詩音は学校を休んだ。

私と彩香は昼から早退して、近藤君の試合を観に行く。試合開始15分前に球場に着くと、詩音が既にバックネット裏の席に座っていた。


詩音を見つけた彩香が大声で

「詩音」と呼びかけると、詩音も私達に気付いて手を振っている。


そしてバックスクリーンに、両チームの出場選手の名前が発表された。


彩香「あれ?勝利の名前が無いわ」

私は近藤君から聞いた事を伝える。

「3回戦で当たる高校との試合まで、小野は出ないみたいよ。」

彩香「そうなんだ。それにしても雨が降りそうな天気だね」


そう言えば近藤君は、雨が苦手と言ってた事を思い出す。どうしても投手が投げる時の雨が気になってしまうと言う。その意味はよく分からないけど、雨は苦手なのだけは記憶に残っていた。


近藤君の姿を見るのは、別れを告げた時以来なので、本当は私がいる事を知られたくなかったが、さすがに2回戦でこの天候だからなのか、両校の応援以外の観客は少ない。


試合開始のサイレンが鳴り響くと同時にバットの金属音が鳴り響く。

3人が同時に

「あっ!」


ボールがスタンドに入る。

詩音「あれってホームランだよね。ビックリしたわ、あんなに飛ぶんだね」


どうやら詩音は生で野球を観るのは初めてらしい。


その後も1点が追加される。


でもきっと大丈夫、2点なんて近藤君が何とかしてくれる。


しかし1回の裏は三者凡退で終了する。

詩音「ねえ、心城学園って弱いの?」

すると彩香が反論する。

彩香「そんな事ないわよ。甲子園で祐輔と対戦するチームなんだから!」

詩音「そうなんだ」

と意味が分からない感じだったが、納得した素振りをした。


2回の表に相手チームが1点を追加して、3ー0で向かえた2回裏の心城学園の攻撃


近藤君からだ


近藤君はまだ私達に気付いていない様子で、左打席に入った。


私の期待通り2塁打を放つ。


やったー


つい私は席を立ち上がって拍手を送ると、2塁ベース上の近藤君と目が合った様な感じがした。


すると私に向かって小さくガッツポーズを見せた。


野球をやっている時の近藤君って、あんなに楽しそうな顔をしてたっけ?


胸が締め付けられる感覚が私を襲った。


あれ?またこの感覚


そして続く秋山君の打席


激しい打球音が響き、レフトスタンドの中断に突き刺さった。


その光景に詩音が反応する


「わー凄い。あの人凄いわね」

と彩香に問いかける。

彩香もドヤ顔で、「凄いでしょ」

と幼馴染を誇った。


だが3回の表も2点取られてしまう。


5-2かあ、大丈夫かなぁ?


そして3回の裏

ランナー2塁で3番打者の打順の時に雨が降り始めてきた。


あっ雨


3番打者がヒットを放ち、1アウト1、3塁のチャンスだ。


そこで近藤君の打席が回ってきた。


ただ雨が少し強く降り出す。


私は心の声で

「頑張れ〜」

と近藤君に声援を送る。


チラッと私を見て打席に入る。


しかしフライを打ち上げてしまい、あえなくアウトになってしまう。


詩音「4番って1番凄い選手が打つんでは無かったっけ?」

彩香がその言葉に反応して

「きっと一番大事な所で打ってくれるわよ」

とフォローを入れてくれた。


続く秋山君がヒットを放ち、1点を入れた。

(5ー4)


