第2-16話 お嬢様
6月15日
今日は日曜日だけど、詩音が心城学園の練習に行きたいから一緒に行って欲しいとせがまれた。
特に用事が無かった私は、詩音のワガママに付き合う事となったのだが、美希は近藤くんとの事もあり、用事があると言って誘いを断っていた。
多分、前回の訪問でマネージャーの仕事が面白かったんだろう。
洗濯や掃除をしただけなのに・・・
お嬢様の感覚には、理解に苦しむ。
まあしょうがないか
今日は午後からの練習なので、心城学園の校門前に13:00に待ち合わせしている。
私は奈緒、勝利、耕太と途中の美味しいラーメン店にお昼を食べてから待ち合わせ場所に行く予定だ。
奈緒達が待ち合わせしている場所に私も行き、4人で心城学園に近い御茶ノ水駅に着いた。
耕太「マジで美味しいラーメンって噂だぞ」
勝利「でも今日は暑いからラーメンは練習前に厳しくないかな?」
奈緒「もう!そんなラーメンぐらいで、厳しくなる様な身体ではダメだよ!」
中学時代と変わらぬ会話が続く。なんか嬉しい気分になる。
奈緒は中学時代より生き生きとした印象を感じる
奈緒「彩香、何笑ってるの?」
「いや、中学の時と変わらないなあと思って、ついホッコリしちゃった。」
耕太「俺達が子供のままって事?」
勝利「耕太と奈緒が子供なんだよ!」
笑いながらラーメン店に着いて、ここの名物ラーメンである「スタミナラーメン」を注文した。
目の前にきたラーメンは焦がしニンニク、チャーシューで麺が見えないくらいビッシリ入っているラーメンだった。
見るだけでゲップが出そうなラーメンだったが、頑張ってラーメンを頬張る。
うわーもうダメ!
何とか3/4程、食べたところでギブアップ
奈緒は私より残している。
勝利と耕太は、つゆまで飲み干していた。
耕太は分かるが、勝利はそんなに食は太くなかったと思うが?
「勝利大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。何で?」
奈緒「高校に入ってから勝利がよく食べる様になって、彩香はビックリしているんだよ。
だけど、背は伸びないのよね」
奈緒が勝利をからかった。
そうか、少しづつ変わってきているんだな
ラーメン店を出て、心城学園に着くと、まだ12:30なのに詩音が待っている。
詩音「奈緒ちゃん」
奈緒に手を振って近づいて来た。
?
もしかして、詩音って奈緒の事・・・
いやいやそれは無いでしょ!
自分で想像して、自分で否定した。
そして13:00練習が始まる。
私達は先輩だけで無く全員のユニフォームを洗濯し、部室も地面に置いてある道具やロッカーの上に置いてある荷物を片付ける。
あ・あつい
6月中旬の気温とは思えない程気温が上がっている。
部室の中の温度計は30度を超えていて、すでに洗濯も含めると2時間を越えている。
詩音は何が楽しいのか、かなりハイテンションでマネージャー業務をこなしていた。
グラウンドで大きな声がする
「小野!大丈夫か!」
その声にグラウンドを見ると、勝利がグラウンドの端で吐いている姿が目に入った。
あっ!
奈緒に伝えようと声を掛けようとしたが、既にグラウンドに向かって走っていた。
奈緒はグラウンドに入り、勝利のところに向かう。
勝利はうずくまって吐いていたが、やっと立ち上がりグラウンドの外に出て行く。
私と詩音も勝利の所に行くと、監督が
「小野、今日は帰って体を休ませろ!」
勝利「すいません。でも大丈夫です。」
監督「明日は夏の大会の抽選会がある。これからもっと練習が激しくなるから、今日は休め」
勝利はうなづいて
「はい」
部室に行きユニフォームを脱いだ。
奈緒が監督の所に行き
奈緒「心配なので、私も帰ります。」
と告げると監督も
「あ〜頼む」と奈緒に言った。
でも肩も貸せないし、どうやって帰ろうか?
