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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第2章 高校1年夏
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第2-13話 破局

(美希)


良かった。


近藤君へ別れを告げる事を、一人で行く勇気が無かった私に、彩香が合う所まで同行してくれる事で少し安心した。


詩音同様、今まで女子校しか通って来なかった私は、男子と交際する事の意味もよく分からなかったが、高校に入って莉乃や彩香の想いの深さに自分のとった行動を恥じた。


莉乃の命懸けの恋愛、彩香の親に逆らってまで実らせようとする恋愛に憧れすら感じたのである。


残念ながら私は、近藤君の事を恋愛として見た事は無い。勿論、野球選手の近藤君は尊敬できるし、彼が活躍すると嬉しい。

恋人というよりか、ファンとしての好きであり、LOVEではなくLIKEなのだ。


私も燃える様な恋愛がしたい!


彩香と一緒に心城学園の校門を過ぎてグラウンドに向かった。

学校の敷地を囲む壁に沿って歩くと前方にネットが見える。そのネットを越えた所がグラウンドである。


グラウンドに近づくと学校の敷地を囲む背丈程の壁だけでは無くて高い防球ネットも設置されている。


グラウンドを囲む様にネットが設置してあるので、グラウンドに着いた私達はネット超しでグラウンドを眺める


「あっ試合やってるよ。」


そういえば高校に入ってから近藤君の野球をしている姿を直に観ていなかった


電話での会話やメール等で連絡をとっていたが、デートは春休みに一度行ったっきりで、高校に入ってからはデートもしていない。


バッターボックスに近藤君が左打席に入った。


久しぶりに見た近藤君は、以前より逞しさが増している。


そして相手投手が第1球を投げた。

ボール!

そして第2球目に打った打球は、ライトに鋭いライナーの打球が飛んだが、真正面であったのでヒットにはならなかった。


彩香「あー凄い当たりだったのに、ついてないね」


ついてないか


何か私と交際した事を言われている様に感じた。


彩香「ねえ、バックネット裏に行こうか?」


彩香に連れられるままバックネット裏に行くと、ベンチに居た奈緒が私達に気付いてバックネット裏のベンチにやってきた。


彩香「どっちが勝ってるの?」

奈緒「勿論、ウチが勝ってるわよ。もう大差がついているから勝利もベンチに下がってるから、呼んでくる?」

彩香「ううん。今日は美希の付き合いで来ただけだから」

奈緒「守備が終わったら、近藤君を呼んでこようか?」


それは困る


「ううん。言わないでいいよ。試合に集中して欲しいから」

奈緒「そうか、分かった」

奈緒は納得してベンチに戻って行った。


試合は8ー0で6回を終わっていた。


そして8回、近藤君の打席が回ってくる。


8回は3番打者から始まる攻撃で、4番の近藤君はネクストバッターサークルで打順が来るのを待っている。


不思議なことに、まだ一回も目が合っていない。3番バッターが、センター前にヒットを放ち、近藤君がバッターボックスに向かって歩き出す。


あっ!


一瞬、近藤君が私を見て、すぐに目を逸らしで、バッターボックスに立った。



何か寂しそうな表情をしている様に感じる。


相手投手がセットポジションから第1球を投げた。


空振り


そして2球、3球目も、近藤君のバットは空を切った。


えっ三振?


その後の打者達が連続でヒットを放ち、この回も2点を追加した。


次の9回も相手のテームは0点に終わり、試合が終了した。


そしていよいよ近藤君に別れを告げる時がやって来た。彩香は奈緒の所に行ってしまった。


近藤君が試合後の監督中心に行われているミーティングを終えて、グラウンドを出て私の所に歩いて近づいてくる。


どうしよう


心臓が激しく脈打つ。


目の前で近藤君が止まった。


勇気を振り絞って話し始める。

「さ・さいごの打席残念だったね。」


「うん」


「あ..あのね。今日は、話があって来たんだ」


「うん」


「えっと...えっとね」

心臓が破裂してしまうのではないかと思うほど激しく脈を打つ。


「えっと....」


すると近藤君が話しを割ってきた。

「いいよ。もう言わないでいいよ。分かってるから」



続いて近藤君が話し始めた。

「最近の美希の会話を聞いていて、何となく分かってたんだ。最初から俺の事を男性として好きでは無いのも分かっていた。


だから俺も恋人として接するのを止めようと思ってた。


でも、練習後や休日に連絡を取り合う様になって、気持ちが美希に動いて行くのが分かった。

内容は野球の事ばかりだったのに、美希と連絡を取り合う事が楽しみになって来てしまった。

自分の姿を見れば分かりきった事なのに・・・」


そんな風に私の事を想ってくれていたんだ。


「ごめんね。」


「美希は謝る必要ないよ。俺も分かってて付き合ったんだから」


あれ?

涙が溢れ出す。

怒られると思っていたが、逆に私を気遣い謝ってきた。


かえって辛い。

辛いよ!


「ごめんな」


「何で謝るの!悪いのは私の方なのよ!」


「こんな俺が、女性と楽しい時を過ごせただけで満足だったから、美希を責める事なんて出来ないよ。

今まで楽しい時間を過ごしてくれて、ありがとう」


私は、こんなにピュアな人を騙していたのか!


心が痛い


近藤君が背中を向け、立ち去ろうと歩き始めた。


嫌だ!

恋愛では無いかも知れない。

でも同情では無い。この気持ちが何なのか分からないけど、このまま終わるのは嫌だ。


「近藤君!」


私の言葉に近藤君の足が止まる。

近藤君は背中を向けたままだ。


「もし良かったら、連絡を続けてもいい?」


近藤君は背中を向けたまま、首を縦に頷いた。


「本当にいいの?」


「うん」

と返事をして、結局顔を見せる事なく歩いて行ってしまった。


近藤君が立ち去ったのと同時に、近藤君が歩いて行った方向から、綾香がこっちに戻って来た。


彩香「大丈夫だったの?」



「何で?」


「だって、近藤君泣いてたわよ」



だから振り返らなかったんだ。


もしかして私を気遣って、泣き顔を見せなかったのか?


さっきまでとは明らかに違う、胸の鼓動が私を襲った。


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