詩音「あの人が4番の方がいいんじゃない」


私と近藤君の事を知らない詩音は、ズケズケと近藤君をデスる。


それにしても雨が気になる。

この球場は、観客もそんなに入る球場では無く、バックネット裏の座席も20列ぐらいしか無い。そのベンチの一番後方が通路になっていて、雨も当たらない形状になっている。

私達は雨が強くなってきたので、雨の当たらない後ろの通路に移動して、観戦を続ける事にしたのであった。


4回の表に心城学園の投手が交代した。


ヒットを打たれたものの、初めて0点に抑える。


その裏の心城学園の攻撃は、下位打線からの攻撃であったが、1番打者がタイムリーヒットを浴びせ1点を追加しだが、後続の2番打者がアウトになり攻撃が終わった。


彩香「6ー5かあ。このままだとまずいわね。」

詩音「何で?野球って9回まででは無いの?」

「5回を終えると試合は成立するんだけど、雨が強くなって試合の続行が不可能だと審判が判断したらその時点の点差で終了してしまうのよ」

詩音「サッカーとか雨でもやるのに、おかしいね」

彩香「それだけ雨でやる野球は危険だと言う事よ」


そして5回が始まる。

彩香「この回に点を取られたら、本当にマズイわ」


ところが1点を追加されて、2アウト2、3塁の危機に陥る。


彩香「これは本当にマズイわ。これ以上取られたら負けが確定しちゃうかも」


心城学園は小野君をリリーフに送り出す。


そして3球で三振に切って落とした。


同じく通路で観ていた高校生が

「何だ、あのピッチャー?」


詩音「あの小さい子って、奈緒が好きな子だよね?あんなに小さいのに、凄い速い球を投げるのね。それもソフトボールの投手みたいな投げ方で?」


また彩香がドヤ顔で

「だから言ったでしょ、凄いって」


詩音「でも、まだ負けてるわよ」


詩音の言う通りである。この雨の降り方からして、この回に逆転を出来なければ敗退が決まってしまう。


2点差かあ


打順は3番打者から始まり、3番打者がフォアボールで出塁した。


私はいてもたっても居られず、バックネット裏の一番前の席で立った。


今度は心の声で無く、大きな声で近藤君にゲキを飛ばす。


「近藤君、頑張って!」


近藤君は驚いた顔で私を見た。そして一瞬、笑みを浮かべた様な感じがした。


投手が投げる


近藤君がバットをフルスイングすると同時に金属音が鳴り響く


カキーン


これまで聞いた事の無い打球音が響き渡り、ボールはライトの最上段に突き刺さった。


私は傘を投げ捨て喜んだ。


近藤君は小さなガッツポーズを見せてダイヤモンドを廻っている。


そしてホームベースを踏む時、私を見て口を動かした。

声は聞こえなかったが、「ありがとう」と言っていたのが分かった。


あれ?


私はまた胸が締め付けられるように熱くなり、涙が溢れ出す。


この時、ハッキリと自分の気持ちが分かった。


私は近藤君を好きなんだと


近藤君がベンチに戻ったのを見届けて、私は屋根のある場所に移動する。


彩香とアイコンタクトをして、どうやら私の気持ちを察したらしい。


詩音「今の凄い打球だったわね。」


「うん。あれが4番の打球よ」

胸を張って答えた。


しかしまだ同点だ。


秋山君がヒットで出て、次の打者が送りバントをして、1アウト2塁


このぬかるんだグラウンドでは、ヒットでホームに帰るのは難しい。


あと2本もヒットは出るのだろうか?


そして次の打者が右中間へのヒットを放つと、2塁に居た秋山君がホームに突入する。


詩音「あっダメ!」

と詩音が身を乗り出して、真剣な表情でグラウンドを見つめる。


ホームベース上でクロスプレーになる

キャッチャーのタッチを寸前で交わして、秋山君がホームベースをタッチした


「セーフ!」


と審判の声が球場に響いた。


ホームベース上の秋山君が泥だらけで、大きなガッツポーズをすると、詩音が大きな声で


「やったー」


と大騒ぎをする。


まさか詩音が、野球を見てこんなに興奮するとは意外だった。

その意外な言葉も次の一言で理解した。


「私、あの人の事を好きになってしまったかも知れない。」


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