そこで詩音が
「車をここまで、来させるから送って行くわ」
そう言うと運転手だろう人に電話を掛ける。
すると10分も掛かららず、レフト側のフェンス越しに大きな車が止まった。
グラウンドの選手達が、
「何だあの車?」
「凄え〜」
等の声が聞こえる。
私と詩音、奈緒と勝利が車に乗り込みグラウンドを後にした。
(勝利)
車に乗り込むと、今まで乗った事が無い車の内装に驚く。
運転手と後部座席には、ガラスで分かれていて、後部座席の声はガラスを開けないと聞こえない。
後部座席は2列になっていて、2列目は運転手を背に向けたシートで、真ん中にテーブルがあり、3列目は2列目と運転手に向かったシートとなっている。
僕は運転手側の2列目のシートに座り、僕の横には奈緒が座った。
テーブルを挟んで、彩香ちゃんと詩音が座っている。
ただ、僕は胸の辺りが気持ち悪く、とても会話ができる様な感じでは無い。
奈緒「勝利大丈夫?まだ顔色が悪いわよ」
「うん、大丈夫だよ」
奈緒「明日、一応病院に行って来たら?」
「病院に掛かるほどでは無いよ」
すると詩音が話し出す、
「うちの系列の病院にかかりなさい!」
?
何で命令口調?
すると運転手と後部座席を隔てているガラスが下に降りて
詩音「今から病院に行って!」
運転手が答える前にガラスが元の位置に戻り、会話が遮断された。
「いや、本当にいいよ」
詩音「ダメよ、奈緒が言ってる事を聞きなさい!」
僕に拒否権は無いみたいだ。
それからしばらくして、車が止まり後部ドアが開く
外には既に看護師が車椅子を用意して待ち構えていた。
僕がその車椅子に移動すると、そのまま看護師が車椅子を押して診察室まで僕を運んでくれる。奈緒達は看護師の後に続いた。
医師の診察の結果、ただの風邪だろうと言われたが、念のため採血しておきましょうと、最後に言われて診察室を出た。
「採血しますので、こちらへお越し下さい。」
車椅子のまま、中央採血室と書かれている場所に向かう。
そこで奈緒達と合流すると、奈緒からの質問攻めにあったが、ありのままを伝えると、
「良かった。夏の大会は大丈夫ね」
「だから、大丈夫だと言ったろ!」
すると詩音が
「心配して言ってくれたんだから、そんな言い方って失礼でしょ!奈緒ちゃんに謝りなさい!」
もう何言っても聞きそうも無いので、大人しく従って
「ごめんなさい。」
奈緒に謝った。
奈緒もこんな展開になるとは思わなかったみたいで、ジェスチャーで謝ってきた。
奈緒「ねえ詩音?確かみんなは骨髄検査をしたんだよね?」
詩音「4月末に学校で採血したよ」
奈緒「私も採血してもらっていい?」
詩音「勿論いいよ。じゃあ一緒に採血室に行きましょう」
すると奈緒が笑顔で
「ありがとう」
僕と一緒に採血室に入る事になった。
それにしても意外だったのは、小さい頃から注射が大の苦手だった奈緒が採血を望んだ事だ。
小さい頃は、ワクチンを打つ度に大泣きして、中学に入っても泣きはしないが、顔面蒼白になりながらインフルエンザの予防接種を受ける程だった。
そこまでして採血を行ってくれる奈緒に
「奈緒、ありがとう」
莉乃の為に採血を行ってくれる事に感謝の言葉を伝える。
「何言ってるのよ、勝利の為にするんじゃあ無いわ。大事な友達の為にやるのよ」
笑顔で返事が返ってくる。
僕も詩音に頼んでみる。
「僕も採血を、お願いしてもいいかな?」
すると奈緒の時とは打って変わって、嫌そうな顔をして
「いいんじゃない」
詩音は莉乃と違って、男性恐怖症では無くて、根っからの男性嫌いなんだと感じた。
でも莉乃の為と割り切って笑顔で
「ありがとう」と答えた。
そして二人で採血を行う、案の定奈緒は、目を瞑り針が刺さるのをじっとガンマンしている。
「うっ」
ちょっと声が漏れた。
僕も採血が終わり、顔面蒼白になっている奈緒に「よく頑張ったな、大丈夫か?」
すると顔色が戻り
「うん」
と笑顔で答えた。
僕も具合が少し快復して来たので、看護師に車椅子を返して、自力で歩いて検査室を奈緒と一緒に出て彩香達と合流した。
そしてマンション前まで車で送ってもらい自宅へと帰ったのであった。




